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広島DFの兄は憧れであり、「ライバル」。桐生一CB中野力瑠は夢の兄弟対決実現へ成長とアピール

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桐生一高CB中野力瑠主将(3年=AZ’86東京青梅出身)がボールを奪い取る

[4.15 高円宮杯プリンスリーグ関東1部第3節 矢板中央高 2-2 桐生一高 矢板中央東泉G]

 兄超えに挑戦する一年だ。桐生一高(群馬)CB中野力瑠主将(3年=AZ’86東京青梅出身)は身長184cmのストッパー。J1クラブへの練習参加も経験している注目DFは、雨中で違いを示していた。

 中村裕幸監督が「あんなに、ほぼ40m正確にボールを届けられるやつもなかなかいない」と言うように、キックは最大の魅力。ミスもゼロではなかったが、前半からその正確なキックによってビルドアップの中心になり続けていた。

 後半、桐生一はゴールキックを全て隣の中野へ渡して攻撃を開始。矢板中央も前からの守備を徹底し、全体でパスコースを消しに来ていた。そして、中野に触れるくらいまで距離を詰めて来ていたが、中野はシャドーやサイドの選手へピンポイントのミドルパスを連発。相手の守備を上回り続けていた。

「矢板も自分のロングキックの対策はしていたらしいんですけれども、それでも自分のキックの長所は活かしたいなと思って、そこできょう良くできたのかなと思います」。また、ドリブルで強引に相手のプレスを剥がすシーンも。そして、長身を活かした守備に加え、サイドから抜け出そうとする相手選手をねじ伏せるように止めるシーンもあった。

 対人守備は課題としてきた部分だ。「ラストのところは自分たちCBが身体を張って守らないといけないところですし、そういうところで去年のプレミア(リーグ)から出ていて課題だったので、高卒プロを目指しているので今年1年でそこを武器にして、武器を増やせたらなと思っています。一個できたと思ったら次やられたりというのがあるので、そこを全部守っていかないと守り切れないので、普段から意識してやっていけたらなと思っています」。この日はDF間の連係ミスで失点したシーンもあっただけに、さらなるレベルアップを誓っていた。

 中野の兄は桐生一OBで今年、桐蔭横浜大からJ1広島へ加入したDF中野就斗だ。今年はJ1開幕戦で先発し、その後も着実に出場機会を増やしている。5歳年上の兄は憧れの存在であり、超えなければならない存在だ。

「対人能力とか就斗の方が高いですし、キックのところは負けていないと思うんですけれども、そこで良いところは盗みつつ、ライバルとして負けたくないと思います」とライバル視。その兄からは、自分を超えることを求められているという。

「就斗は大学からJ行って、いつも2人で『どっちが上』とか競うんですけれども、LINEとかでも話をして『オレが大学でJ行ったから、超えるには高卒でJ1目指せよ』と言われて『分かったよ』と」。大人げないと思うこともあると微笑むが、公式戦の応援に来たり、プレー動画をチェックして守り方のアドバイスをくれたりするという優しい兄。その努力する姿をずっと近くで見てきた。

「家とかでも走ったりしていて、近くで努力していたのも見ていた。一緒に走ったりして、自分は走りとかで妥協してしまうところがある。雨とかでも就斗はよく走っていて、筋トレもですし、努力が報われたというか、そういうところがあるのかなと。尊敬しつつ、近くにそういう選手がいるのは自分にとっても刺激になりますし、兄弟でJリーガーも夢なので目指していきたい」

 J1クラブへ練習参加して感じたことは、自分が武器としているキックをプロの選手たちは当たり前のようにやっていること。また、CBとして最後に自分が止めることは、中村監督からも強く求められている部分だ。中村監督は「全部オマエからスタートして、最後全部オマエが止めろと」と要求。指揮官は中野が高校時代の兄を上回る部分も多いことを認めた上で、上のステージで戦うためによりパーソナリティや地の強さが必要だと考えている。

 ポテンシャルがあることは確か。だが、ライバル超えを実現するためには、より成長し、アピールをしなければならない。「やっぱり高卒でプロに行きたいですし、その先はJ1でも、J2でも行ったところで活躍して、代表とかも目指していきたいですし、なるべくJ1行って就斗と兄弟対決という意志を一番強く持っています。(今年は)長所を伸ばしつつ、違うストロングポイントを見つけて、守備はまだまだ課題ですし、CKからの得点力を上げたらチームとしても助かるし、頑張りたい」。夏冬の全国大会に出場すること、チームをプレミアリーグへ復帰させることも大きな目標。より野心を持って挑戦し、ライバルを超える。

(取材・文 吉田太郎)
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