beacon

京都U-18に勢いもたらすヘディング弾。6年間、ため込んできたMF住芳樹がリーグ最終節に続く2戦連発

このエントリーをはてなブックマークに追加

前半43分、MF住芳樹(3年=京都サンガF.C.U-15出身、6番)が京都サンガF.C.U-18を勢いづける追撃ゴール

[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 京都U-18 4-3 日章学園高 東広島運動公園陸上競技場]

 京都サンガF.C.U-18は試合への入り方は良かったが、そこで先制点を奪うことができず、逆に日章学園高FW高岡伶颯(2年)のスーパーミドルを含む2発を叩き込まれて、前半31分で0-2のスコアに持ち込まれた。

 キャプテンのDF飯田陸斗(3年)が「2点差になって焦っている選手がいた」と振り返ったように嫌な雰囲気が漂ったが、そんなチームに反撃への道筋を示したのがMF住芳樹(3年=京都サンガF.C.U-15出身)だった。

 前半43分、左サイドでボールを持ったFW吉田遥海(3年)を追い越す攻撃参加から飯田がクロスをあげると、ニアサイドや中央へ走りこんだ選手を超えてファーサイドへ向かったところに「いつもゴール前へ走りこむことは狙っているし、(飯田)陸斗からクロスが来るなと感じました」と走りこんだ住がヘッドで決めて、1点差とした。

 ハーフタイムを迎えるのが2点差と1点差では、精神的な面も含めてかなり違う。「いい崩しから取れた、あの1点が大きかった」(石田英之監督)と指揮官も認める一発だったし、それを決めたのが住だったこともチームに勢いを与えた。

 中学生から京都サンガの下部組織でプレーする住はボランチのポジションということもあるが、ゴールとは無縁の選手だった。京都U-15から試合に出場しているのに、リーグ戦では中学1年から高校3年の11月まで無得点。これまで惜しい場面を迎えても、シュートが枠に飛ばなかったり、相手に防がれて、天を仰ぐことばかりだった。

 しかし、12月2日のプリンスリーグ関西1部の最終節・阪南大高戦で味方のシュートのこぼれ球をゴール前で押し込む決勝点で、念願の初ゴールを記録。その一週間後のプレミアリーグ参入をかけた大一番でもゴールを決めて、まさかの2戦連発でチームに勢いを与えている。本人も「6年間、ため込んでおいて良かったです」とおどけてみせた。

 後半17分にはFW熊谷空大(3年)の得点もアシストした。右サイドに走りこんで「(熊谷)空大の動きを見つつ、その手前にいた相手選手が届かない高さのクロス」という狙いどおりのボールをゴール前へ供給して、エースの一撃を演出。「練習でも自分から空大という形はよくあるんです。『この時のためにやってきたんだな』と思いました」と日々の取り組みが報われた形となった。

 最終学年となった今年はボランチの定位置争いが激しく、負傷した時期もあり、先発から外れることもあった。しかし、ここ数か月は調子を上げており、ボランチとしてMF尹星俊(1年)と共に中盤を支えている。この日もパスをさばいて攻撃の組み立てに関わり、後方からの飛び出しでゴール前のチャンスに厚みをもたらし、守備でも球際の攻防やセカンドボールの回収などを堅実にこなした。1得点1アシストという結果と共に、逆転勝利の立役者の一人と言えるだろう。

 この日は平日にも関わらず、京都からも多くのサポーターが駆けつけて声援を送り、試合後は激戦を制したチームと共に喜びを分かち合った。選手が一礼した後、石田監督は「ありがとうございました。あと1試合、一緒に戦ってください!」と感謝と共闘の言葉を送っている。90分間で7回も得点が決まるジェットコースターのようなゲームを制したので、試合直後は喜びを爆発させている選手もいたが、まだ何も決まっていない。昨年に味わった悔しさを晴らし、プレミアリーグへの扉を開ける最後の戦いが、日曜日に待っている。そこはチームとしても共有しており、住も「今日だけはみんなで喜んで、そこからしっかりと切り替えていきます」と兜の緒を締めていた。

 2回戦の相手の岡山は夏のクラブユース選手権でも対戦している強敵だが、臆することはない。ここまで積み重ねてきたものを全力でぶつけて、歓喜の瞬間をつかみ取りに行く。

(取材・文 雨堤俊祐)
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集

TOP