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PK戦での敗退も点の取り合いを「楽しんだ」徳島ユース。選手たちのあふれ出る徳島愛

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点の取り合いを見せた徳島ユース

[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 徳島ユース 5-5(PK2-4) 浦和ユース エディオンスタジアム広島]

 3度リードを奪いながら追いつかれ、延長戦では2度逆転され、それでも2度追いつき、PK戦で力尽きた徳島ヴォルティスユース。それでも選手たちの表情は明るく、浦和レッズユースのサポーターや保護者に笑顔で「頑張ってください!」と語りかける選手もいた。全てを出し切った清々しさがそこにはあった。徳島ユース玉城航監督は「選手が力を出し切って、こんな試合展開のゲームができました。悔しいですけど、選手も僕も楽しかったです」とシーソーゲームの展開をチーム全員で楽しんでいたという。

 サッカースタイルとしてはトップチームでスペイン国籍の監督が続いたこともあり、ポゼッションを大事にしつつ、立ち位置を考えた戦術的にも高度なサッカーに挑戦している。「プロから逆算して個を育てるのがクラブのスタイルです。アグレッシブ、コレクティブに戦い、その代の特長を生かしながらやっています。代々のスペイン人監督や吉田達磨監督も、いろんなことを与えてくれています」とトップチームと連動した育成ができたことで、この舞台に立つことができた。

 そして特筆すべきは先発メンバーでは埼玉県のGRANDE FC出身のFW前川修音(3年)を除き、残る10人がジュニアユース出身であることだ。ジュニアユース出身キャプテンFW廣永獅旺(3年)は「このクラブで戦えたのは宝物です。大学に行って成長して徳島に戻って活躍したいです」と語る。同じくジュニアユース出身GK黒田開生(3年)も「ジュニアユースの時から一人の人間としても、サッカー選手としても育ててもらいました」と感謝を口にし、「高卒でプロになることは成し遂げられませんでしたが、大学へ行ってから徳島に帰りたい」と廣永同様大学経由で徳島のトップに加入したいと語った。唯一他県から徳島ユースに入った前川は「人間性や土地柄が違って最初はなじめないこともありましたが、人に支えられた3年間でした」と徳島の人の温かさに触れ、感謝の言葉を口にした。選手たちからは徳島への愛があふれていたのもまた印象的だった。

 玉城監督は「次のステップに進まなければなりません。ここまで来られたじゃなくて、プレミアリーグに昇格してもっと良い環境を得る段階に来ています」と今後に向けて語る。アカデミーからトップまで一貫した指導体制を敷き、徳島への愛を大事にするチームが、来季以降さらに上の段階へと進んでいくことを期待したい。

(取材・文 小林健志)

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小林健志
Text by 小林健志

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