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[デンチャレ]日本高校選抜は未勝利で終戦も…課題を改善し、多数の“OB”擁したU-20全日本選抜と好勝負

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後半、日本高校選抜FW高岡伶颯(日章学園高2年、右)がシュートへ持ち込むが、U-20全日本選抜CB多久島良紀(明治大1年=青森山田高)がブロック

[3.2 デンチャレ U-20全日本選抜 1-0 日本高校選抜]

 日本高校選抜は“OB”たち相手に健闘も、敗れて8チーム中6位に――。2日、第38回デンソーカップチャレンジサッカー 福島大会の順位決定戦が行われ、 5・6位決定戦はU-20全日本選抜が1―0で日本高校選抜に勝った。

 日本高校選抜はGKデューフエマニエル凛太朗(流通経済大1年=流通経済大柏高) 、CB多久島良紀(明治大1年=青森山田高) 、CB田口空我(流通経済大2年=流通経済大柏高) 、MF廣井蘭人(筑波大1年=帝京長岡高) 、FW小湊絆(法政大1年=青森山田高) 、FW塩貝健人(慶應義塾大1年=國學院大學久我山高/横浜FM内定) と“高校選抜OB”6人が先発したU-20全日本選抜に挑戦。今大会初勝利を目指した。

 その日本高校選抜は2日前の3バックから4バックへ戻し、4-4-2システムを採用。GK鈴木将永(青森山田高3年→東海大)、主将の右SB野田隼太郎(藤枝東高3年→早稲田大)、CB小泉佳絃(青森山田高3年→明治大)、CB山本虎(青森山田高3年→東洋大)、左SB{市川和弥}}(尚志高3年→東洋大)、MF神田拓人(尚志高3年→早稲田大)とMF太田隼剛(市立船橋高3年→桐蔭横浜大)のダブルボランチ、右SH杉本英誉(青森山田高3年→桐蔭横浜大)、左SH長準喜(昌平高3年→順天堂大)、FW宮下拓弥(桐光学園高3年→桐蔭横浜大)、FW小田晄平(昌平高3年→東海大)の11人が先発した。

 4度目の挑戦で初めて5位決定戦へ進んだ高校選抜だが、ここまで1分2敗。前回大会の1勝に続くことができていない。今大会最終戦で初勝利と、過去最高成績の両方を掴むことを目指して選手たちはピッチへ。米澤一成監督(京都橘高)は「この3試合で出た課題っていうのを意識させてやったんで、それはもう十分やったなっていう風には思っています」と振り返る。開始1分、杉本の右クロスから市川が左足シュートを放ち、3分にも太田が左足ミドルを狙う。

 山本が「まず繋ごうって、ミーティングでずっと言っていたんで、そこは前半、上手くいったのかなと思います」と振り返る。山本、またDFライン近くまで下りる太田が軸になって自陣PAからビルドアップ。課題だった攻撃時の距離感や活動量が向上し、抜群のキープ力を見せる長のドリブルなどを交えて攻め切って見せた。

 だが、U-20全日本選抜の方が力は上。また、小湊が「やっぱりオレらが去年(関東選抜Bに)勝ったように、(大学生にとっても)難しいってのはもう去年体感させてもらったので抜くことは無かったです」と振り返ったように、少しも気を抜くこと無く、全力で高校生に向かってきていた。

 そのU-20全日本選抜は偶発的なチャンスに頼るのではなく、意図したボールの動かしと崩しを徹底。MF三木仁太(関西大2年=G大阪ユース)やMF伊藤翼(京都産業大1年=C大阪U-18)をはじめ、多くの選手がボールに係わり、個々の強みを発揮しようとしていた。そして主導権を握ると、右SB飯島大地(桐蔭横浜大1年=桐蔭学園高)の攻め上がりから決定的なチャンス。また、廣井のスルーパスによって飯島やFW森夲空斗(青山学院大2年=広島ユース)、小湊がDF背後を狙う。

 だが、高校選抜はチームで唯一大会優秀選手に選出された小泉が青森山田の先輩FW小湊の抜け出しを阻止していたほか、左SHとして先発した塩貝の圧倒的なスピード、強さに対しては人数をかけて守備。また、山本が高さを発揮し、大会を通じて高い回収力を発揮していた神田がこの日もボールを奪い取って攻撃に結びつけていく。

