日本一の喜びとともに、悔しさを持ってスタートを切っている。岡山学芸館高は、第101回全国高校サッカー選手権で初優勝。新チームは、大会優秀選手に選出されたGK平塚仁(2年)、MF田口裕真(2年)、FW田邉望(2年)のレギュラー3人をはじめ、選手権登録メンバー12人が残る。一方、スタンドから応援していた1、2年生も意欲を持って新チームの活動をスタート。中でもコーチ陣に伝わるほどのエネルギーでトレーニングに取り組んでいる選手が、CB中河元氣(2年=FCバイエルンツネイシ出身)だ。

　中河は「自分は上手く出来るプレーとかあまりないので、気持ちでぶつかってという感じのプレーが特長だと思っています」。入ってくる人、ボールに対して強く行く動きなど対人守備が得意。その中河は1年時、怪我に苦しみ、昨年はCチームやBチームにいた選手だ。

　昨年末の大阪遠征でアピールし、選手権組が合流した後もA1チームでプレー。選手権経験者に比べると、プレーの質や統率する力、オーラなど雰囲気、温度感にまだまだ差があると感じている。だからこそ、新人戦を通して少しでも近いレベルにまで引き上げ、中心選手へ。「新人戦で活躍して、このまま(ポジションを)取りたい。自分、DFなので粘り強くやって、無失点での優勝を目指して頑張ります」。その中河にとって、主将として日本一に輝いたCB井上斗嵩(3年)は目指している姿だ。

　井上は守備の柱として活躍し、日本高校選抜候補にも選出されたストッパー。彼はCチームからAチームへ這い上がった“努力の選手”でもある。中河は「斗嵩さんのクリアや球際の強さとかめちゃくちゃ学ぶ部分があるので、それを目標にやっているのがあります。斗嵩さんもCのチームの時期があって、自分と重なる部分がある。そこからキャプテンにもなったので目標にしていますし、斗嵩さんを真似する部分や自分の長所を活かしてやる部分を出していきたい」。高原良明監督は堅守を誇った井上、CB田口大慎(3年)の両DFに中河らが続くことを期待している。

「アイツ(中河)は前に強いんですよ。CBの一番大事な負けん気みたいなところはプレーの中で出せる選手なので。まだ足りないところはあるんですけれども、このボールに食らいついていく、みたいな部分は持っているので成長させたいと思います」(高原監督)。中河の目標は1年後、自分が国立のピッチに立つことだ。

「正直、(先輩たちが)勝てば勝つほど悔しくなってきて、優勝した時は嬉しかったんですけれども、正直素直には喜べないみたいなのがあって……、来年、自分が国立でやりたい」。中河の他にも、ギリギリで登録30名から漏れた選手など、悔しさを抱いている1、2年生も多いようだ。

　目指すのは選手権ではなく、国立。「国立は景色が全然違ったので、1年生の時に見た選手権の会場、そこにも行きたいなと思ったんですけれども、国立見て『もっと行きたい』『ここは違うな』と思いました」。その目標へ向けて、一日一日、一試合一試合積み重ねて行く。

　新人戦では結果だけでなく、信頼を勝ち取ることも重要。「まだ始まったばかりで全然メンバーの入れ替えとかあると思うので、(チャレンジするだけでなく、)安定も求めていきたい。『コイツがいれば』と思ってもらえるように」。まずは4日の初戦に集中。白星を勝ち取り、自身も成長させる。

(取材・文　吉田太郎)