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U-17W杯出場を目指す守護神の決意。山形ユースGK上林大誠に強く芽生えた「自分もモンテに何かを残したい」という想い

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年代別代表の常連でもあるモンテディオ山形ユースGK上林大誠

 ひょんなことから始まったゴールキーパーとしてのキャリアだったが、今はもうこのポジションとともにのし上がっていくと決めている。叶うのであれば、小学生の頃からプレーし続けてきたこのクラブで、もっと上へ。もっと先へ。

「自分はあまり遠い目標は立てずに、目先のことに集中するタイプなので、今掲げている大きな目標はユースをプレミアに上げることです。ただ、小さい頃から思っているのは、最近トップチームもプレーオフで負けてしまったりするのを見ているので、やっぱりモンテディオをJ1のチームにしたいという想いがあります」。

 年代別代表にも名を連ねている、山形の地が育んだ確かな才能。モンテディオ山形ユースの絶対的守護神。GK上林大誠(2年=モンテディオ山形ジュニアユース庄内出身)はいまを着実に積み上げ、その先に広がる大きな未来へと自分を導いていく。

「こういう実力のあるヤツらに、自分たちがどれぐらい通用するのかというのは楽しみでしたし、シーズン中ではもうできない経験なので、大切にしていかないといけないですね」。上林はきっぱりとそう言い切った。2日目を迎えたイギョラカップ2023。山形ユースは帝京高と神戸弘陵高という、他地域の高体連チームと肌を合わせる。

 前者は昨年度のインターハイ準優勝で、後者もこの冬の近畿大会ファイナリスト。相手にとって不足はない。結果から言えば帝京には5-1で快勝し、神戸弘陵には1-3で敗戦。ただ、なかなか対戦する機会のない強豪との試合は、間違いなくチームにとってプラス材料。「どこかで集中を切らせたり、どこかでサボったり、弱さを見せた瞬間に絶対やられるので、チーム全員が集中しないといけないと思いました」と最後尾からチームメイトを見つめていた守護神は、改めてこの大会に参加する意義を噛み締めていた。

 モンテディオのスクールに入ったのは小学校2年生。ずっとフィールドプレーヤーをやっていたものの、コンバートは意外なきっかけからだった。「5年生の時に地区のトレセンがあって、その試合の時に何人かが交代でキーパーをやった中で、たまたま自分が一番上手かったんですけど、そこからずっとキーパーをやっています。結構些細なキッカケですよね」。そんな少年がのちのちゴールキーパーで大成するのだから、人生はわからない。

 昨年4月にルーマニア遠征へ臨むU-16日本代表に招集されると、以降はコンスタントに声が掛かるようになったが、上林は数回の海外遠征の中でも、とりわけパラグアイの地である想いを抱いたという。

「正直あっちの選手は生活が懸かっていると言っても過言ではないわけで、サッカーに懸ける想いが違うヤツらもいるんだとわかりましたし、世界と戦うからにはそういうヤツらとやっていかないといけないんだなって。自分たちは恵まれた環境の中でやれていますけど、そういう基準を日常から意識していかないと、6月の予選も勝ち抜けないですし、11月のU-17のワールドカップで目標としているベスト4には行けないと思うので、1人1人の日常が大事だと思います」。

 自身で考える特徴を尋ねると、「キックとボールを味方に繋ぐところは、昔フィールドだったこともあって得意にしているので、そこは今回のアルジェリア遠征に行った後藤亘(FC東京U-18)と雨野颯真(前橋育英高)よりは絶対に長けている自信があります」ときっぱり。続けたU-17日本代表候補のライバルとの比較も興味深い。

「亘と雨野はシュートストップが得意なキーパーで、彼らに比べたらそこは正直劣っていると思います。でも、僕とほぼ同じ身長の雨野がシュートストップが得意だということは、結局自分にもできるということなんです。たとえば1つ1つの構えとか、シュートのタイミングに合わせるとか、そういうところを意識することで差を縮めていきたいので、そこは代表に呼ばれ続けるためにやっていかないといけないと考えています」。そう考えられるメンタルも、それをしっかりと言葉にできる言語化能力も頼もしい。

 そんな上林は、アカデミーの“先輩”がA代表に選出された快挙を目にしたことで、自分の中に新たな決意が芽生えたようだ。「(半田)陸くんもU-17の代表で世界も経験して、ああいう存在になっているので、自分もそういう経験をすれば、もっと自信を持ってやれるんだろうなと思いました」。

「でも、アカデミーの先輩からA代表の選手が出たということは、正直今の自分がいる環境からでもそういう人は出てきたわけで、環境を言い訳にすることは絶対にできないなって。あと、陸くんはジュニアユースからモンテに入った選手で、まだジュニアやスクールの出身者でA代表になった選手はいないので、自分がその1人目になれればいいなとは思いましたね」。

「僕はスクールに通っていた時も少年団には入っていなくて、モンテでしかサッカーをやってきていないんです。本当にモンテが自分のサッカー人生を育ててくれたようなもので、自分もモンテに何かを残したいなと思っています」。

 はっきり言って将来のことなんて、まだわかるはずもない。でも、目の前のことをコツコツと積み重ねた先にしか、望むような未来が待っていないことは、十分に理解している。結局はいつだって自分次第。上林は今日も明日も明後日も、きっと日常を磨き続けていくはずだ。



(取材・文 土屋雅史)

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