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2024年は先輩たちからの“ギフト”を戦い抜く1年に。感謝と責任感を携えた帝京長岡DF山本圭晋が前面に打ち出すポジティブな成長欲

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積極的なコーチングを見せた帝京長岡高DF山本圭晋(2年=セレッソ大阪U-15出身)

[1.21 練習試合 U-17日本高校選抜候補 6-3 日本体育大]

 コツコツと積み重ねてきたものには、ちゃんと自信を持っている。ようやくそれを試す場を与えられ始めたからこそ、もっと知りたい。自分の今の実力を。自分がどこまで羽ばたいていけるのかを。

「こういうところに来る人たちは全国でもレベルの高い選手ですし、そういう人たちがいっぱい集まってくるところでプレーすることで、自分がやってきたことが今どのレベルにあるのかなという、自分の現在地を知るという意味では本当に良い経験をさせてもらっていると思うので、高いモチベーションでやっています」。

 今シーズンは初のプレミアリーグ参戦が待っている帝京長岡高(新潟)の覚醒しつつある才能。DF山本圭晋(2年=セレッソ大阪U-15出身)が携えているポジティブな姿勢は、全国の実力者たちが集うグループの中でも際立っている。


 よく通る声がピッチ上に響き渡る。U-17日本高校選抜の選考合宿2日目。日本体育大とのトレーニングマッチ。40分×3本の1本目に出場した山本は、センターバックの位置から積極的にチームメイトへ指示を出していく。

「自チームでも『声を掛けて、人を動かす』という部分は自分の課題やと思っているので、相手に合わせて自分たちの味方を動かしていくのは、もっと必要な部分ですね」とは言いながら、そのコーチングはグループに良好な空気感をもたらしていく。

 持ち場は左のセンターバック。相方のDF田中玲音(東京実高2年)とビルドアップに関わりつつ、機を見てドリブルで持ち上がるスタイルは帝京長岡で身に付けてきたもの。「自分は守備というよりは攻撃に特徴があるタイプやと思っているので、そこで持ち運んで基点になったりとか、ロングボールで何回か相手を押し込めるシーンがあったかなと思います」と話したように、守備だけに専念するつもりは毛頭ない。

 イメージしているのはマンチェスター・シティのジョン・ストーンズだ。「シティは戦術的にもボールを繋ぐチームですけど、ストーンズは対人の守備が凄いのに、センターバックやけどボランチの位置でボールを引き出してやっていて、ああいうところはもっと自分が磨きを掛けていかないといけない部分ですし、センターバックでももっと攻撃に関わっていきたいなと思っています」。

 長短のパスも、両足を駆使することに躊躇はなし。チームで3バックの左ストッパーや4バックの左センターバックを任されてきたことで、「もともとそんなに左右差があるわけでもなかったんですけど、左寄りのポジションを本格的にやらせてもらってから、いっぱい使うようになりました」という左足をスムーズに使えることが、プレーの幅を広げているのは間違いない。


 ピッチ外でもその積極性は見て取れた。自分が出場した後の試合も、サイドラインのすぐ外でチームメイトと話しながら観戦。即席チームゆえに残りの2日間の活動に向けて、選手たちの特徴を少しでも把握しようという意識の表れのようにも映る。なぜなら、今回の選考合宿への参加には、周囲への大きな感謝の気持ちを抱いているからだ。

「合宿に参加できると聞いた時にはメッチャビックリして、嬉しい気持ちもあったんですけど、『ああ、オレ入るんや』みたいな感じでしたね(笑)。自分が選ばれて、帝京長岡のみんなが『凄いね!頑張ってね!』と言ってくれましたし、普段から自分の家族や学校の友だち、もちろんチームメイトたちが応援して、支えてくれているので、そういうサポートのおかげで今の自分があるのかなと思っています」。


 昨シーズンも決して陽の当たる場所を歩んできたわけではない。選手権予選はメンバー外。プレミアリーグプレーオフでスタメンに抜擢されると、好パフォーマンスを発揮してチームの初昇格に貢献したことで、そのまま選手権でも定位置を勝ち獲った経緯もあるため、試合に出られることの喜びは誰よりも強く感じてきた。

「やっぱり自分のいる位置がどこでも諦めずにやってきたことが、今に繋がっているのかなって。自分は選手権予選も試合に出られなかったので、スタンドで応援するしかなかったですけど、そのあとから試合に出させてもらったことによって、試合に出られない人たちの想いを背負って戦う責任感があるなって。そういう面で『自分がやらないといけない』という気持ちが、去年の1年間で大きく成長したのかなと思います」。

 前述したように、今シーズンの帝京長岡はプレミアリーグに初参戦。チームにとっても大きな歴史の転換点に成り得る1年だ。山本も少し先に迫った世代最高峰のステージに対する期待を隠さない。

「プレミアは3年生が残してくれた“ギフト”というか、贈り物みたいに思っていて、選手権では2年生が全然3年生のことを助けられなかったので、簡単なことではないと思いますけど、3年生のためにもプレミアはもちろん優勝を目指したいですし、チームとして一体感を持って、初戦に向けて良い準備をしていきたいと思っています」。

 そのためにも吸収できるものは、この機会でもすべて吸収する。帝京長岡に忽然と現れた新シーズンのリーダー候補。活動が始まったばかりのU-17日本高校選抜の中でも、さらなる成長を貪欲に求める山本の存在感は、着実に高まっているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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