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U-17W杯メンバー落選は未来へのエネルギー。FC東京U-18FW山口太陽が秘める無限の可能性

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FC東京U-18FW山口太陽(2年=FC東京U-15むさし出身)はU-17W杯メンバー落選をバネに飛躍を誓う

[11.18 高円宮杯プレミアリーグEAST第20節 FC東京U-18 0-2 川崎フロンターレU-18 東京ガス武蔵野苑多目的グランド]

 悔しくなかったはずがない。世界と対峙するチャンスが、あと少しのところまで迫ってきていたのだ。その権利が手元から零れていく現実を突き付けられた17歳の心中は、察して余りある。でも、もう気持ちは切り替えた。ここからの未来は自分次第。ならば、この経験をポジティブなエネルギーへと変えていくしかない。

「プレミアの残り2試合はコンディションをもっと上げて、得点という結果を出せば、U-17の代表に関わる人たちにも見てもらえると思うので、そういう人たちを見返すとまでは言わないですけど、ここで自分の力を最大限に発揮して、しっかり結果を残したいです」。

 FC東京U-18のストライカーナンバーを託されているレフティ。FW山口太陽(2年=FC東京U-15むさし出身)はU-17ワールドカップメンバー落選の悔しさを味わいながら、さらなる自身の成長へともう目を向けている。

「シンプルに悔しかったです。この春からずっとワールドカップを目指してきましたし、去年は代表に選ばれていなかったので、今年はまず春のキャンプからアピールして、どんどん代表活動に食い込んでいこうと思ってやってきたので、最終的な目標が達成できなかったのは悔しかったです」。

 10月25日。インドネシアで開催されるFIFA U-17 ワールドカップに臨む、U-17日本代表のメンバー21人が発表される。FC東京U-18からはMF佐藤龍之介、DF永野修都、GK後藤亘が選出されたが、8月のBalcom BMW CUP広島国際ユースと、9月のフランス遠征では代表に呼ばれていた山口の名前は、そのリストに書き込まれていなかった。

「フランス遠征では相手も強くて、自分自身も結果を残せなかったというのはあるんですけど、その前の活動では点も獲れていたので、手応えはありました。でも、フランス遠征が終わってからは、チームとしても自分としても苦しい時期で、そこでもっとアピールできたらメンバーにも入れたのかなという悔しさはあります」。

 広島国際ユースでは2試合連続ゴールを記録するなど、一定の結果は残したものの、より強い相手と対峙したフランスのリモージュ国際大会ではアピールしきれず、無念の落選。春先から「自分の中でもワールドカップは絶対に出たい大会なので、そのために逆算して、今からできることをやって、代表のキャンプに選ばれて、絶対ワールドカップに行きたいです」と話していただけに、落胆が大きくなかったと言えば嘘になる。

 それでも次の試合は、次の練習は、やってくる。「自分としては前を向いていて、『この先でプロになる』という目標を一番にして頑張っていこうと思って練習してきたので、この期間はメンタル的にも頑張ったかなと思います」。世界の舞台に旅立つチームメイトを見送り、小平のグラウンドで目の前の課題と向き合ってきた。

 開催されているU-17ワールドカップは、寮の食堂でチームメイトたちと一緒に観戦しているという。「ワールドカップ、見ていますね。まあ、正直思い切り応援はできないところもありますけど、FC東京のチームメイトもいるので、そういうところでは応援していますし、フォワード陣も活躍を望んではいないですけど、彼らをここから抜いていくためにも、どういうプレーをしているのかという確認はしています」。

 とりわけ広島国際ユースでは2トップを組むことも多く、2度の代表活動で仲良くなったというFW高岡伶颯(日章学園高2年)の活躍は、山口にとっても大いに刺激になっているようだ。

「広島でもフランスでも一緒にやっていますし、同じ試合に出ることも多かったので、仲良くなりました。広島で一緒だった時も、アジアカップでなかなか結果を残していなかったので、『ここで絶対に結果を残してやろう』という気持ちは結構伝わってきていたので、『自分も負けたくない』という想いでやっていたんですけど、ワールドカップでもアイツの想いは見ていても感じているので、『活躍するべくして活躍しているのかな』と思いますし、悔しいですけど、納得している部分もあります」。

「ただ、ワールドカップの前までは連絡していましたけど、大会が始まってからは連絡していないです(笑)」。あるいは自分がその舞台に立っていたかもしれなかっただけに、ストライカーという同じポジションで切磋琢磨してきた仲間の躍動する姿に、割り切れない感情が湧いてくるのも無理はない。

 この日の川崎フロンターレU-18との試合は、コンディション不良もあってベンチスタート。2点ビハインドの後半33分から登場したものの、なかなかチャンスを作り出すまでには至らないまま、チームも0-2で敗れてしまう。「自分は収めることはできるので、そこをもっと生かすために、自分1人で剥がしに行ける力というのを付けようと思って、単純にスピードのような身体的な部分を意識してトレーニングしたり、ドリブルだったりを重点的に頑張りました」という3週間の成果は出し切れなかったものの、地道に成長していこうという姿勢も垣間見えた。

 日本を代表するストライカーの大迫勇也(ヴィッセル神戸)も、U-17ワールドカップの出場を逃したものの、そこから高校選手権で得点王を獲得し、鹿島アントラーズで活躍したのちに、海外でのプレーを経て、ワールドカップまで辿り着いた経緯もある。

「大迫選手の話も知っていたので、自分も『そういう悔しさをバネにできたらいいな』と思っています。自分にはプロになる夢や、A代表の選手になる夢があるので、そこを目標にしていきたいですし、今は悔しいですけど、その先を見据えて努力していけば、いつか絶対に結果を出せると思うので、これからも頑張っていきたいです」。

 17歳の未来には無限の可能性が広がっている。若き青赤の9番を背負うしなやかなストライカー。山口太陽がこれから歩んでいく道には、この秋に味わった悔しさをバネに、大きく飛躍するために用意されたいくつものステージが、彼の登場を待ちわびているはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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