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高大7年計画で育成。タイミング、クオリティを追求し、「上手くなった」大阪学院が近江Bとドロー

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後半36分、大阪学院大高FW西田響が左足で同点ゴール

[8.27 高円宮杯プリンスリーグ関西2部第10節 近江高B 1-1 大阪学院大高 近江高校第2G]

 27日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2023 関西2部第10節で近江高B(滋賀)と大阪学院大高(大阪)が対戦し、1-1で引き分けた。

 大阪学院は初出場した16年インターハイでベスト16。GK梅田陸空(現仙台)を擁した18年度には選手権初出場を果たしている。そして昨年、プリンスリーグ関西1部に初昇格。FW山見大登(現G大阪)らも輩出している大阪の強豪校だ。

 その大阪学院は、今年から系列である大阪学院大(22年総理大臣杯準優勝)の志向するサッカーを共有。元G大阪DFで、京都や愛媛で指揮を執った経歴を持つ大阪学院大・實好礼忠監督(大阪学院大高総監督)のサポートも受けながら、高大7年での強化により力を入れているという。小野原明男監督は「一個一個のクオリティ、タイミングは今年に入ってだいぶ細かく追求している」と説明。ボールを大事にGKから繋いで質とタイミングで相手DFを剥がす、ワイドの幅を取って崩す戦いにチャレンジしていた。

 近江にビルドアップを狙われ、ロストするシーンも多かったことは確か。関西で初めてBチームがプリンスリーグ関西に参入している近江はAチーム同様、Bチームもリーグ戦で質を向上させている。MF大堀陽南太(3年)やDF藤井陸(3年)らがボールを握り返し、いずれも午前中のプリンスリーグ関西1部・京都U-18戦で途中出場したMF山本諒(2年)や右WB天雷樹(2年)がドリブルでゴール近くまで持ち込んでいた。

 それでも、大阪学院は繰り返しビルドアップにチャレンジ。左右両足のキックを特長とするCB清水俊主将(3年)が「大学生、トップとも試合をしています。(新たなスタイルに慣れなかったこともあり、)最初かなり失点しました。繋ぐのが怖かった。でも、だいぶ自分たちが握れるようになりました。正直、大学のトップにも通用しているところがあるのでだいぶ自信があります」と語るように、幾度か前線までボールを運んでチャンスに結びつけていた。

 その大阪学院は、初先発の1年生MF川井田昂信が細かなタッチと緩急を駆使したドリブルで1人、2人とかわして見せるなど異彩を放っていた。その川井田をはじめ、FW西田響(3年)、10番FW堀口海嵐(3年)、MF小西理仁(1年)の4人が強引な仕掛けや連動した動きで決定機を作り出す。

 だが、40分に川井田の落としから西田の放った左足シュートがわずかに枠を外れるなど1点を奪うことができない。近江も山本のドリブルシュートなどで相手ゴールを脅かすが、清水を中心とした大阪学院DF陣からゴールを破ることができなかった。

 大阪学院は後半半ば頃から運動量豊富なMF田仲莉久(2年)の存在感が高まり、DF内田大暉(1年)やファーストプレーから突破にチャレンジした右SB田中蓮人(1年)ら1年生も健闘。前進する回数を増やすと36分、前線でボールを収めた西田がターンしながらの左足シュートを放つ。小野原監督が「泥臭くやれる子」と説明するFWの一撃がゴール右隅へ決まり、先制した。

 さらに小西が抜け出してGKをかわすシーンもあったが、PAから繋ぎ続ける中で相手のプレッシングを受けてロストし、カウンターを食らってしまう。近江は選手交代で攻撃の迫力を維持。交代出場MF廣瀬脩斗(2年)の配球などからゴールへ迫り続ける。そして45分、ゴール前の混戦で左WB中川郁人(2年)から山本へボールが繋がり、右足で同点ゴール。土壇場で追いついた近江が引き分けに持ち込んだ。

 近江の前田高孝監督は選手たちの頑張りを認めた上で課題を指摘。「一瞬一瞬のトレーニングを怠ったらダメやぞ」「(セカンドチームにとって)価値のあるリーグの中で感謝しながらやらなければならない」と選手たちにメッセージを送っていた。

 一方、勝ち切れなかった大阪学院の小野原監督は「(決め切れずに勝点を落としたり)まだまだこういう試合になってしまう。(リスクは高いが、大学のように)マンツーマンで来たとしてもタイミングとクオリティで剥がせる。僕も指導者として成長しないといけない」。實好総監督の助言も受けながら選手、チームを強化。大学と7年間かけて選手を育成し、高大で日本一を目指す。

 また、清水は「(立ち位置やタイミングを学ぶことは)楽しくて自分のためになっている。上手くなったなという実感があります。(今後、プリンスリーグは)1位目指しながら、選手権も自分たちのサッカーをして勝っていきたい。目標は優勝です」。今年から高大が連携を深め、夏からまた攻撃の形を変えるなど試行錯誤しながら成長中。一日一日を大切に努力を続けて飛躍を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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