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近江が北海を延長撃破。滋賀県3部から8年でプレミア王手

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“夢見る新鋭”近江高がプレミアリーグ昇格へ王手

[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 北海高 1-2(延長)近江高 広島広域公園 第一球技場]

 高円宮杯 JFA U-18プレミアリーグ2023プレーオフの1回戦が8日、広島県内で開催され、来季プレミアリーグ参入の権利を懸けての戦いが幕を開けた。広島広域公園第一球技場の第2試合では、プリンスリーグ北海道1位の北海高とプリンスリーグ関西2位の近江高が対戦。全国高校サッカー選手権大会への出場も決めている両校の対戦は延長戦までもつれる激闘の末、2-1で近江に軍配が上がった。

 試合の先手を取ったのは北海道王者だった。プリンスリーグ北海道の得点王であるFW野村光希(3年)と同アシスト王のFW田中準人(3年)の北海道最強2トップを軸に攻め入ると、野村のドリブル突破がファウルを誘って、PKを獲得。これを野村が自ら流し込み、開始6分にして先制点を奪い取った。

 この北海の応援には、交流のある立正大淞南高の部員100名以上が大挙して駆け付けており、スタジアムの雰囲気を序盤に呑み込んでいた。近江・前田高孝監督は「前半、やはり僕らはまだまだ全国の常連校ではない部分が出てしまったというか、雰囲気の中で硬さが出てしまっていた」と振り返ったように、序盤は北海のゲームとなった。

 ただ、京都U-18、阪南大高、京都橘高、東海大仰星高、G大阪ユース、C大阪U-18といった列強がしのぎを削る激戦区の関西で2位になった近江も、このまま終わるチームではない。ハーフタイムに前田監督は選手たちに呼び掛けた。

「こういう舞台で負けてきたのが近江の歴史や。でも、今年のチームでそれを変えよう。やるだけやろ。もっと向かっていこうや!」

 やや萎縮の観られた選手たちの背中を押しつつ、戦術的にも修正。後半はダイナミックなワイド攻撃で守備を固めてきた北海を圧倒し、特にクロスボールから多くのチャンスを作り出す。17分にはMF浅井晴孔(3年)のクロスにFW山門立侑(3年)が頭で合わせて同点ゴールを奪い取ってスコアをイーブンに戻し、その後も攻勢を継続した。

 しかし、「みんな本当に決め切れなかった」と浅井が振り返ったように、最後まで体を張って守る北海DFの圧力もあり、フィニッシュがなかなか決まらない。26分には浅井のクロスからFW小山真尋(3年)のヘッド、31分には山門の鋭いクロスから浅井が狙うも、いずれも枠外とゴールを捉えきれなかった。

 延長に入ってからも、後半1分、2分、3分と連続して決定機を迎えるが、それぞれ枠外、バー直撃、北海GK小野寺信(3年)のセーブに阻まれてゴールならず。そのままPK戦突入かと思われた延長後半9分、試合は動いた。

 10分ハーフの延長戦の終わり際、決定的な仕事をこなしたのはDF金山耀太(3年)だった。試合途中で足がつったため、「相手のカウンターには怖さがある」と考えた前田監督は金山をCBから左ウイングバックへ配置転換。これが奏功することに。延長後半9分、外から中へと入ってきていた金山の足元へラストパスが通ると、金山はこれを右足一閃。飛び出したGKを浮いたボールでかわしたシュートがゴールネットを揺らした。

「よくあそこへ走っていたし、よく決めた」と前田監督も絶賛する一撃で試合の均衡を崩すと、北海のパワープレー気味の反撃もしのぎ切った近江が2-1で勝利。プレーオフ1回戦突破を決めた。

 2回戦の相手は九州王者の鹿児島城西高。前田監督は「毎年対戦もしていて本当に仲の良い相手。ここで当たるとは縁がある」と笑う相手を下し、来季プレミアリーグ参入を狙う。

「県3部からスタートして8年でここまで来られた。名前のある学校でなくとも、ゼロからのスタートであってもこういう舞台に行けるんだというところを見せたい。全国の色んな人に知ってもらって、またそういう夢を持つ高校が増えれば、凄く意義があると思っている」(前田監督)

 夢見る新鋭・近江と九州の名門・鹿児島城西の対戦は、10日13時30分からエディオンスタジアムで幕を開ける。

(取材・文 川端暁彦)


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川端暁彦
Text by 川端暁彦

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