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2年連続で勝って流した悔し涙…プレミアWEST制覇に一歩届かなかった神戸U-18、“若いチーム”が示した確かな成長

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惜しくも2位で終わったヴィッセル神戸U-18だが、らしさを存分に発揮し大勝

[12.3 高円宮杯プレミアリーグWEST第22節 神戸U-18 5-0 静岡学園高 いぶきの森球技場(人工芝)]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 WESTは3日、第22節を行ない、2位のヴィッセル神戸U-18(兵庫)と3位の静岡学園高(静岡)が対戦。MF濱崎健斗(1年)の先制点を皮切りに5点を奪った神戸が快勝した。

 今年の神戸は下級生が主力の半数以上を占める若いチームとあり、リーグ開幕前は苦しい戦いを想定していたという。実際、前期は取りこぼしが多く5勝3分3敗で中位に位置したが、後期は前節まで8勝2敗のハイペースで勝ち点を積み上げ、2位に浮上。首位の広島ユースが引き分け以下に終わり、神戸が勝てば逆転優勝という状況で最終節を迎えた。

「自分たちがやるべきことは変わらない。勝つだけだった。サンフレッチェのことは気にせず、自分たちのサッカーをやろうと思っていた」。濱崎の言葉通り、好調の原動力であるDF山田海斗(2年)を中心とした堅守は今節も変わりない。試合序盤こそ徳島内定のMF高田優(3年)を中心とした静岡学園らしいテクニカルな仕掛けに手を焼き、自陣まで持ち込まれる場面もあったが、落ち着いた守備対応を見せる。

 神戸に最初の見せ場が訪れたのは前半12分。自陣からのクサビを受けたMF坂本翔偉(3年)から、前線のFW高山駿斗(3年)、右サイドのFW田中一成(3年)と繋いでゴール前にクロス。静岡学園の守備に弾かれた所を坂本が狙ったが、東京V内定のGK中村圭佑(3年)に防がれた。

 19分には再び右サイドから見せ場を作る。タイミングよく前方へ駆け上がったDF本間ジャスティン(3年)がゴール前にパスを入れると、濱崎が「サイドが持った時にクロスというのはみんなのイメージにあった」と合わせに行った所を倒され、PKを獲得。このチャンスを濱崎自らが冷静に決めて、幸先の良いスタートを切った。

 45+2分には相手ゴール前でFKのチャンスを掴むと、キッカーは濱崎。軽く右に流して相手の間合いをずらすと傍にいたMF岩本悠庵(2年)がゴール右下に流し込み、静岡学園を突き放した。前半の2ゴールに絡んだ濱崎は「(岩本)悠庵とはあの位置でFKを奪ったら、やろうと話していた」と笑みを浮かべる。

 ハーフタイムには同時刻キックオフの広島が2-2で試合を折り返したとスタッフから知らされ、俄然神戸のモチベーションは上がる。後半に入ってからも攻撃の手を緩めず、9分には田中が打ったシュートのこぼれ球を坂本が押し込み、リードは3点差に。26分にも途中出場のMF瀬口大翔(1年)がゴールネットを揺らし、勝利を決定づけた。

 ノルマを達成したが、同じ頃に広島に勝ち越しとなる3点目が生まれてしまう。「試合終盤にベンチの方を見たら落ち込んでいるように見えたので、優勝は難しいのだと理解していた」(岩本)。それでも、最後まで諦めずに戦った神戸は45+3分にFW渡辺隼斗(1年)が5点目をたたき出し、5-0で勝利した。

 昨季も最終節まで優勝の可能性を残していたが、鳥栖に得失点差で及ばず2位。昨年超えを目指した今季も善戦は実らず2位でシーズンを終えた。神戸の選手からは大勝した喜びは見られず、試合後は坂本を筆頭に優勝できず悔し涙を流す選手がほとんど。安部雄大監督は「2年間もこんな僅差で優勝を逃すのは、メンタル的に辛い。もっと頑張りなさい、努力しなさいとサッカーの神様が言っていると思うしかない」と口にする。

 若いチームが逞しく成長した一方、「トータル的にチャンピンになる力がなかったと受け止めなければいけない」(安部監督)のも事実。特に、広島には前期後期ともに黒星を喫しており、連敗をしないチームにならなければ、あと一歩先へは踏み出せない。「1試合の大切さに気付かされた。1試合1試合にどれぐらいの気持ちを込められるか。来年は中心になって、もっとやっていきたい」と口にするのは濱崎だ。

 一方で、チームとしての基準は明らかに上がっている。「2年連続で優勝争いをして、昨年も勝って泣いている。今年も勝って泣いている。残留できて喜んでいるのではなく、優勝できなくて悔しがっている姿を見ると選手たちのマインドは2年間である程度変えることができた。来年のスタートは自然と“優勝するぞ”のマインドに入れるはず」(安部監督)。2年連続で流した悔し涙を無駄にしてはいけない。来年こそは笑顔でハッピーエンドを迎える準備を進めていく。

(取材・文 森田将義)
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
森田将義
Text by 森田将義

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