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攻守のクオリティに加えてロングスローも備える次世代型サイドバック。京都U-18DF三宮稜大が引き継いだ“背番号3”の意味

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京都サンガF.C.U-18の次世代型サイドバック、DF三宮稜大(2年=京都サンガF.C.U-15出身)

[3.19 イギョラ杯予選リーグ 富山U-18 0-2 京都U-18 帝京北千住G]

 2度に渡って突き付けられた悔しさを、3度も味わうつもりなんて毛頭ない。チームを引っ張って戦わなくてはいけないという自覚だって、ちゃんと持ち合わせている。戻るべき場所へと戻るためなら、何だってやってやる。

「いろいろ経験してきた自分には、今年のチームの中心として戦う役割というのがあると思うので、そういうことを仲間に伝えつつも、自分のことだけではなくて、チームのことも考えられる選手にならないといけないと思います」。

 プレミアリーグへの復帰を掲げる京都サンガF.C.U-18(京都)の次世代型サイドバック。DF三宮稜大(2年=京都サンガF.C.U-15出身)がそのポテンシャルを100パーセントで解き放つことは、チームの目標達成に向けて絶対に欠かせない。


 『イギョラカップ2024』の2日目。予選リーグの最終戦となるカターレ富山U-18(富山)戦に臨んでいた京都U-18。その右サイドバックを任されている三宮が披露していたパフォーマンスが、一際目を引いた。

「賢くやるというか、相手の嫌なことを選択してプレーするのは自分の特徴かなと思います」。攻撃時は同サイドのウイングとインサイドハーフの位置取りを見極めながら、内側と外側を自在に駆け上がり、守備時は身体の強さとスピードをフル活用して、マーカーの自由を封じていく。

 とりわけドリブルの効果的な使い方は、新チームになって意識しているという。「去年は前がタレント揃いやったので、そこを使って自分が走ることが基本やったんですけど、今年は前まで周りを使っていたところでも、自分でドリブルで行くことは増えてきていると思います」。タイミングを図りながら、ポイントを押さえてオーバーラップを繰り返す。

 加えて大きな特徴は、その“強肩”から繰り出されるロングスローだ。「今日は思ったより結構飛びましたね(笑)。去年の夏明けぐらいから投げ出したんですけど、もともと自信はあったので、筋トレもしながら、試合前にメディスンボールを投げたりとかして、肩は一応作っています」。飛距離も弾道も十分な代物が、チームの攻撃にさらなる彩りを加えていく。総合的に考えても、サイドバックとしての能力は極めて高いと言って差し支えないだろう。


 2年生だった昨シーズンはレギュラーとしてプリンスリーグ関西1部優勝に貢献したものの、迎えたプレミアリーグプレーオフは2回戦でファジアーノ岡山U-18(岡山)に0-1で惜敗。一昨シーズン同様に、目標を達成するための“あと1勝”が遠かった。

「プレーオフは悔しかったですね。前半に相手の少ないチャンスで失点してしまって、ずっと自分たちが攻めているけど、なかなか点が獲れない試合でした。だからこそ、監督も強調して言っているんですけど、今年は1点の重みにこだわっていかないといけないんです」。

「1年生の時はプレーオフをベンチから見ていて、その時もずっと攻めているけど点が獲れずに、0-0からのPK戦で負けた形だったので、悔しい想いは2回で十分ですし、3回も同じことをしてはいけないなと思っています」。その意識は積極的に出している“声”にも表れているようだ。

「(育成統括)部長の李(哲洙)さんからも『声を絶やしてはいけない』と言われていて、去年から試合を経験している自分たちが雰囲気を作っていくことは大事だと思っているので、相手に飲み込まれないようにするためにも、チームを盛り上げるというか、そういう声を出すところは大事にしています」。

 富山U-18戦でも、前半20分に今季の10番を背負うMF立川遼翔(2年)がゴラッソを叩き込むと、三宮は我先にとスコアラーに駆け寄り、歓喜の雄叫びを上げる。「学年差関係なく、みんなコミュニケーションが取れているのは今年のチームの特徴ですし、誰かが点を獲ったらみんな嬉しいので、ゴールが決まった時にはみんなで喜んでいます」。その中でも背番号3の喜びぶりは群を抜いていた。

 そもそも京都U-18は全寮制を敷いており、日常からコミュニケーションを取る機会も少なくない。「全員同じ屋根の下で生活しているので、何かするのも全部一緒ですし、仲の良さが深まることでチーム力も上がるので、メチャメチャ良い環境だと思います」という三宮は、続けてチーム内のキャラクターも教えてくれる。

「立川遼翔とか坂川賢祐、柴田了祐とかキャプテンの石本泰雅もそうですけど、そういう明るいキャラといつもワイワイしているというか、私生活ではずっとふざけてワチャワチャしていますし(笑)、やっぱり関西人なのでどちらかと言うとお調子者だと思います」。“公私”ともに連携はバッチリといったところだろうか。



 アカデミーラストイヤーとなる今シーズンは、3番を背負うことになった。「去年はサイドバックでキャプテンの飯田陸斗くんが3番だったので、そこをそのまま継承させてくれたのかなって。『3番で三宮だね』とはよく言われますけど、スタッフの皆さんが番号を決めてはるので、自分の名前からは来ていないと思います(笑)。もともと3番は付けたかったですね。飯田くんはサイドバックとして一番自分がお手本にしてきた選手だったので」。

 左右の違いはあっても、京都U-18のサイドバックを務め上げ、トップチームへと昇格を果たした“先輩”の背中から学んだものを、その背番号とともに引き継ぎながら、チームメイトたちへと還元する決意は固い。

 2度に渡って突き付けられた悔しさを、3度も味わうつもりなんて毛頭ない。2024年は誰よりも自分たちが輝いてみせる。京都U-18の才気あふれる右サイドバック。若き紫の勇者たちの目の前に立ちはだかる壁を、敢然と乗り越えるための大いなるチャレンジに挑む三宮稜大の躍動から、目が離せない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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