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貫いたアグレッシブなチャレンジ。京都U-18は終了間際の劇的決勝弾で日本文理に競り勝ち、1年でのプレミア復帰に王手!

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京都サンガF.C.U-18は終了間際の決勝点でプレミア復帰に王手!

[12.9 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 日本文理高 0-1 京都U-18 バルコムBMW広島総合グランド]

 目指すべきものは明確だった。1年でのプレミアリーグ復帰。そのために戦う最初の90分間だ。硬くなっても、焦っても、身体が動かなくても、無理はない。だからこそ、言い聞かせる。いつも通りにと、自分に言い聞かせる。

「今年やってきたことは、もうチャレンジです。アグレッシブに、どんどん自分たちの目指しているものを出していこうと。それだけです。失敗してもいいので、みんなで繰り返して、みんなが同じ方向を向いて、アグレッシブにチャレンジしようと」(京都U-18・石田英之監督)。

 アグレッシブなチャレンジが呼び込んだのは、土壇場で生まれた劇的決勝弾。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023に参入する権利をかけた高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 プレーオフ(広島)が9日、開幕。1回戦6試合が行われた。Bブロックの日本文理高(北信越2/新潟)と京都サンガF.C.U-18(関西2/京都)が対峙した一戦は、後半終了間際にFW平賀大空(3年)が先制ゴールを挙げた京都U-18が1-0で勝利。旭川実高(北海道1)と戦う11日の2回戦へと勝ち上がった。

 試合の構図は開始からハッキリしていた。「スカウティングをしている時も『ホンマに嫌な相手やな』とは思っていました。11人で凄くひたむきに戦ってくるチームで、リスペクトして試合に臨みました」と石田監督も話した京都U-18がきっちりボールを動かしていくのに対し、日本文理は馬力のあるFW曾根大輝(3年)とFW杉本晴生(3年)の2トップをシンプルに生かすロングボールを中心に、前へとパワーを掛けていく。

 前半18分には右サイドをドリブルで運んだ杉本が枠内シュート。ここは京都U-18のGK三反畑篤樹(2年)がファインセーブで凌いだものの、日本文理が懐に忍ばせる一発の脅威。「相手がロングボールで来るということは知っていたので、とりあえずヘディングで負けないように飛びました」とセンターバックを務めるDF喜多壱也(2年)も言及した京都U-18は、1つ1つのプレーを的確に、丁寧に、重ねていく。

 貫くのは「抜ければチャンス、引っ掛かればピンチ」(石田監督)のビルドアップ。41分は京都U-18にビッグチャンス。時間を作ったMF植田悠太(3年)のパスから右サイドを抜け出した平賀がシュートを放つも、ボールは枠の左へ。お互いが特徴を出し合う前半は、スコアレスで45分間が終了した。

 後半も我慢比べのような展開が繰り広げられる。11分は日本文理。MF石澤賢汰(3年)が左へ振り分け、サイドに開いたMF塩崎温大(3年)がクロスを上げると、ゴール前に混戦は作るもシュートまで至らず。14分は京都U-18。FW島龍之介(3年)を起点に、MF黒澤蒼太(3年)がファーに届けたクロスから、植田のヘディングは枠の左へ。スコアは動かない。

「我慢の時間帯はあると思っていましたし、自分たちがボールを持つ時間が長ければ、点が入ると信じていたので、全然焦りはなかったです」。こう口にしたのは京都U-18の右サイドバックに入ったDF柴田将伍(3年)。プリンスリーグでも同じようなスタイルの相手と戦ってきた。経験値はある。自分たちのやるべきことを、焦れずに、愚直に。

 27分は日本文理。相手陣内でボールを奪うと、杉本が運んで打った枠内ミドルは、三反畑が確実にキャッチ。35分も日本文理にFKのチャンス。右から塩崎が蹴り込んだキックに、高い打点で合わせたDF小舟戸結太(3年)のヘディングはクロスバーにヒット。思わずピッチの選手もベンチも頭を抱える。

「去年はチームをプリンスに落としてしまったので、『後輩のためにも』という想いで自分がゴールを決めたいと思っていました」。キャプテンはその瞬間を虎視眈々と狙っていた。

 45分。右サイドでのスローイン。「特別練習していたわけではないですけど、相手の裏が取れるのならそこに投げて、という感じでした」という柴田は、チェックの動きでマーカーの裏を取ったFW熊谷空大(2年)の足元へピタリと落とし、その熊谷はマイナスに折り返す。

 受けた平賀が左足で撃ち抜いたボールは、ゴールネットへ力強く到達する。「正直あまり覚えていないですけど、コースは見えたので、みんなの想いの乗ったゴールを押し込んだ感じです」。ベンチに向かって走り出すキャプテンを、チームメイトが全力で追い掛け、大きな、大きな、歓喜の輪ができる。

「もう泣きかけましたね。エースの大空が決めてくれたので、自分も『これで行けるぞ』と思いましたし、ちょっと早かったですけど、感動しました」(柴田)「なかなかゴールが決まらない中で、最後の最後で大空くんが決めてくれて、さらにチームが一丸となった気がしました」(喜多)。

 程なくして、タイムアップの笛が鳴る。1-0。「選手も疲れていると思いますけど、本当にタフなゲームだったので、もう疲れました(笑)。良い時間帯もありましたし、難しい時間帯もありましたけど、よく最後に点を獲ってくれましたし、勝てて本当に良かったと思います」(石田監督)。積み重ねた我慢と執念がわずかに日本文理を上回り、京都U-18が次の試合を戦う権利を力強く引き寄せた。

 もちろんプレーオフがプレミアへの復帰を懸けた大事な舞台であることは言うまでもないが、この一戦にはもう1つの側面もあった。「緊張はなかったですけど、この大会が終わったら引退だということに寂しい気持ちはあって、特に3年生はそういう面で『できるだけみんなでサッカーをしたい』ということで、一体感があると思います」(平賀)。

 彼らが自分たちの力で勝ち獲った、リーグ戦の先に加えられた“エクストラゲーム”。確実なのはその終わりを知らせるタイムアップが、そのままこのチームで戦う時間の終焉を告げる瞬間だということ。「これで3年生は公式戦が終わりということで、正直『やるしかないな』って。3年生らしい姿を後輩たちに見せられたらと思っています」(柴田)。その時は、もう1試合先に持ち越された。

「絶対に負けられないですね。自分たちもこの1試合の結果で来年の1年が変わってきますし、先輩たちも負けて終わるのは絶対に嫌だと思うので、みんなのために頑張りたいです」。喜多がチーム全員に共通した想いを代弁すると、平賀も堂々と言い切った。「サンガはプレミアにいるべきチームだということを証明しに来たので、次も絶対に勝って、もう1回プレミアに戻りたいと思います」。

 時は来た。戻るべき場所へ戻るために戦う、正真正銘最後の90分間。アグレッシブなチャレンジを続ける京都U-18に用意された2022年の結末は、果たしていかに。



(取材・文 土屋雅史)
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