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“破壊力対決”は試合終了間際の決勝点で決着。京都U-18が4-3で日章学園を振り切り、プレミア復帰へ王手!

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後半42分、京都サンガF.C.U-18がFW兎澤玲大(9番)の決勝点を喜ぶ

[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 京都U-18 4-3 日章学園高 東広島運動公園陸上競技場]

「3点取られても、4点取る」。京都U-18が“破壊力対決”を制し、21年以来のプレミアリーグ復帰へあと1勝とした。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024参入を懸けたプレーオフ(広島)が8日に開幕し、Aブロック1回戦でプリンスリーグ関西1部優勝の京都サンガF.C.U-18(京都)と同九州2位の日章学園高(宮崎)が激突。京都U-18が4-3で勝ち、10日の2回戦(対岡山U-18)へ進出した。

「今年は3点取られても、4点取りに行くサッカーっていうのでやってて、攻撃力が持ち味なんで、ほんまにその言葉に合った良いゲームができたかなと思います」。交代出場で同点ヘッドを決めたFW熊谷空大(3年)は胸を張る。日章学園はU-17ワールドカップ4得点のU-17日本代表FW高岡伶颯(2年)が強烈な動き。プリンスリーグ九州1部18試合で57得点の日章学園に2点を先取されたが、同関西1部で最多51得点の京都U-18が最後は攻撃力で上回った。

 立ち上がりから京都U-18がボールを支配し、敵陣での時間を増やす展開。大きなサイドチェンジを交えて守りの薄いところを狙いながらゴールへ向かう。そして、U-19日本代表の189cmCB喜多壱也(3年)の高さを活かしたセットプレーなどからチャンスを量産。だが、日章学園は我慢の序盤を踏ん張ると、高岡の快足を活かした守備や前線の選手たちの献身的なプレスバック、球際での健闘を続け、攻撃力も示す。

 20分、右サイドでボールを引き出した高岡を起点とした攻撃から、FW篠田星凪(3年)が左足シュート。するとその1分後、敵陣での奪い返しから右のMF南創太(2年)が中へ切れ込んで左足を振り抜く。これがファーサイドのネットへ吸い込まれ、日章学園が先制した。

 日章学園はさらに31分、右サイドでボールを受けた高岡がボールをロストしそうになりながらも持ちこたえて中央へ。そのまま豪快な左足シュートをゴールへ突き刺した。U-17ワールドカップのポーランド戦を彷彿とさせる一撃で2-0。劣勢の展開から2点を先取した。

 京都U-18は4-4-2から5-3-2へシフトチェンジした日章学園の守りの前に攻撃がやや停滞していた。左サイドから作ったチャンスを相手DF宮本大誠(3年)にクリアされるなど1点が遠かったが、1点を返して前半を終える。43分、FW吉田達海(3年)とのコンビからU-18日本代表左SB飯田陸斗(3年)がクロス。これをファーサイドのMF住芳樹(3年)が頭で決め、1-2とした。

 京都U-18の石田英之監督は「点取られても、取り返せる力はあるって、多分、自分らでも思ってるから、(選手たちは)そんなに慌ててなかった」と選手たちの様子について説明する。京都U-18は後半開始から怪我明けのFW熊谷空大(3年)を投入。熊谷が繰り返し相手背後を狙って攻撃を活性化し、また立ち位置を修正したチームは攻撃で日章学園を飲み込んでいった。

 9分、右サイドのFW兎澤玲大(3年)がカットインから左足シュート。GKが弾いたボールを飯田が右足でねじ込み、同点に追いつく。さらに10番FW安藤友敬(3年)のドリブルシュートなどで攻め続けると17分、右ハイサイドでボールを奪い返した住がクロス。これを熊谷が頭で決め、逆転した。

 日章学園もチャンスを作っていたが、その回数を増やすことができず、守備の脆さが出て連続失点。それでも空中戦などで奮闘するDF藤本晃士主将(3年)らが1点差を維持する。そして31分、高岡が左サイドからFKを蹴り込むと、こぼれ球をDF吉川昂我(2年)が左足で蹴り込み、同点に追いついた。

 ここから互いが個の力を駆使した激しい攻め合いに。日章学園FW高岡が五分に満たないようなボールでも相手DFの前に身体をねじ込んでキープし、さらに前へ出てシュートを打ち込む。対する京都U-18も、熊谷のドリブルシュートや喜多のヘッドなどで勝ち越し点を目指した。

 そして42分、日章学園は相手の速攻に対応したが、セカンドボールをコントロールしようとしたDFがハンドを取られて自陣中央でFKを献上。京都U-18は安藤が素早いリスタートで右前方へボールを転がす。これに走り込んだ兎澤が右足で中央へ入れると、ボールはニアのDFに当たってコースが変わり、ゴールへ吸い込まれた。

 日章学園の原啓太監督は「子供たちのパワーというか、熱量がああいう(3点目の同点)ゴールに繋がって、ちょっと3-3の時に仕留めるそうなところもあったので、あそこが際だったかなと」と残念がる。一方の京都U-18・石田監督は「『破壊力対決』やったんで、やってくれましたよ。『最後の最後で決着つくぞ』っていう話もしてたんで。そんな保証はないですけど、それに向かっていくようにそういう話をしたら、みんな最後の最後まで点取りに行って、体張って守って、っていうゲームになったりするので良かったです」と微笑。京都U-18が「最後の最後」で決着をつけた。

 京都U-18は昨年、プレーオフ2回戦で旭川実高(北海道)に0-0からのPK戦で惜敗。そこから1年間、「3点取られても4点取る」攻撃サッカーを目指してきた。「今年はもう、こっち(攻撃)に針を振ってやってきたんで、1年間、攻撃的に。それが最後出たかなと思います」と石田監督は頷く。攻め勝ってプレミア昇格へ王手。だが、日本クラブユース選手権(U-18)大秋3位の強敵・岡山U-18との大一番が残っている。熊谷は「去年は次の試合、2試合目で負けている。ずっとその悔しさあって、それをなくすために、やっぱこの1年間頑張ってきたんで、ほんまに全力で、 全員でやっていきたいなと思います」と力を込めた。自分たちが取り組んできたことを出し切り、プレミア昇格を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)

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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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