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宿敵と同じ日常へ。鹿児島城西が神村学園に続き、鹿児島県から2校目のプレミアリーグ昇格

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鹿児島城西高は宿敵・神村学園高に続くプレミアリーグ昇格

[12.10 高円宮杯プレミアリーグプレーオフCブロック決勝戦 鹿児島城西高 1-0 近江高 Eスタ]
 
 宿敵に続くプレミアリーグ昇格だ。昨年、神村学園高がプレミアリーグプレーオフを勝ち抜き、鹿児島県勢として初のプレミアリーグWEST昇格。今年、“U-18年代最高峰のリーグ戦”に初参戦し、10位残留を果たしている。

 鹿児島城西高の新田祐輔監督は神村学園が2-1で逆転勝ちし、残留を決めた東福岡高戦(11月26日、神村学園G)をチェック。「(鹿児島県の)小中学生に影響を与えている」とその価値の大きさを認識したという。

 鹿児島県勢は伝統校の鹿児島実高が95、04年度に選手権制覇。06年度に神村学園が選手権3位に入り、08年度にはFW大迫勇也(現神戸)を擁した鹿児島城西が選手権で準優勝している。だが、その後は神村学園が昨年度の選手権で3位となるまで全国舞台での低迷が続いた。

 鹿児島のサッカーを盛り上げたいという気持ちは、県内のどのチームも同じ。新田監督はプレーオフへ向けて「圭さん(神村学園・有村圭一郎監督)さんからも連絡をもらいました。『上がれば盛り上がるから』と」と明かす。

 現在、一つの都道府県で高体連チームが2校以上プレミアリーグに所属しているのは、市立船橋高と流通経済大柏高の千葉県だけ。かつて、前橋育英高と桐生一高の群馬県(22年)と京都橘高と東山高の京都府(14年度)も同時に2校がプレミアリーグで戦っているが、今回の勝利は“鹿児島サッカー復活”を掲げる鹿児島県のU-18年代強化にとっても大きな勝利となった。

 今年は県、九州の新人戦で連勝しているものの、鹿児島城西にとって選手権予選で6連覇中の神村学園の壁は厚い。ライバルに勝つため、日常から変えることも目指してきた。今回、所属リーグでも彼らに追いついた意味は大きい。

 CB横山輝人(3年)は「そこ(神村学園と同じ舞台に立つこと)は自分たちも意識してて、やっぱり7年ぐらいずっと負けが続いていて、後輩のためにもこういう舞台っていうのは見せてあげないといけないと思っていた」と語る。

 そして、昇格の要因について、先輩たちの奮闘を挙げた。「歴代の先輩たちがやってきてくれたことが積み重なって、たまたま自分たちが上がれたというだけ。自分たちがやれたとかじゃなく。先輩たちがやってきてくれたことがあって、自分たちがそれを大きく表現したことができての結果。先輩たちに感謝したい」。勝てない時期も努力を重ねた先輩たちあってこそのプレミアリーグ昇格だと考えている。

 新田監督は、ここからさらに鹿児島の高校サッカーを盛り上げていく考えだ。近年、神村学園が続々と年代別日本代表選手やプロサッカー選手を輩出する中、今年は鹿児島城西もMF芹生海翔(3年)が藤枝内定を決め、FW大石脩斗(1年)がU-16日本代表に選出された。

 また、芹生はU-18日本代表のトレーニングパートナーを務めている。そして、プレミアリーグ昇格。「神村が本当良い選手がいて、それに対して我々どうしようかっていうことで。こうやって今年プロも出したし、代表もちょこちょこ入れるようになっている。完全に(神村学園と)スタイルがこう分かれてきた中で、だから今から盛り上げたいですね」(新田監督)。08年度の全国2位など選手権出場7回。今年のJ1でMVPを獲得したFW大迫らをプロの世界へ送り出してきた強豪はまず、選手権復帰を次の目標としている。

 12月15日には、選手権予選準決勝で鹿児島実高と対戦。勝てば、翌日に神村学園対出水中央高の勝者と全国切符を懸けて戦う。今回、プレミアリーグプレーオフの勝利で勢いづいたことは間違いない。2週連続でタフな戦いとなるが、神村学園の連覇を今年こそ止める意気込みだ。そして、選手権で1試合でも多く強敵と戦い、その経験をプレミアリーグ初年度に繋げる。 

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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