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正当な評価がもたらす、正当な競争の連鎖。神戸U-18はアウェイで東福岡に競り勝って連勝達成!

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ヴィッセル神戸U-18はアウェイで粘り強く連勝達成!

[9.9 高円宮杯プレミアリーグWEST第13節 東福岡高 1-2 神戸U-18 東福岡高校グラウンド]

 頼もしい3年生と、元気な2年生と、スキルフルな1年生。上々なチームの雰囲気は結果に現れる。その勢いは彼らが日頃のトレーニングから激しい競争をしてきた賜物。後半戦の連勝スタートも、決して偶然ではなさそうだ。

「3年生はアカデミーの最後の年ということで試合に出たい気持ちはみんなが持っていますし、寮に一緒にみんなで住んでいるので、『下級生に負けられないよね』という話はしていますけど、1年生と2年生のレベルが高いおかげで、僕たちのレベルが上がっている部分もあると思います」(ヴィッセル神戸U-18・高山駿斗)。

 厳しい展開のゲームを一体感で乗り切った、クリムゾンレッドの粘り勝ち。9日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第13節、東福岡高(福岡)とヴィッセル神戸U-18(兵庫)が対峙した一戦は、前半にFW高山駿斗(3年)、後半にFW田中一成(3年)と3年生アタッカーのゴールで2点をリードした神戸U-18が、東福岡の反撃をMF西田頼(3年)が挙げた1点に抑え、逃げ切りに成功。順位も暫定3位へと浮上している。

 先に決定機を掴んだのは神戸U-18。前半6分。前節でプレミアデビューを飾ったMF瀬口大翔(1年)のスルーパスに高山が抜け出すも、東福岡のGK笈西櫂大(3年)が果敢に飛び出してファインセーブ。先制点には至らない。

 以降は「前半はビルドアップもあまりせずに、リスクを負わずに簡単にやろうと話していました」と笈西も明かした東福岡が、シンプルな前へのアタックでチャンスを創出。12分には右サイドを抜け出したMF今吉心絆(3年)のシュートは枠の左へ外れたものの、「自分がボールを受けて時間を作って、今吉にクロスを上げさせるようなパスを出して、崩せたらと思っていました」と話すインサイドハーフに入ったMF中山陸斗(3年)とMF榊原寛太(3年)の配球から、右サイドバックのDF福川聖人(2年)も含めた“右の推進力”でホームチームが少しずつリズムを引き寄せる。

「前半は少しボールが足に付かなかったですし、相手の土俵でやっているなあという感じもありましたね」と安部雄大監督も言及した神戸U-18は、なかなか攻め切れない時間が続く中で前半終盤にアクセルを踏み込む。41分。エリア内で粘って残した瀬口の落としから、MF岩本悠庵(2年)のシュートは枠を越え、44分にもキャプテンのMF坂本翔偉(3年)が左へ振り分け、瀬口の折り返しにMF濱崎健斗(1年)が合わせたシュートはゴール右へ外れたものの、ようやくチャンスを掴み出すと、結果を出したのは3年生のナンバー7。

 45分。バイタルエリアでボールを持った濱崎は「右の(本間)ジャスティンくんの方に出そうと思ったんですけど、前を向いた時にそっちを切られていたので、ゴールの方を見たら高山くんがフリーでした」とラストパス。「濱﨑が前を向いた瞬間に逃げる動きをして、自分のもらえるパスコースを作りました」という高山は狭いスペースをものともせず、素早く右足を振り抜いてゴールを陥れる。7番に待望のプレミア初得点が飛び出し、神戸U-18が1点をリードして、最初の45分間は終了した。

 ハーフタイムを挟んでも、神戸U-18のパワーは持続する。後半6分にもビッグチャンス。スペースでうまくボールを受けた濱崎が左へ流すと、瀬口は速いボールで正確なクロス。ここに飛び込んできた田中が“点”で合わせた完璧なヘディングは、ゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。教科書通りのサイドアタックから追加点。2-0。点差が開く。

