beacon

[MOM4221]町田ユースMF武田翔琉(中学3年)_正面から切り裂いたまさにゴラッソ!クラブ期待の15歳がプレミアの強豪相手に放った確かな煌めき

このエントリーをはてなブックマークに追加

15歳とは思えないパフォーマンスを披露したFC町田ゼルビアユースMF武田翔琉

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.23 東京都CY U-17選手権3位決定戦 FC東京U-18 0-2 町田ユース 西が丘]

 言われなければ、誰も気付かないのではないだろうか。プレミアリーグに所属している強豪相手に、自ら中央を切り裂いて鮮やかなゴールを奪った14番が、まだ中学校の卒業式も終えていない15歳だったということを。

「こういう試合は経験が積めるのでメッチャ嬉しいです。西が丘は初めてでしたけど、思ったよりお客さんも来て、応援も結構響いて、芝も天然芝だし、とても凄いなと思いました。凄く楽しかったです」。

 西が丘のピッチに颯爽と現れた希望の光。FC町田ゼルビアユースの中盤の一角を託された実力者。MF武田翔琉(中学3年=FC町田ゼルビアジュニアユース)のサッカーセンスは、高校生の中に混じっても一際輝いていた。

 各チームにとって“新人戦”の役割を果たす、東京都クラブユースサッカーU-17選手権大会。3位決定戦に臨む町田ユースのスタメンリストには、ジュニアユースに在籍している2人の中学3年生が書き込まれていた。1人はセンターバックを任されたDF森高優。もう1人が逆三角形の中盤のインサイドハーフで起用された武田だ。

「試合の前はみんな緊張していたんですけど、監督から『全員でしっかり一歩前へ』と言われて、自分たちも円陣のところで『自分たちはチャレンジャーだからしっかり前から行こう』と言い合ったところで、緊張はなくなりました」。ピッチへと入場する時はまだドキドキしていたものの、試合が始まる頃にはもうワクワクの方が勝っていた。

「最初はボールが落ち着かなくて、コントロールが乱れてしまうところがあったんですけど、途中からみんなイキイキとやっていたので、『自分も落ち着かなくちゃ』と思って、しっかり落ち着いてできました」。本人はそう語るが、キックオフから明らかに穴となるようなこともなく、ごくごくスムーズにゲームへ入っていく。

 前半5分。左サイドでのパス回しから、MF山邊廉(2年)はダイレクトパスを中央へ。意外なタイミングのように見えたが、難なくボールを引き出した武田は、グサリと縦パスを打ち込む。ここからFWエレメン聖矢(2年)、MFオルムジェシー(2年)、DF霜田晟那(1年)とボールが繋がり、最後はFW真也加チュイ(1年)がゴールを陥れる。もちろん一連の流れ自体も完璧だったが、一気に攻撃をスピードアップさせた14番の縦パスは実に効果的だった。

 前半39分。今度の主役は15歳だ。中盤アンカーのMF土田純平(2年)がクサビを付け、収めたエレメンが前を向いてからの一連は、本人の口から語ってもらおう。「エレメンがこっちに向かってきて、センターバック2人を引き連れていたので、自分がフリーになって、パスをもらった時に相手の左サイドバックがジェシーに付いてパスコースを塞いでいたので、自分でシュートを打ちました。結構フリーで余裕があったので、コースに打てば入るかなと思って、打ったら入りました」。

 シュートを打つまでの驚異的な状況判断ももちろんだが、今月末からはU-18日本代表候補合宿に参加する年代屈指の守護神として知られる、FC東京U-18のGK小林将天も及ばないようなコースへ丁寧に流し込む、フィニッシュワークの正確さも抜群。「みんなも寄ってきてくれて、メチャメチャ嬉しかったです」という武田は、あっという間に“先輩”たちの輪の中に飲み込まれていった。

 チームは2-0で快勝。武田も後半30分まで走り切り、交代でベンチに下がったが、そこに自身の課題を感じたという。「後半から自分も体力が落ちてきて、相手にボールを回されたので、『もっと体力を付けなきゃな』と思いました」。その思考は、既に中学生のそれではない。

 去年からユースの練習に参加していたが、その時にも自分の現状を正確に把握し、改善を施していった。「最初に参加した時はプレーのスピードが速くて、自分の持ち味を出せないところもありましたけど、お手本にしている選手の試合を見て、それを真似してみたりしたら結構馴染めて、プレーもしやすくなったかなと思います」。

 お手本にしているのは、スペインの若き至宝としてワールドカップにも出場したバルセロナのペドリ。ポジショニングもパスの捌き方も、すべてが上手いなと思わされる選手の一挙手一投足を観察し、日常のトレーニングに落とし込めるあたりにも、非凡な才能が見え隠れする。

 ゼルビアとの出会いは幼稚園時代のサッカースクール。当時はまだジュニアチームがなかったため、スペシャルクラスのスクールに通い、ジュニアユースからはこのクラブに入り、周囲と切磋琢磨する中で、のびのびとその実力を伸ばしていく。

 自己分析もばっちり。「ボールキープだったり、ボールを離さず奪われないところは自分の持ち味でもあるので、しっかり味方に付けるところまでやれるように、その得意なところを伸ばしていけたらいいなと思います」。それを聞けば、ペドリを参考にしているというサッカー観にも納得だ。

 今年の目標を「人としても成長したいですし、サッカーも自分の得意な部分を伸ばしながら、上へ上へと行けるように頑張りたいと思います」と口にした武田に、これからどういうキャリアを送っていきたいかを尋ねると、間髪入れずにこう答えが返ってくる。

「プロになって、今はゼルビアがJ2なので、自分がJ1に上げたいです」。

 15歳の言葉が、力強く響く。もうその才能は芽吹いている。FC町田ゼルビアというクラブの希望、もしくは、未来そのもの。武田翔琉という名前、是非覚えておいてほしい。



(取材・文 土屋雅史)

TOP