beacon

[MOM4556]近江DF金山耀太(3年)_限界ギリギリの肉体で劇的な延長V弾。地元広島で大仕事

このエントリーをはてなブックマークに追加

延長後半9分、近江高DF金山耀太が決勝ゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 北海高 1-2(延長)近江高 広島広域公園 第一球技場]

 広島から来た男たちを広島へ連れて行こうじゃないか。プリンスリーグ関西の最終節を前に、近江高・前田高孝監督はそんな言葉を選手たちにかけ、見事に逆転2位で広島県で開催されるプレミアリーグプレーオフの切符を掴み取った。

「連れて行こう」と言われたのは広島シーガルFCから近江を進路に選んだMF西飛勇吾(3年)とDF金山耀太(3年)の二人。そして、迎えた北海高との1回戦で最後に決定的な結果を残したのは、金山だった。

 試合後、「最後はしんどかった」と率直に振り返ったように、金山の肉体は限界に近かった。序盤からカウンターが売りの北海の攻撃陣に対し、DF陣の一角として注意深く対応。対戦相手の北海・島谷制勝監督も絶賛する仕事ぶりだったが、消耗も大きかった。

 延長にもつれ込む死闘の中で足をつってしまった金山を、前田監督は延長後半からウイングバックへポジションチェンジ。相手のカウンターに対応したときに足を再びつるような事態を懸念しての防御的な措置だったと言うが、元々ウイングバックは金山が1、2年生の時に務めていたポジション。「どちらでも全く問題ない」と自ら語るとおりで、むしろ日本代表MF三笘薫に憧れる男にしてみると、見せ場到来という面もあったかもしれない。

 実際、金山のハイライトは消耗を受けての配置替えの後に巡ってきた。「広島での試合で地元のみんなが応援に来てくれていた」という状況で金山の足は動き続け、延長後半終了間際の9分になってその体をゴール前まで運ばせた。

「よくあそこまで走っていた」と前田監督も驚嘆したランニングの末に足元へ届いたパスから右足シュート。飛び出してきたGKとの距離も短く、かなり難易度の高いシュートだったが、「気持ちでいった」という感覚的なシュートはしっかりGKの守備範囲の外を通ってゴールへ。劇的な決勝点に歓喜の輪が生まれた。

 ただ試合後、誰もが認める殊勲者は意外にも少し渋い表情だった。

「自分たちがボールを持ってチャンスも作っていたのに、シーズンの課題がまた出てしまった」

 主将の責任として北海相手に大苦戦を強いられた部分にフォーカスしなければいけないという思いがあるからこそだろう。関西2位で掴んだ高円宮杯U-18プレミアリーグプレーオフ1回戦。延長戦の末に掴んだ2-1での劇的勝利に浮かれた様子を見せたのは試合直後のみ。その意識は「次も勝つ」ことへ早くも向いていた。

(取材・文 川端暁彦)
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
●第102回全国高校サッカー選手権特集
川端暁彦
Text by 川端暁彦

TOP