「次の1点を先に獲られたことでゲームとしては厳しくなったなという感じはします」と森重潤也監督も口にした東福岡は、14分にセットプレーで好機。左から中山が蹴ったFKをファーで今吉が折り返し、最後はDF大坪聖央(2年)がこぼれ球に反応するも、フィニッシュはゴール左へ。ただ、18分と22分に相次いで濱崎が枠へ収めた決定的なシュートは、「キーパーが絶対に守らないといけないという気持ちがどんどん強くなっています」という笈西が気迫の連続セーブで仁王立ち。3点目は許さない。

 すると、36分に引き寄せた歓喜。左サイドからDF秋一星(3年)が蹴り込んだ高いボールに、「滞空時間が長かったおかげで、相手の前に入れたところもありますし、自主練通りにうまく行ったかなと思います」と振り返る西田が、身体を投げ出すダイビングヘッドでゴールをもぎ取る。「気持ちですね。相手のセンターバックより気持ちが勝ったのかなと思います」と言い切る、この日は途中出場でピッチに入ったキャプテンの意地。2-1。勝敗の行方はにわかにわからなくなる。

追撃のゴールに雄叫びを上げる東福岡高のキャプテン、MF西田頼


 38分も東福岡。ここも秋のクロスから西田が収め、今吉が右へ流したボールをMF落合琉鴻(3年)がシュートまで持ち込むも、ここは神戸U-18のDF山田海斗(2年)が気合のクリア。アウェイチームは42分にDF井上恋太朗(3年)を送り込み、後ろにトップ昇格が内定したDF本間ジャスティン(3年)、DF茨木陸(2年)、山田、DF江口拓真(2年)、井上を並べる5バックで取り掛かるゲームクローズ。

 攻め続ける東福岡。45+2分。大谷が縦パスを刺し、反転した落合のフィニッシュは枠を捉えるも、神戸U-18のGK亀田大河(1年)が丁寧にキャッチすると、これがこのゲーム最後のシュート。途中交代の岩本が「外から見ていて、もう見てられなかったですね」と話し、同じく後半にベンチへ下がった高山も「最後は『マジで守ってくれ!』『勝ってくれよ!』と思いながら見ていました」と口にしたように、東福岡の猛攻にさらされながらも何とか耐え切った神戸U-18が、アウェイで勝ち点3を力強く手繰り寄せる結果となった。

「最後はちょっと苦しかったですね。ウチも対人や身体が弱いとは思わないですけど、それをも上回ってくるヒガシさんの攻撃陣の推進力は本当に素晴らしかったなと思います」と語った安部監督は、前半戦から続いているチーム内の競争についてこういう言葉を残している。

「『自分が出た時にしっかり勝利に貢献するんだ』という意識で練習から取り組んでくれていますし、我々も正当に評価してあげないといけないなと思うので、そういう意味では非常に良い競争ができているのかなと感じています。やっぱり1年生のスキルの高さは素晴らしくて、コンセプトも含めたチーム力を彼らがグッと引き上げてくれているなと。そこで彼らにないタフさや強さを3年生が良い感じで補ってくれて、2年生が良い形で潤滑油になってくれているなとも思います」。

 この日のスタメンは3年生が4人、2年生も4人で、1年生が3人。冒頭の高山の言葉も印象的だが、「今年は1年生が頑張ってくれているので、『オレらもやらなきゃな』という想いになりますし、上級生としても負けられないですよね」とは2年生の岩本。さらに1年生の濱崎は「年齢は関係なく、自分たちが上級生と同じぐらいやって、ポジションを奪い合えるぐらいになることは意識してやっています」と言い切っており、学年間の競争意識がポジティブに作用している様子も窺える。

 濱崎が続けた言葉も頼もしい。「プレミアの強度は高いですけど、みんなが自信を持って、負けない気持ちをもっと出していったら全然1位も狙えると思うので、そこにみんなで向き合っていくことで、もっと上に行けると思います」。

 昨シーズンは得失点差で逃したプレミアリーグWESTの覇権を、虎視眈々と狙い続ける若きクリムゾンレッドの精鋭たち。正当な評価がもたらす、正当な競争の連鎖。ここからも神戸U-18、要注目。



(取材・文 土屋雅史) 
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ゲキサカ編集部
Text by ゲキサカ編集部
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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