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[MOM4555]岡山U-18MF南稜大(2年)_大事な試合で鼻が利く「持っている男」が圧巻の2ゴールで逆転勝利の主役をさらう!

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同点ゴールを挙げて笑顔を見せるファジアーノ岡山U-18MF南稜大(2年=ファジアーノ岡山U-15出身、15番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 岡山U-18 3-1 札幌U-18 広島広域公園第一球技場]

 大事なゲームで何かをやってくれそうな雰囲気は、チームメイトも感じているという。その上で掲げ続けてきた目標達成が懸かっているこの大事な局面でも、きっちり仕事をしてしまうのだから、やはり“持っている”選手ということなのだろう。

「やっぱり3年生にとっては最後の試合になりますし、1試合でも多く一緒にプレーしたいという想いはあったので、非常に大きい勝利だと思います。ゴールは狙っていましたね」。

 悲願のプレミアリーグ昇格にあと1勝まで迫ったファジアーノ岡山U-18(中国1、岡山)のポイントゲッター。MF南稜大(2年=ファジアーノ岡山U-15出身)の勝負強さが、大一番でも眩い輝きを放った。


「先制されても、絶対返せるだろうなとは感じていました」。南はビハインドを負った時の、チームの雰囲気をそう語る。プレミアリーグプレーオフ1回戦。北海道コンサドーレ札幌U-18(北海道2)と対峙した一戦は、前半18分に先制点を献上してしまったが、岡山U-18は大きな混乱をきたすことなく、冷静に得意のビルドアップを貫き、ボールを動かしていく。

 37分。レフティのMF藤田成充(2年)が蹴り込んだ右CKから、ファーサイドでボールを拾ったDF服部航大(3年)が丁寧なクロス。右からキャプテンのDF勝部陽太(3年)が折り返したボールに、15番が誰よりも早く反応する。

「普段はあそこに走り込むというプレーはあまりやっていないんですけど、今日はああいうところがチャンスになるかなと思って走り込みました。あそこがチャンスになってきた経験があるので、いいところにボールが来たと思います」(南)。勝部も「『あのへんに蹴っておけば、誰か詰めてくれる』という感覚もあって打った」というボールをきっちり押し込んだ南のゴールで、岡山U-18はスコアを振り出しに引き戻す。

 その活躍は、これだけで終わらない。押し込みながらも、なかなか点が奪えずに1-1で迎えた後半19分。ここもセットプレーの流れから、右サイドでボールを収めたFW村木輝(3年)がシュート気味に放ったクロスに、ファーサイドでフリーになっていた15番が飛び込んでいく。

「あそこにボールが入っていった瞬間に、ファーに流れてくるか、クリアされるかどっちかだと思ったんですけど、そこでファーに流れてきたので、1点目と同じく入っていきました。アレはシュートだと思いますね(笑)」。その嗅覚を発動させて奪ったのは、貴重な逆転ゴール。さらに後半アディショナルタイムにFW石井秀幸(2年)が追加点を記録した岡山U-18は3-1で勝利。「彼は守備でも攻撃でも空間を見る力はあるので、そこが生きたのかなと思います」と梁圭史監督も認める南が2ゴールを叩き出して、勝利の主役をさらっていった。



「アイツは本当に大事な試合で点を獲ってくれるので、後輩ですけどメチャメチャ頼もしいです」と勝部も話したように、今シーズンの南は大事な試合で得点を重ねてきた。とりわけ全国4強まで勝ち上がった夏のクラブユース選手権では、初戦の鹿島アントラーズユース戦に加え、準々決勝のジェフユナイテッド千葉U-18戦でもゴールを奪い、チームの躍進にきっちり貢献。“持っている”星を証明してきたのだ。

 中盤をしなやかに動き回るタイプだが、自己分析するプレーヤーとしての特徴は「攻守において常にボールに関わり続けて、得点やゲームの組み立てに関わること」。中盤でアンカー気味に位置する藤田と、少し高い位置を取るMF楢崎光成(3年)とのバランスを見ながら、攻守に効果的なプレーを選択していく。

 U-15からファジアーノで育ち、クラブ在籍5年目を迎えた南は、改めて試合を見に来てくれる人たちへの感謝を隠さない。「夏のクラブユースもそうですし、プリンスリーグの最終節もたくさんの方が来てくれましたし、今日も凄く人が多かったので、自分たちにとってはすごく大きなエネルギーになりました」。

 クラブとして目指し続けてきたプレミアリーグ昇格まではあと1勝。京都サンガF.C.U-18と対峙する2023年のラストゲームへ向けて、自ずと気持ちが高まっていることなんて、あえて言うまでもないだろう。

「今年のチームは個々の1人1人のレベルも徐々に上がっているのかなと思いますし、チームワークも他のチームよりもいいんじゃないかなと思います。来年の自分たちが少しでも上で戦うために、次も絶対に勝ちたいですし、3年生にとっても最後の試合なので、そういう意味でも勝ちたいです。点、獲りたいですね」。

 のびやかに解き放つのは、大事な試合で大事な得点の香りに鼻を利かせてきた、その鋭い嗅覚。チームの歴史に新たな1ページを書き加えるためのビッグマッチでも、突如としてゴール前に現れる南の一挙手一投足から、目が離せない。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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