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[新人戦]「プレミアリーグで戦っていけるチームに」。大量リードの後半も貪欲に攻め続けた青森山田、新チーム初戦を10-0で制す:東北

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前半14分、青森山田高はFW津島巧が追加点

[1.28 東北高校選手権1回戦 新屋高 0-10 青森山田高 Jヴィレッジ]

 第22回東北高校新人サッカー選手権大会(男子)が28日に福島県Jヴィレッジを舞台に開幕した。東北6県を代表する16校がノックアウト方式で争う大会は初日に1回戦8試合を実施。前回大会は無念の出場辞退となっていた青森山田高(青森1)は初戦で新屋高(秋田3)と対戦し、10-0の記録的な勝利を収めた。

 青森山田にとって今大会は黒田剛前監督がJ2町田の監督に就任して完全にチームを離れてから最初の大会だった。正木昌宣監督はこれまでも黒田監督不在時にチームを預かる機会は多く、この東北新人大会でも指揮を執ってきた。ただ、あくまで黒田監督の指示を受けながら行ってきたこと。自分自身が監督として全てをオーガナイズするのは今大会が初めての挑戦となる。

 新屋との注目の初戦は雪の影響でJヴィレッジのドーム状施設である全天候型練習場で行われた。先発のラインナップにはU-17日本高校選抜候補にも選ばれているMF芝田玲(2年)とMF谷川勇獅(1年)の両ボランチや、長身CBの小泉佳絃(2年)など昨季から試合出場を重ねていた選手も多く、経験値は低くない。そして迎えた初戦は、新しい“正木色”も感じさせる内容となった。

 大会直前に仙台大のグラウンドを借りて雪のない環境でのトレーニングは積んだとはいえ、「まずはサッカーを思い出さないといけない」(正木監督)のがこの時期の雪国のチームの宿命である。ただ、そうしたハンディキャップを感じさせないようなテンションを出せるのが青森山田である。立ち上がりからドームに響く大音量の気合いの声と共に、新屋を圧倒して呑み込んでいった。

 開始7分にMF杉本英誉(2年)のクロスからMF川原良介(2年)のヘディングシュートで先制点を奪い取ると、ここから圧倒的なゴールラッシュ。14分にFW津島巧(2年)、20分にはFW米谷壮史(2年)が決めるなど前半だけで5点のリードを奪い取った。

 新屋もFW石澤琉真(2年)を中心に何とか攻撃の糸口を掴もうと試みたものの、青森山田GK鈴木将永(2年)の好守にも阻まれ、ゴールには至らず。0-5のスコアで折り返した。

 そのハーフタイムでは1本だけあった新屋の決定機について、DF陣に指揮官から厳しい言葉も飛んだ。「あれがプレミアリーグだったら絶対に失点している。そういう意識で戦わなければ成長もしない」(正木監督)。新主将に指名されたDF山本虎(2年)も「シュート0本に抑えることを目指すのが青森山田の守備。それができていなかった」と猛省したシーンだったが、改めて緊張感を持ち直して臨んだ後半は新屋のシュートをゼロに抑え込んでの完封で有言実行を果たしてみせた。

 ただこの後半、従来の青森山田では余り見られない流れにもなっていた。攻撃の手がまるで緩まないのだ。

「今までは1-0で勝つチーム作りをしていたと思う。自分も(失点や被シュート)0を目指すところは全く変わらない。ただ、3点、4点、5点と取っていくチームにしたいと思っているし、選手たちにもそういう話はしています」(正木監督)

 実際、後半も攻め手が緩まず、終盤になってもペナルティーエリアに5人が突撃していくようなシーンまであった。結果、後半も大量5得点。シュート数は前半9本に対して後半15本なので、むしろ点差が開いてからのほうが攻勢は強まっている。

「今までなら、2点を取ったらリスクをかけない試合運びにしていたことも多かったと思う。ただ、今日は『最後まで点を取りに行け!』と言ったし、それをやることで見えてくるものもあると思っている」(正木監督)

 この大会に勝つことだけを考えるならば、連戦なのだから省エネが正解でもある。それは指揮官もよく分かっている。ただ、目指すレベルは、もっと上にある。「プレミアリーグで戦っていけるチームにならないといけない」(正木監督)。

 正木監督が率いる新しい青森山田。その野心的な挑戦が静かに始まっている。

(取材・文 川端暁彦)

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