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[新人戦]国立での経験を無駄にしない。新生・東山がPK戦を制してまず京都1冠

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全国高校選手権準優勝の東山高が京都高校新人大会を制した

[2.5 京都府高校新人大会決勝 東山高 1-1(PK5-3)京都共栄高 たけびしスタジアム]

 選手権準優勝校・東山の新チームが、自信掴む1冠――。令和4年度 京都府高校サッカー新人大会は5日、決勝を行い、東山高京都共栄高が対戦。1-1で突入したPK戦の末、東山が5-3で勝ち、21、22年度のインターハイ予選、選手権予選に続く京都制覇を果たした(新人戦は3年ぶりに決勝まで開催され、5年ぶりの優勝)。

 東山は今冬、全国高校選手権で初の準優勝。1月9日の決勝まで戦ったため、新チームの始動は大きく遅れることになった。いち早くチーム作りを進めてきたライバルとの熟成度の差もあり、準決勝までは納得の内容に至らず。決勝も紙一重の戦いとなった。

 それでも、選手たちは今できることを徹底。試合前に「一年間かけて良くして行こう」と言葉がけしたという福重良一監督も、「課題は絶対あるけれど、自分たちの良い部分は出せたかな、と思います」。延長戦までハードワークを続け、最後はPK戦で勝ち切った。

 近年、台頭を続ける京都共栄は準決勝で2強の一角、京都橘高を3-0で撃破。決勝でも東山を苦しめた。落としどころ、人数の掛け方まで狙いを持ったロングボールからセカンドボールを回収し、サイドアタックでセットプレーを獲得する。13分には相手バックパスを狙ったFW森谷祐大(2年)がインターセプトから決定的なシュート。19分にはMF北淳史主将(2年)の左クロスから10番MF福岡景佐(2年)がヘディングシュートへ持ち込む。

 だが、東山は身長170cmほどの守護神、GK二川陽翔(2年)が守備範囲広くプレー。選手権優秀選手のCB志津正剛(2年)、CB田村翔大(1年)らDF陣も競り合いで厳しく体を寄せ、クリアする。

 そして、いずれもキック精度の高い志津や右SB足立康生(2年)が前線、ハイサイドへボールを入れて攻め返す。24分、志津の左足フィードで左スローインを獲得すると、足立がゴールエリアへ到達するロングスロー。田村が競ってこぼれたところを志津が詰め、ファーストシュートで先制した。

 両校ともにリスクをかけずに、ボールを奪うと素早く前へ。ロングスローの本数が増えたが、京都共栄DF陣もCB鈴木達哉(2年)やGK大崎颯真(2年)を中心に堅く、互いになかなか綻びを見せない。東山は後半2分には足立が右サイドからロングクロス。エネルギッシュな動きを見せていたFW大山遼斗(2年)が頭でゴールへ押し込んだが、惜しくもオフサイドだった。

 東山は後半半ばまでシュート1本。だが、押し込まれる時間が増える中でも、DF陣が一本一本集中してクリアする。また、人一倍の声と運動量、ボールへの執着心を見せていたMF沖村大也(1年)、守備を得意とするMF古川清一朗(1年)のダブルボランチがセカンドボールを回収し、連続攻撃を許さない。京都共栄はこの日、北が15本、20本とロングスロー。重心の重い相手に対し、後半はより人数をかけた攻撃でプレッシャーをかけ続けた。

 試合終盤、京都共栄は初優勝への思いも表現。相手より一歩でも前に出てゴールへ向かうと34分、右SB高井悠希(2年)の右足シュートが相手ハンドを誘ってPKを獲得する。これをエース福岡が右足で狙うが、東山GK二川が止めて歓喜の咆哮。だが、京都共栄は諦めない。35+3分、ゴール前の混戦から福岡が判断よく右外でフリーの高井へ浮き球パスを繋ぐ。そして、高井が胸コントロールから左足シュート。堅守・東山のゴールをこじ開け、土壇場で同点に追いついた。

 東山は延長戦で立て直し、セットプレーなどから再び勝ち越し点を目指す。京都共栄も勢いそのままに攻め、押し込んでいたが、決定打を打てないまま延長戦終了。京都共栄の内藤翔平監督は「(相手にやりたいことをさせなかったが、)ウチは守備がウリというか、きっちり鍛えているところでもあるので。それでも、僕らの良さが出る回数がちょっと少なかった」。攻撃を修正させてあげられなかったこと、また延長戦までに仕留められなかったことを残念がっていた。

 迎えたPK戦は後攻・京都共栄4人目のシュートがクロスバーをヒットしてしまう。一方の東山はMF濱瀬楽維主将(2年)から志津、足立、古川と4人連続で成功。最後は左SB高田竜成(2年)が右足シュートを決めて決着をつけた。

 東山の濱瀬は「(準備期間が短く)自分たちのサッカーを見つけられていなかった。その中で成長しようと前向きに臨みました。優勝したのは素直に本当に嬉しいですし、今後の近畿大会やインターハイ、選手権に向けて自信を持って臨めるんじゃないかと思います」と頷く。経験値が少ない選手たちにとって、自信となる1冠。福重監督も「(準備期間の短さに対して)言い訳せずに体を張って守ってくれたし、PKもしっかり決めてくれた」と選手たちを評価していた。

 新チームは、これまで以上に目線を高くしてスタートしている。福重監督は「国立に行ったことを絶対に無駄にはしたくない」という。国立競技場で開催された選手権準決勝、決勝を戦ったことで目標とする日本一になるための課題が明確になった。

「まだまだ僕らは準備不足だな、と改めて課題が出てきたので、それは本当に国立に行ったチームしか分からないと思うし、人に聞いたところで体感はしていないので。(見えた課題を改善し、)しっかりと地に足をつけてやっていく」(福重監督)。ここから近畿新人大会や関東遠征などを経てプリンスリーグ関西1部へ。国立競技場で経験したことを忘れず、選手権準決勝、決勝で勝つための力を身に着けていく。

 中学時代無名だった選手が台頭してくるのも東山の特長。大舞台を経験した選手、それを見て学んだ選手、楽しみな新1年生も含めて一つになり、「今年は間違いなく国立で2勝して全国優勝するというのを一番の目標にしていて、その上で京都3冠やプリンス1部に上げてもらったのでそこでプレミアに昇格して次世代につなげていくことが目標です」(濱瀬)という目標達成に挑む。

(取材・文 吉田太郎)

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