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[MOM4416]神戸U-18FW高山駿斗(3年)_3年目、28試合目の正直!待望のプレミア初ゴールを奪ったFWが感じる自身の成長

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待望のプレミア初ゴールに笑顔を見せるヴィッセル神戸U-18FW高山駿斗(3年=ヴィッセル神戸U-15出身、7番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.9 高円宮杯プレミアリーグWEST第13節 東福岡高 1-2 神戸U-18 東福岡高校グラウンド]

 3年目の正直。実に28試合目にして、ようやく掴んだプレミアリーグでの初ゴール。歓喜を分かち合う仲間の喜び方にもその意味がよくわかる。しかも待ちに待ったその一撃が、チームの勝利に繋がったのだから、なおさら価値のある1点になったことも間違いない。

「1年生から試合には出ていたんですけど、ゴールを決められないことが続いて、悔しい想いも結構してきた中で、お父さんやお母さんも試合を見に来てくれているのに、決められないというのがあって、高校3年間の中で一度でもいいから親にはシュートを決めているところを見せたいと思っていたので、今日決められて良かったです。でも、これを続けて、残り半分のリーグ戦も点を決めて、チームが優勝できたらいいなと思っています」。

 ようやく果たせた親孝行と、ここから始まるゴールラッシュへの期待。ヴィッセル神戸U-18(兵庫)の7番を背負ったアタッカー。FW高山駿斗(3年=ヴィッセル神戸U-15出身)が披露する躍動は、まだまだここからが本番だ。

“ゴールチャンス”は開始早々に訪れる。前半6分。巧みなプルアウェイの動き出しから、MF瀬口大翔(1年)のパスを引き出した高山は中央を抜け出すも、放ったシュートは果敢に飛び出してきた相手GKに阻まれてしまう。だが、思わず頭を抱えたものの、すぐに次のチャンスを窺う気持ちの切り替えはできていた。

 前半終了間際の45分。MF濱崎健斗(1年)がボールを持った瞬間に、イメージは共有される。「右のジャスティンくんの方に出そうと思ったんですけど、前を向いた時にそっちを切られていたので、ゴールの方を見たら高山くんがフリーでした」(濱崎)「自分はちょっと中側にポジションを取っていたので、濱崎が前を向いた瞬間に逃げる動きをして、自分のもらえるパスコースを作りました」(高山)。狙い通り、足元にボールが届く。

「少し相手を外してから、右に蹴るか左に蹴るかちょっと迷ったんですけど、ニア側の近い方に速いボールで、下を狙って流し込んだ感じです」。右足に感触はあったが、倒れ込んだキーパーの陰に隠れたボールは見えなかった。それでも仲間が喜ぶ姿を見て、とうとうその瞬間がやってきたことを知る。



「高山くんは初ゴールですし、アシストもできたので嬉しかったです」と濱崎が話し、チームを率いる安部雄大監督も「当然フォワードなので大事なことなんですけど、今まではどうしても自分が自分がというのが強かった中で、夏以降の彼は非常にメンタル的にもマインド的にも成長して、良いプレーができているんです。前節の横浜FC戦でもチャンスはありましたし、今週は『もうオマエも点はそのうち獲れるよ』と本当に言っていたので、僕も嬉しかったですね」と笑顔で明かしたものの、本人は自分でも意外な感情に襲われていたという。

「自分の中でも割と冷静でしたね。もちろんゴールは欲しかったんですけど、前節もアシストはしていて、自分がゴールをするというより、チームが点を獲ることが大事なので、そんなに自分のゴールやから感情が爆発することはなかったです。前の自分やったら爆発したかもしれないですけど、最近はチームのために動くことを意識してプレーしているので、そういうところでは成長してきているのかなとは思いますけど(笑)、やっぱりフォワードは点を獲るのが仕事なので、そこはしっかり意識しながら、責任を感じながら、自分自分にならないようにも意識しています」。初ゴールを決めても保たれていた冷静さの中に、高山は自身のメンタル面での成長を感じていたようだ。

 2点をリードしていたチームは、高山がベンチに下がった後に1点を返される。終盤は東福岡に押し込まれる時間が続いた状況に、「最後は『マジで守ってくれ!』『勝ってくれよ!』と思いながら見ていました」と高山は素直な感情を口にしたが、最後は全員で守り切っての1点差勝利。この日の主役は、プレミア初ゴールと勝利をきっちり引き寄せた背番号7で異論はないだろう。

「1年生の時も、2年生の時も、ゴール数がゼロだったので、『何で獲れないんだろう?』とずっと考えていました。でも、ポジションが左サイドからセンターフォワードに変わったこともありますし、いろいろ考えた結果として、やっとここで獲れたのかなと思います」と高山が言及したポジションのことに関して、前半戦はゴール前で存在感を見せていたFW有末翔太(3年)の負傷離脱も、活躍するための小さくないモチベーションになっているという。

「僕はアリ(有末)とは小中高と一緒のチームなんです。なので、ケガしてしまった時には『アリの分まで頑張ろう』と思いましたし、これから戻ってくるとは思うんですけど、いっしょにできるのは残り少ない時間になってしまうと思うので、アカデミーのラストイヤーの高校3年生で優勝するために、アリの分までという責任感は自分の中で感じています」(高山)。盟友が最高の形で帰ってこられるように、チームの攻撃を支える覚悟は定まっている。

 自分にできることは、自分が一番よくわかっている。それはきっとゴールを決める前も、ゴールを決めた後も、変わることはない。「もう続けるだけですね。謙虚に日々自分をアップデートしていく中で、これを続けていくことと、そこにプラスアルファで何かできたらいいですけど、まずは続けていくことを大事にしていきたいと思います」。

 日々のアップデートを続けた先に待っていたのは、初ゴールの景色。そして、ここからも続けることで手繰り寄せたいのは、この日の会場を訪れることの叶わなかった両親の目の前での得点と、さらなる自身の結果がもたらすリーグの頂上からの景色。高山のまっすぐな視線は、もうその光景をおぼろげなから捉え始めている。



(取材・文 土屋雅史) 
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ゲキサカ編集部
Text by ゲキサカ編集部
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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