 守勢となる時間も長かったが、カウンター攻撃を含めて対抗。32分には、杉本のスルーパスから宮下が右足シュートを狙う。だが、米澤監督が「(高校選抜OBの)多久島に止められた。やっぱりいいですね」と評したU-20全日本選抜CB多久島にシュートブロックされる。34分には神田の縦パスから宮下が左足シュート。また45分には、山本、市川と素早く繋ぎ、太田が左足シュートを放つ。さらに、45+2分には神田、小田、野田と繫いで長のシュートのこぼれを野田が決定的な右足シュートへ持ち込んだ。

 だが、191cmの大型GKデューフや守備範囲の広いDFリーダーCB田口を中心としたU-20全日本選抜の守りは堅い。加えて、左SB島田春人(法政大1年=横浜FMユース)の守備対応の巧さに日本高校選抜は最後まで手を焼いていた。

 高校選抜は後半開始から杉本、小田、宮下に代えてMF松田悠世(桐光学園高3年→法政大)とFW高岡伶颯(日章学園高2年)、そしてDF登録の塩川桜道(流通経済大柏高3年→流通経済大)をFWとして送り出す。後半4分、U-20全日本選抜はゴール前のこぼれ球を小湊が狙うが、高校選抜GK鈴木が阻止。8分にも小湊のヘッドにゴールを脅かされたが、直後に見事な崩しで大学生を驚かす。

 9分、日本高校選抜はハーフウェーライン付近での連続守備から高岡がインターセプト。右へ展開すると、松田がドリブルで中央方向へボールを運び、ペナルティーアークの高岡へパスを通す。高岡の落としから太田がスルーパス。これに後方から飛び込んだ松田が左足でゴールネットを揺らす。日本高校選抜は歓喜に沸いたが、オフサイドでノーゴールの判定となった。

 この後も、前線での競り合いで奮闘する塩川や高岡、ダイナミックな攻め上がりを見せた小泉らがゴールを目指す。だが、17分、自陣コーナー付近で相手左SB島田にボールを奪い返されると、中央の小湊にヘディングシュートを打たれる。これがGKの頭上を越え、先制点を奪われた。

 高校選抜も長が塩川とのコンビでPAへ割って入るなど、果敢な仕掛けを連発。28分には市川とMF名和田我空(神村学園高2年)を入れ替え、太田を左SBへ移した。だが、相手にDF背後を狙われ、MF藤森颯太(明治大2年=青森山田高)のスルーパスからMF松村晃助(法政大1年=横浜FMユース)にシュートへ持ち込まれたほか、塩貝にシュートを打ち込まれるシーンの連続。それでも何とか凌ぐと、巧みにボールを収める名和田を中心にゴールを目指す。

 だが、山本が「試合の進め方っていうところで、もうちょっとみんなで共有できれば良かったのかなと」と振り返ったように、攻撃が噛み合わない。判断が遅れたところを寄せられてロスト。セカンドボールも拾われて攻められる時間が増えた。36分、長を今大会唯一得点しているMF芝田玲(青森山田高3年→明治大)へ交代。相手FW小湊のループシュートを野田がスーパークリアするなど、諦めずに戦ったが、0-1で敗れた。

 昨年、高校選抜のデュッセルドルフ国際ユース大会優勝に貢献しているU-20全日本選抜の小湊は「めちゃめちゃやりにくかったっすけど、何とか勝てて良かったです」と振り返り、“後輩”たちに「自分たちもそうでしたけど、だんだんと連係の部分だったりっていうのも合ってきて、密度の濃いチームになると思うんで、(欧州遠征の)ドイツではさらにクオリティの高いものができるなっていうような感覚はありましたし、必ずそうなるとは思う。優勝目指して頑張って欲しいです」とエールを送った。

 日本高校選抜は現在の23名から最終18名に絞り、今月末から欧州遠征を行う。米澤監督は「ここから3週間空きますけど、彼らのいいところが出るようにはなってきてるので、この感覚を忘れないで過ごしてほしいなと」と期待。選手たちは昨年に続く、デュッセルドルフ国際ユース大会優勝を目標に掲げた。名和田は「去年優勝しているので。2連覇っていうのは(高校選抜にとって)初めてなので、2連覇したいなって思います」。対戦予定のエバートンやボルシアMGなど欧州の才能を相手に自分たちの特長を発揮し、初の連覇を果たす。

(取材・文 吉田太郎)



●第38回デンソーカップチャレンジサッカー福島大会特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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