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後半ATから壮絶な点の取り合いに…PK戦を制した浦和ユースが徳島ユースに粘り勝ち

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浦和ユースが徳島ユースに粘り勝ち

[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 徳島ユース 5-5(PK2-4) 浦和ユース エディオンスタジアム広島]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024参入を懸けたプレーオフが8日開幕し、1回戦が行われた。Dブロックの徳島ヴォルティスユース(四国、徳島)と浦和レッズユース(関東2、埼玉)との一戦は、5-5で延長戦でも決着がつかず、PK戦4-2で浦和ユースが勝利。帝京長岡高(北信越1、新潟)との2回戦(10日)に進出した。

 前半立ち上がりは徳島ユースが攻勢に出る。6分コーナーキックのチャンスを得ると、FW前川修音(3年)がこぼれ球を押し込んで先制に成功した。しかし浦和ユースも徐々にペースをつかんで反撃する。27分右サイドに開いたFW山根且稔(1年)のクロスを左サイドから飛び込んできたMF深田京吾(1年)がゴールに押し込み、前半のうちに1-1の同点に持ち込んだ。

 後半6分、徳島ユースキャプテンFW廣永獅旺(3年)がゴール前へ仕掛けて、GKが前に出てきたところをループシュート。これが決まって徳島ユースが勝ち越しに成功する。その後互いに決定機はあったが、徳島ユースリードのままアディショナルタイムに突入し、このまま徳島ユースが勝利をおさめるかに思われた。

 しかし、ここからこの試合は激しく動き出した。後半45+2分、浦和ユースはFWとして投入した187cm長身DF阿部慎太朗(2年)がペナルティエリア内で倒され、PKを獲得する。DF瀬山航生(3年)がPKを決めて2-2の同点に追いつく。そして直後の後半45+3分、今度は徳島ユースがカウンター攻撃を仕掛け、DF大和陽希(2年)のクロスから前川がシュートを決め、3-2と再び浦和ユースを突き放した。これで決まりかと思われた後半45+4分、浦和ユースはゴール前の混戦でこぼれてきたボールを拾ったのがMF河原木響(3年)。「リーグ戦で全然点が取れていなかったので、点を決めて貢献しようと思いました。シュートしか考えていませんでした」と無心で放ったミドルシュートがゴールに突き刺さり、3-3となり試合は延長戦に突入した。

 延長戦も信じられない展開の連続となる。延長前半1分浦和ユースはFW照内利和(2年)が左サイドで仕掛けてクロスを上げ、FW清水正竜(3年)がヘディングシュートを決めた。3回追いついた浦和ユースがこの日初めてリードを奪った。しかし徳島ユースも延長前半8分またも大和のクロスから今度はFW長村嶺央(1年)がヘディングシュートを決めて、4-4で延長前半を終えた。

 そして延長後半7分にはスーパープレーが生まれる。浦和ユースMF阿部水帆(3年)がハーフウェーライン付近でボールを持つと、ロングシュートを放った。「ボールを受ける前からトラップしてすぐ打とうと思いました。GKの位置は見ていませんでした」と語った40mはあろうかというロングシュートはGKの頭上を越えてゴールに突き刺さった。再び5-4と浦和ユースが勝ち越し、これで勝敗は決したかに思えたが、まだ終わらなかった。徳島ユースは延長後半10+5分、ペナルティエリア内でDF柴田航次郎(3年)が倒されPKを獲得。MF尾上瑠聖がPKを決めて5-5で延長後半終了。大激闘の決着はPK戦に持ち込まれた。

 この激闘に決着をつけたのは浦和ユースGK吉澤匠真(2年)だった。徳島ユース1人目の長村、2人目の柴田が共に右に蹴ったPKをしっかりと止めた。浦和ユースは4人全員が成功し、4-2で浦和ユースがPK戦に勝利し、2回戦に駒を進めた。

 浦和ユース萩村滋則監督は壮絶な点の取り合いを制し、「見ている方々は面白いと思うかもしれませんが、こちらはハラハラドキドキの連続でした」と激しく揺れ動く展開に落ち着かなかったようだ。それでも3回追いつきその後2度はリードを奪い、最終的にはPK戦を制した選手たちに対しては「選手が勝ちたいという思いでハードワークしれくれました。気持ちだけじゃないかもしれませんが、それが勝利につながりました。関東の代表として簡単に負けて帰るわけにはいかないという思いもありました」と、選手たちが気持ちを前面に出して粘り強く戦ってくれたことを褒め称えた。

 チームのコンディションは厳しい。12月3日にプリンスリーグ関東の最終節を終えて、広島に移動しての試合。「コンディションが重そうな選手がいました。日曜の試合から中3日で移動もあって、難しかったですね」と萩村監督は語る。さらにこの試合で延長・PKまでもつれたことで、コンディション調整はさらに厳しさを増した。「相手(帝京長岡)は(客席でこの試合を)見ていたので、どんなサッカーをしてくるか分かるでしょうし、延長はマイナスでしかありません。今から回復はそんなにできないと思いますので、気持ち、ここまで来られたことへの感謝でプレミア参入をつかみとりたいですね」と劣勢の状況を認めた上で、何とかプレミアリーグ参入を勝ち取りたいと意欲を見せた。

 厳しい試合だったが、後半アディショナルタイムでチームを救う同点弾を放った河原木は「ワクワク楽しみながらみんなで乗り越えられたので、次につながります。次勝てばプレミア参入で、後輩たちにプレミアでやってもらうためにも頑張りたいですね」と、むしろ点の取り合いを楽しんでいた様子で、その経験をプラスに変えようとしていた。阿部水は「焦らず自分たちのサッカーで勝ちたい」と意気込む。大激闘での勝利をプラスに変え、2回戦帝京長岡戦に全てを懸けて臨む。

(取材・文 小林健志)

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小林健志
Text by 小林健志

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