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選手権王者・岡山学芸館の新チームが初陣へ。厳しく自分たちに目を向け続け、重圧を跳ね返す一年に

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岡山学芸館高の新チームが熱量のあるトレーニング。4日、初陣に挑む

 新生・岡山学芸館が初陣に挑む――。第101回全国高校サッカー選手権で初優勝した岡山学芸館高は4日、令和4年度岡山県高校サッカー新人大会初戦(2回戦)で古豪・勝山高と戦う。

 1月9日の国立決勝から26日。日本一の瞬間をピッチで味わった選手、スタンドでその瞬間を見守っていた選手が一緒に新チームのスタートを切る。初戦へ向けたトレーニングの熱量は徐々に向上。選手権で2得点を挙げたU-17日本高校選抜候補MF田口裕真(2年)は、「出ていた選手はあの場でできたことは意識してやっていると思いますし、出ていなかった子もあの場所に立ちたいという思いは日々練習でも伝わってくるので、良い関係でチームは始められていると思います」と頷いた。

 選手たちは、高原良明監督や金田泰弘部長から切り替えの速さやパススピードの部分を厳しく求められていた。ハードワークへの意識は、新王者の生命線だった部分だ。選手権決勝で2得点のMF木村匡吾(3年、日本高校選抜候補)も参加していたトレーニングでは、先輩の動きの質や量を体感。高原監督は「去年から継続してきている部分は追求したい。切り替えの速さのところは去年の先輩と同じレベルの速さでやらせたい」という。

 一方で変化を求める部分もある。新チームは、選手権得点王に輝いたFW今井拓人(3年、日本高校選抜候補)のようなずば抜けた速さを持つ選手が不在。ただし、技術面のベースは高く、指揮官は「ボールを動かすテンポ、質を上げていくことを強化していきたい」と語る。判断スピードを上げ、よりスピーディーなサッカーを目指していく一年になりそうだ。

 GK平塚仁(2年)、田口、FW田邉望(2年)は国立決勝などで先発し、いずれもU-17日本高校選抜候補に選出。中心選手としての自覚を持った彼らがトレーニングからチームを引っ張っている。また、全国のピッチを経験したMF木下瑠己(2年)とMF田村日夏汰(2年)、MF高山隼磨(2年)、登録メンバーとして日本一を経験した選手、加えて登録外で悔しい思いをした選手も強烈な左足を持つ左SB持永イザキ慶吾(2年)、Cチームから這い上がってきたストッパーCB中河元氣(2年)らがエネルギーを持ってプレーしていた。

 高原監督は新チームがスタートする際、選手たちに対して「あの国立に立てたメンバー、スタンドから応援していたメンバー、ああいうところに立ちたいのであれば、自分でチャンスを掴むしか無い。先輩がいなくなってポジションが空いた中で、誰がそこで自分のポジションを奪いに行くか、競争が始まるぞ」とメッセージを送ったという。

 日本一に輝いた岡山学芸館に限らず、新チームはどこもモチベーションが高い。そのモチベーションを維持できるか、自分に厳しく目を向けられるか。高原監督も求めるテーマが先輩たちに続く結果を得られるかどうかに大きく影響しそうだ。歴史を変えた3年生は「何とかチームを強くしてやる、オレがやってやるという選手が多かった」(高原監督)。新チームはまだまだ大人しい部分があるようだが、指揮官は「3年も最初大人しくて、途中から変わったので、彼らも変わってくると思う」と期待する。

 高原監督の東海大五高(現東海大福岡高)時代の恩師、平清孝ゼネラルアドバイザーは全部員に対して「人を磨くこと」と説いていた。選手一人ひとりが自覚を持って行動し、精神的に大人になること。先輩たちが残した結果に慢心することなく、学校、地域からより応援される選手、チームになっていかなければならない。

 まだピッチ内外で甘さがあることは確か。それだけに、田口は「学校生活からしっかりと見つめ直してやっていきたい」と語り、「個人の成長と一戦必勝ということをテーマにしてやっていきたい」と力を込めた。

 高原監督は新人戦について、「パスひとつの質だったり、動き出しの質というところは、本当に上げていきたい。(新チームはまだ十分にトレーニングできていないが、)現段階での力がどれだけ見れるかと思っている」。そして、「ただ、負けは許されないと思っているので、そのあたりは勝負にこだわりながら、この子たちも県内3冠という目標は去年と同じだと思うので、その一つめの大会であることは間違いない」と加えた。

 県内外のチームが打倒・岡山学芸館を目指してくる一年。これまで経験したことがないような重圧の中で戦うことになる。ただし、それを乗り越えることができれば、先輩たちにも負けない、それ以上のチームになることも可能だ。田口は「初戦から岡山県内のチームだけでなく、全国のチームが僕らを倒しに来る中でプレッシャーなんですけれども、力に変えられるような、跳ね返せるような強いチームになっていかないといけないと思うので、まずは今週から新人戦始まるんですけれども、上手さじゃなくて強さというところは毎回平先生からも言われているところなので、それを出していけるように。まだ始まったばかりですけれども、これから質などを高めていきたい」。県内3冠、全国連覇へ。1年後の国立決勝まで成長と勝利を目指し続ける。

(取材・文 吉田太郎)

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