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[プレミアリーグEAST]「粘っこく」守り、後半から出場のエースFW郡司が3発! 3日後に選手権予選初戦の市立船橋が川崎F U-18に逆転勝ち!

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市立船橋高が0-2から逆転勝ち

[10.25 高円宮杯プレミアリーグEAST第16節 市立船橋高 3-2 川崎F U-18 千葉県フットボールセンター(人工芝)]

「粘っこく」守り、スーパーエースの3発で市船が逆転勝ち――。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTは25日、延期されていた第16節の市立船橋高(千葉)対川崎フロンターレU-18(神奈川)戦を行い、市立船橋が清水内定FW郡司璃来(3年)の3得点によって3-2で逆転勝ちを収めた。

 3日後に選手権予選初戦を控える市立船橋は、負傷を抱える選手などがベンチスタート。前節の青森山田高戦から先発6人が入れ替わっていた。その中でチャンスを得た選手たちが奮闘することを期待されたが、相手は暫定3位でリーグナンバー1の得点力を誇る川崎F U-18。序盤から相手の鋭い奪い返しと巧さの前に押し込まれる展開となった。

 川崎F U-18は、勝てば首位・青森山田高との勝点差が1。10番MF尾川丈(3年)やMF岡田泰輝(3年)が失わずにボールを繋ぎ、MF岡野一恭平(3年)やFW岡崎寅太郎(3年)のドリブルが止まらなかった。中盤、SBの選手も次々とゴール前に湧き出てシュートやラストパスに持ち込んだ。攻守で圧倒的な強さを見せる川崎F U-18の前に市立船橋は我慢の展開。ピッチサイドから「粘っこく!」「粘っこく!」の声が飛ぶ中、ゴール前で踏ん張り、元DFの185cmFW西大和(3年)を起点に幾度か攻め返していた。だが、27分、川崎F U-18が先制点を奪う。

 左サイドからのパスを受けたMF矢越幹都(2年)がトラップでマークを外し、鮮やかな右足シュートを右隅に叩き込む。さらに36分、尾川の右アーリークロスを得点ランク首位の岡崎が頭で決め、2-0とした。

 川崎F U-18はその後も岡野一の右足ミドルがポストを叩き、ワンツーで岡田が完全に抜け出す。だが、シュートは市立船橋左SB内川遼(3年)が身体を張ってブロック。これ以上失点する訳にはいかない市立船橋は、後半投入予定だった右SB佐藤凛音(3年)とCB宮川瑛光(3年)を43分に投入し、守りから立て直す。

 公式記録上の前半のシュート数は川崎F U-18の8-0。後半立ち上がりも川崎F U-18ペースの時間帯が続いた。だが、後半開始からエースFW郡司を投入した市立船橋が試合をひっくり返す。後半14分、左サイドでMF森駿人(3年)がFKを獲得。川崎F U-18の選手が主審に「止めて!」とアピールするが、相手が準備する前に市立船橋MF太田隼剛主将(3年)が左足でFKを蹴り込む。ファーの10番の前で川崎F U-18DFが対応。だが、郡司はその前へ足を伸ばして合わせると、ボールはゴール左隅に吸い込まれた。

 この追撃ゴールが流れを変えた。市立船橋の波多秀吾監督は、「1点入ると自分たちも勢いづいて行ったり、プレッシャーも少し強く行けたり、セカンドボールに対しても躊躇なく行けたりという感じなので。メンタルは大きなところなのかなと感じさせられましたね」。太田やMF秦悠月(3年)が前からボールを奪いに行く市立船橋に対し、川崎F U-18のGK濱崎知康主将(3年)はやや守りに入ってしまったことを反省していた。

 川崎F U-18はU-17ワールドカップメンバーに選出されたCB土屋櫂大(2年)が後半31分に負傷交代。それまで、トップ昇格内定CB由井航太(3年)ととも危なげのない守りを見せていた要が交代したことも影響したかもしれない。市立船橋は34分、左FKの流れから相手のカウンター攻撃を阻止。そしてボールを繋ぐと、敵陣で受けた宮川が前を向いてスルーパスを通す。これで郡司が抜け出し、ゴール左へ同点ゴールを突き刺した。

 市立船橋はさらに37分、右スローインから郡司がドリブルでPAへの侵入を狙う。これに対し、川崎F U-18DFが身体を前に入れてブロック。GKがキャッチするために前に出る。だが、諦めなかった郡司が咄嗟の判断で右足を伸ばし、シュート。ボールはGKの横を抜けてゴールへ吸い込まれた。これで郡司はハットトリックを達成。攻守に存在感を示したスーパーエースの3発によって3-2となった。

 川崎F U-18はU-17ワールドカップメンバーのDF柴田翔太郎(2年)ら3人を同時投入。ギアを上げると40分、交代出場FW八田秀斗(2年)がPAへ抜け出す。だが、市立船橋CB五来凌空(3年)が渾身のシュートブロック。川崎F U-18は44分の左CKでGK濱崎が加わり、ニアからヘディングシュートを放つ。だが、ボールはクロスバーをヒット。アディショナルタイム、再び攻め上がった濱崎がシュートを放つなど攻め込んだものの、「粘っこく」戦う市立船橋DFが再びブロックする。

 市立船橋の太田は、「やっぱりフロンターレは上手い。足を出したら簡単に抜かれてしまったり、パスアンドムーブに付いて行かないと簡単にやられるよ、というのが自分たちの分析の中であったので、本当にゴール前で剥がされてもカバーの選手が身体を張るだったり、最後の時間帯とか全員が身体を張ってゴールネット揺らさないというのができた。ああいうのは今後に活きてくると思う」。選手権日本一への挑戦をスタートする名門校が、今後に繋がる白星を奪取した。

 日本一を目指したインターハイは準々決勝で日大藤沢高(神奈川)に0-1で敗戦。流れを変えることができず、自分たちの強みである球際、切り替え、運動量でも相手を下回った。太田は「自分たちが上手く行かない時にああいう戦い方をして負けたという教訓があるからこそ、劣勢になった時にやらないといけないというのは分かっていたので、そこでの力というのは夏に比べて相当成長したかなというのがあります」。この日は自分たちの自信となる勝利。勢いをつけて選手権予選初戦、白井高との準々決勝へ向かう。

 波多監督は「フロンターレの巧さ、力強さ……ここに対してこういうゲームができたのは自信に繋がる。かなり自信になったかなと思いますけれども、しっかりと締め直して入って行きたい」と語り、太田は「在学中に1回も選手権の本戦に行けていない。本当に悔しいですし、最後の学年で、最後の選手権で、本当に自分は全国に出場するためではなくて全国優勝するために来たので、そこの部分で何が何でも本戦に行かなければまず何も始まらないので、『本当にやってやる』というか強い気持ちがあります。この熱を明日に冷めさせてしまったら絶対にダメですし、この強度ができるならば本戦にも絶対に出られるし、予選で相手に合わせちゃうと自分のパフォーマンスが発揮できないと思うので、まずは自分たちがやれることをやることが予選の中で一番大事になってくると思います」と力を込めた。中2日での厳しい戦い。市立船橋はこの日の熱、勢いを持って臨み、大事な選手権予選初戦を勝ち切る。

後半37分、市立船橋高FW郡司璃来がこの日3得点目のゴール

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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