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[MOM4419]鳥栖U-18DF内丸寛太(2年)_貴重な先制点はプレミア初ゴール!チャレンジ中の右ウイングバックで躍動!

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プレミア初ゴールでチームに勝利をもたらしたサガン鳥栖U-18DF内丸寛太(2年=サガン鳥栖U-15唐津出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.10 高円宮杯プレミアリーグWEST第13節 鳥栖U-18 2-0 名古屋U-18 佐賀市健康運動センター]

 それは新たなチャレンジへとポジティブに取り組んだことに対する、サッカーの神様からのご褒美だったのだろうか。目の前にこぼれてきたボールを蹴り込むと、ゴールネットが揺れる。苦しんでいたチームを守備面ではもちろん、攻撃面でも救ってしまった17番の背中が一際大きく見えた。

「センターバックとしてはずっと無失点にこだわってきましたけど、それができない中で今日はウイングバックになって、守備のところでも無失点に抑えることもできましたし、攻撃のところでも1点獲れて勝てたので、良かったなと思います」。

 プレミアリーグで8試合ぶりの勝利を引き寄せたサガン鳥栖U-18(佐賀)の新・右ウイングバック。DF内丸寛太(2年=サガン鳥栖U-15唐津出身)のアグレッシブなプレーは、攻守両面でチームに強力なエネルギーをもたらした。

「中学2年生ぐらいからセンターバックしかしてこなかったですし、サイドバックでのプレーもあまりなかった中で、それより前のウイングバックはやってこなかったので、このポジションを言われた時は『あれ?間違っているのかな?』と思いました」と本人も笑う。難敵の名古屋グランパスU-18と対峙する一戦に、鳥栖U-18を率いる田中智宗監督は内丸を右のウイングバックで送り出す。

 ただでさえ今のシステムはこの夏から採用されたものであり、その上にやったことのないポジションでのスタメン起用。間違いなく難しさはあった中で、それでも内丸はとっくに腹を括っていた。「攻撃で求められているのは中に入っていくことで、守備のところでは今日は鈴木陽人選手が前に仕掛けてくるタイプだったので、そこを潰せたらなということを意識してきました」。

 参考にしたのは、快勝を収めたドイツ戦でも際立ったパフォーマンスを披露した日本代表のキーマンだ。「今日の試合前に見たのは冨安選手ですね。どちらかと言えば守備的な選手なので、『タイプもちょっと似ているかな』と思って、初めてそういうところを意識しながら動画を見ました」。ある程度のイメージは頭に叩き込んだ。あとはもう、やるしかない。

 その瞬間は唐突に訪れる。20分。このシステムになって中盤アンカーで出場機会を得ているMF池末徹平(2年)のパスを右サイドで受けると、そのままクロス。ファーサイドで収めたFW與座朝道(2年)のシュートは相手GKに防がれたものの、ボールは内丸の元へと向かってくる。

「もともとは3枚の右センターバックをやっていたんですけど、今回から右のウイングバックということで、左のウイングバックの與座(朝道)がクロスを上げる時に、自分が入っていくという戦術があったので、その通りに入っていったらたまたまこぼれてきて、決められたという感じです」。内丸が記録した貴重な先制弾は、自身にとってもプレミアリーグでの初ゴール。“新米ウイングバック”の一撃が、苦しむチームに大きな勇気を与える。

先制点を挙げて喜ぶ鳥栖U-18のDF内丸寛太(17番)


 田中監督が話した「内丸には初めてあそこのポジションをやらせたんですけど、彼の機動力や推進力は相手も嫌だったと思いますし、技術的にそんなに高い選手ではないんですけど、逆にプラスに考えると彼の特徴を出しやすい形にはなったのかなとは思います」という言葉は興味深い。指揮官の慧眼が、秘めていたそのポテンシャルを引き出したというわけだ。

 もちろん守備面でのパフォーマンスも見逃せない。既に名古屋のトップチーム昇格が内定しているMF鈴木陽人へ必死に食らい付き、決定的な仕事は未然に阻止。時には5バック気味に後方へ下がってスペースを埋めれば、終盤にはコーナーエリアでのボールキープにも果敢にトライする。

「もともとはプジョルが好きです。ああいう闘志あふれるプレーが好きなので、自分もああいう選手になって、もちろん今年もですけど、来年もチームを引っ張っていきたいなと思います」という言葉にも大いに頷ける気合の守備で、チームの完封勝利に貢献。内丸の攻守に渡る活躍が、4か月ぶりとなるリーグ戦勝利を鮮やかに引き寄せた。

 試合後の光景が目に焼き付いている。「もう久しぶりの勝ちということもあって、泣きそうでしたね。勝った時には歓声も聞こえてきて、サポーターの方々の笑顔も見られたので、それを見て感動したというか、『次も頑張ろう!』と思いました」。ようやく周囲に広がった笑顔をこれからも見続けるために、内丸が言い切った決意が印象深い。

「残留はマストなので、ここからしっかり勝ち続けて、上の方にどんどん上がっていって、1位を目指していきたいと思います。今はウイングバックもできますし、センターバックもできるので、与えられたポジションで自分にできることを精一杯やっていこうと思います。でも、技術面で1枚剥がしたりということはできないので、そこにももっと練習から取り組んで、自分のポジションにできたらなと考えています。ウイングバック、楽しいですね。点も決められるので(笑)」。

 突如として現れた新・右ウイングバックの躍動。内丸はとにかくチームの勝利のために、攻撃も守備も100パーセント以上のパワーを携えて、発揮して、鳥栖U-18が虎視眈々と狙う巻き返しの主役を、堂々と担ってみせる。



(取材・文 土屋雅史) 
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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