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[MOM4467]FC東京U-18DF石堂純平(3年)_青赤のディフェンスリーダーが上へと描き続ける成長曲線。その圧倒的な存在感、もはや主役級

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FC東京U-18を束ねるディフェンスリーダー、DF石堂純平(3年=FC東京U-15深川出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.22 高円宮杯プレミアリーグEAST第19節 FC東京U-18 1-0 大宮U18 東京ガス武蔵野苑多目的グランド]

「え?今日はそんな良くなかったですよ」。自身はそう首を傾げたが、周囲の選手たちは笑顔と拍手でそのパフォーマンスを称え、囃し立てる。完封勝利を達成し、初めての“シャー”も披露したのだから、もうこの試合のマン・オブ・ザ・マッチでいいではないか。

「今は自分が一番試合に出場させてもらっているんですけど、経験を積んでいる分、自分がチームを引っ張らなくてはいけないと思いますし、周りの選手からも『オマエから発信して伝えろ』ということを言われているので、1人のディフェンダーとしてチームを勝たせられる選手に、少しずつですけど近付いていけているのかなと思います」。

 FC東京U-18(東京)の4番を背負う、クレバーなディフェンスリーダーであり、屈強なグラディエーター。DF石堂純平(3年=FC東京U-15深川出身)が纏う存在感は、シーズンを追うごとにその大きさを増し続けている。

 大宮アルディージャU18と対峙する、残留争い直接対決の大一番。チームは開始8分で先制。石堂も「みんなで『今日は勝たないといけない』という気持ちで入ったので、先制を全員で狙っていた中で、田邊(幸大)の特徴が出た形でPKを獲れて、9番の(山口)太陽が決めてくれたので、チームが勢い付きましたね」と話したが、以降はお互いに手数を出し切れないまま、前半の45分間は1-0で推移する。

「ゼロで抑えることだけを考えていました」と言う通り、失点は許されない状況下で、「お互い前に強く行くのが特徴なので、岩田が前に行く時はカバーに入って、自分も前に行ける時は岩田にカバーに入ってもらってという、そこで良い関係を2人で築いて守れたかなという感じです」と前節からセンターバックでパートナーを組むDF岩田友樹(2年)との連携も上々。セットプレーで押し込まれる展開にも、着々と時間を潰していく。

 苦しい時間帯に頭をよぎっていたのは、指揮官の言葉だったという。「自分たちがボールを持つ時間は少なかったと思うんですけど、奥原さんがいつも『試合中は97パーセント近くは苦しい。その先にある3パーセントを掴むぞ』と言ってくれているので、それを思い出しながら、全員で耐えて、耐えて、無失点で終われたことが良かったですね」。

 ファイナルスコアは1-0。今季初の“ウノゼロ”勝利をホームで掴む。試合後。サポーターのところへ挨拶に行くと、いったんは引き上げかけたものの、最後の最後で恒例の“シャー”へと駆け込みで加わった。

「奥原さんに『行ってこい!』と言われて、行きました(笑)。あんなに多くの人が応援しに来てくれて、それこそ北海道まで応援しに来てくれる方もいて、『こんなところまで来てくれるんだ』という気持ちもありましたし、応援してくれる人のためにも、やっぱり勝つことがお互いに嬉しいはずですからね。でも、“シャー”は初めてやりました」。充実の勝利に石堂にも、チームメイトにも、サポーターにも大きな笑顔が広がった。

 実は初めてキャプテンマークを試合開始から巻いた試合は、9試合未勝利で迎えた第15節の横浜F・マリノスユース戦だった。「周りからどう見えていたかはわからないですけど(笑)、結構気合は入っていましたし、自分がキャプテンマークを巻いて勝ったら、それに良いイメージしかできないと思ったので、逆にそこでやってやろうという気持ちはありました」。

 結果はリーグ戦10試合ぶりの勝利を掴むと同時に、普段から練習している“ホーム”の武蔵野苑グランドでも今季初白星。試合後には「やっぱり応援してくれる人からは、なかなか自分たちが勝てていない中で、それでも『頑張って』という声を掛けてもらっていたので、サポーターの前で勝てたことにホッとしましたし、それが一番嬉しかったです」とサポーターについて言及している。要は、人の想いを汲める熱い男なのだ。

 このプレミアリーグで戦う日常を積み重ねる中で、間違いなく自分に求める基準は上がっている。とりわけ完敗を喫した柏レイソルU-18との試合では、想いを新たにするような“マッチアップ”も経験したようだ。

「レイソルの9番のノブ(近野伸大)は小学校の頃も同じ区のチーム同士で、最後の大会もノブのチームに負けて終わったので、今回もノブにああいう形で負けたのは悔しかったですね。プレミアはレベルの高いフォワードがたくさんいるんですけど、それに負けているようでは“隣”のプロのピッチには立てないと思いますし、ノブも含めて相手のフォワード全員を抑えられるようなディフェンダーになりたいなという強い気持ちはありますね」。

 その決意の強さを証明するための試合は、まだ3試合残されている。自分のために、何よりもチームのために、為すべきことは十分すぎるほどにわかっている。

「1,2年生に来年もプレミアリーグで戦ってもらいたいという気持ちが、自分の中では今一番強くあるので、何としてでもこの舞台に残してあげたいですね。今日は勝ちましたけど、連勝できるチームにならないといけないですし、フロンターレ、流経、青森山田という強い相手に今年自分たちがやってきたことをどれだけ出せるかが試されているので、また良い準備をして頑張っていきたいなと思います」。

 クレバーなディフェンスリーダーであり、屈強なグラディエーター。いまやキャプテンマークを託されるほど、今シーズンを通じて上へ、上へと成長曲線を描き続けている石堂の存在感、もはや疑いなく主役級。



(取材・文 土屋雅史) 
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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