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[MOM4333]富山一DF岡田駿也(3年)_セットプレーから2発。父と同じ紫のユニフォームを着て躍動

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得意のセットプレーから2点をマークした富山一高DF岡田駿也

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.23 高円宮杯プリンスリーグ北信越第14節 富山一高 3-3 新潟U-18 富山一高グラウンド]

 入学してから怪我が続き、本格的にボールを蹴り始めたのは2年生だった昨年の10月。プレーできない期間もチームの為に何ができるかを考え、練習のサポートや筋トレに励んできたが、気持ちを保ち続けるのは簡単ではない。「挫けそうな時期もあったけど、諦めなかったから、今があるのかなと思っています」。そう口にする富山一高(富山)のDF岡田駿也(3年)が、新潟U-18(新潟)との試合でヒーローとなった。

 富山一より上位に位置する新潟は、トップ昇格が内定しているMF石山青空(3年)など足元の技術に長けた選手が多い。加えて、今節の富山一は攻守の鍵となるMF多賀滉人(3年)が累積警告によって出場停止。ボールを持たれる展開になるのは想定した上で、加納靖典監督はこれまでの4バックではなく、3バックを導入した。

 自陣に引きこもって守るのではなく、積極的にボールを奪いに行くのがシステム変更の狙い。3バックの右に入った岡田はこう振り返る。「3バックはやったことがなかったけど、監督から『ビビらず前に行け』と言われていた。言葉を信じて、みんな怖がらずプレーできていました」。特に後半に入ってからは相手が間を通そうとしたパスに狙いを定めてボールを奪い、そのままDF陣が前に出て行く回数が増えていく。

 そうした岡田たちのポジティブな姿勢が1-3からの反撃に繋がる。後半15分にはリスタートの流れから左サイドのDF大居優汰(3年)がクロス。ボールはニアで待ち構えた岡田の頭上を越えたが、FW加藤隼也(3年)が頭で折り返した所を押し込み、ゴールをマーク。「自分の上を超えていったけど、FWの加藤が折り返してくれると思っていたので、そのまま中で待って準備していました」。

 24分にも岡田は再びヘディングで歓喜を呼び込む。MF稲垣禅太郎(3年)がゴール前に低く入れたボールをニアで合わせ、3-3の同点に持ち込んだ。試合終盤は相手のスルーパスから、DF棚木晴斗(2年)にゴール前を抜け出されそうになったが、岡田がスライディングで止めて失点を回避。「自信があるのは最後の粘り強さとセットプレー」。そう話す男が持ち味を発揮したからこそ掴めた、勝点1であるのは間違いない。

 攻守両面で光るプレーを見せた岡田は、紫のユニフォームを着て活躍する日を誰よりも心待ちにしていた。父・悠史さんは富山一がベスト4まで進んだ1999年度の選手権で主力を務めたボランチ。「自分も選手権に出て活躍したいなと思って入学しました」。

 怪我から本格復帰した今年の春以降は、「センターバックとしての立ち姿が良いし、選手としてのバランスも良い」とポテンシャルを評価する加納監督がスタメン起用を続けてきた。加納監督は現役時代、悠史さんの1学年下でチームメイトでもあったため、周囲からは「息子だから(試合に)出ているんだろう」とやっかみの声も聞かれたという。当初は試合感覚を取り戻すので精一杯で、外野の声を取り除くだけのパフォーマンスを見せられなかったのも事実だが、試合を重ねるうちに逞しい成長を遂げていく。「今までは勢いだけで自分のやりたいことをやるタイプだったけど、強い相手と継続してやると失点するので行く、行かないの判断が良くなった」(加納監督)。

 今ではチームに欠かせない選手で、岡田の所から崩された失点はほとんどない。頼れるセンターバックとなった男が見据えるのは父と同じく国立の舞台に立つ夢と、プリンスリーグ1部残留。「結果は引き分けだったけど、観ていて面白い試合ができたので、みんなも勇気が貰えたと思います。でも、まだ気を抜けない。次の星稜戦に向けて、1週間良い準備をしたい」。残留に一歩近づく活躍を見せたヒーローは、早くも次戦に目を向けた。

(取材・文 森田将義)
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森田将義
Text by 森田将義

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