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周囲に笑顔の花を咲かせるポテンシャル十分のサッカー小僧。G大阪ユースDF松井イライジャ博登が掲げる目標は「今年は爆発しつつ、楽しみたい」

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ガンバ大阪ユースのエネルギッシュな元気印、DF松井イライジャ博登(2年=FC.フェルボール愛知出身)

[3.15 サニックス杯 G大阪ユース 4-0 青森山田高 グローバルアリーナ]

 その男の周りには、いつだって笑顔の花が咲いている。エネルギーに満ちあふれたプレーも、ゴールが入ったら誰よりも喜ぶガッツポーズも、ごくごく自然に湧き上がってくるものだ。だって、サッカーがメチャメチャ好きで、サッカーがメチャメチャ楽しいから。

「今年はもう爆発する年にしたいです。アカデミー最後の年になりますし、この2年間で学んできたことがあるので、そういうものを生かして、見ている人たちに面白いなと思ってもらいたいですし、自分たちもサッカーをやっていて『楽しいな』と思えたら、僕は一番いいなと思っています」。

 2024年のガンバ大阪ユース(大阪)を明るく照らす、“ブレイズ”も印象的なポテンシャル十分の元気印。DF松井イライジャ博登(2年=FC.フェルボール愛知出身)が誓うさらなる爆発を、みんなが楽しみに待っている。


「得点を獲った後もしっかりと集中を切らさずに、終盤にも立て続けに得点を獲れたことは大きいかなと思います」。松井は終わったばかりの70分間をそう振り返った。『サニックス杯国際ユースサッカー大会2024(福岡)』の3日目。昨シーズンの高校年代二冠を獲得した青森山田高(青森)との一戦は、前半3分にFW中積爲(1年)がゴールを叩き出し、G大阪ユースが先制点を奪う。

「自分が点を獲るのが一番嬉しいですけど、チームが点を獲ってもメッチャ嬉しいですし、チームメイトからも『点を獲ったらオマエも来いよ』と言われているので、行くしかないですよね(笑)」。真っ先に中積へと駆け寄った松井は、殊勲のスコアラーを祝福すると、構えられたカメラに向かってポーズを決めてみせる。



「アレはナル(中積爲)から『点を獲ったらなんかやるぞ』みたいに言われていて、そんなに考えないで『これ、やろうぜ』みたいになったので(笑)、ノリみたいな感じですね」。どうやら本人は何のポーズなのかイマイチわかっていなかったみたいだが、とにかく堂々とやり切るあたりに、そのキャラクターが垣間見えた。

 本来の主戦場はセンターバックだが、チーム事情もあってこの日は右サイドバックでプレー。「サイドハーフの選手がやりやすいようには考えていますね。チャンスだったら上がっていきますし、サイドハーフが中に絞るんだったら僕が外を取ったり、低い位置を取るんだったら僕が高い位置を取ったり、ポジショニングには気を遣って、工夫しながらやっています」。内に、外にと自在にポジションを取りながら、攻守にフルパワーを注ぎ込む。

 本職だからとか、そうではないからとか、そんなことは関係ない。「富安(健洋)選手みたいにセンターバックもできて、サイドバックもできるのが一番いいので、そういう選手を目指したいと思っています」。やるからにはサイドバックも100パーセントで戦い抜く。終わってみれば難敵相手に4-0で快勝。試合後には松井の表情に笑顔が弾けた。


「去年の1年は、僕にとってはサッカーをやっていく中で凄く大事な1年だったと思います」。2023年の1年間は、決して思い描いたような時間ではなかったと言っていいだろう。特に悔しい想いを味わったのは、夏のクラブユース選手権。チームが日本一に輝いた一方で、松井はベンチメンバーに入ることも叶わなかった。

「チームが優勝したことはもちろん嬉しかったですけど、やっぱり自分が出て優勝したかったですし、動画では見ていたんですけど、そこでは凄く悔しい想いをしたので、『レギュラー陣が帰ってきたらポジションを絶対に取ったろ!』という想いでやっていたんですけど、それもなかなかうまく行かなかったですね」。

 自分の課題は、自分が一番よくわかっている。「もちろん僕は守備の選手なので、しっかりした守備力だったり、ガンバはボールを繋いで崩していくサッカーなので、ビルドアップの部分だったり、そういうところが課題ですね。ビルドアップは今も凄く意識してトライしているところで、まだ全然できないですけど、去年の練習から意識してやっているところです」。

 一方で、明らかに進歩を感じている部分もあるという。「去年はなかなか試合に絡めずに、いろいろ考えながらやっていたんですけど、その中で『試合に出られない時に何ができるか』とか、『どういうふうに練習に取り組むか』とか、そういうことが大事になってくることがわかって、精神面と頭の使い方は凄く成長できた1年なのかなとは思いました」。転んでも、転びっぱなしで終わるつもりは毛頭ない。すべては成長するための糧。ポジティブに、前向きに、日々のトレーニングを積み重ねていく。



 一際目を引く髪型には、本人にもこだわりがある。「これは“ブレイズ”っていう髪型で、全部地毛なんですけど、これにした1つの理由はヘディングをする時に“吸収しちゃう”というのがあって(笑)、ヘディングはおでこでやるものですけど、クロスが入ってくるとどうしても頭に当たってしまうので、髪が長いと飛ばないんですよ。だから、今は伸ばした髪を全部編んでいます。シンプルにカッコいいですし、この髪型は好きですね」。

 参考にしている選手は、プレミアを代表するような2人のセンターバックだ。「ヨーロッパの選手を見ていても、リヴァプールのファン・ダイク選手だったりトッテナムのファン・デ・フェン選手は圧倒的に守備力があって、足も速いし、強いし、大きいので、僕もそういう選手になっていきたいとは思っています」。屈強で、速くて、しなやかで。世界レベルの才能に、自身の未来も重ねている。

 ガンバのアカデミーで過ごす最後の1年。やっぱり何より大事にしたいのは、ボールを蹴り始めたころから変わらない感情だ。「サッカーは楽しむことが一番なので、今年は爆発しつつ、楽しみたいですね。やっぱり自分の良いプレーを出せたら楽しいですから」。

 生粋のサッカー小僧が挑む、若き青黒を居るべき場所へと連れ戻すための勝負の1年。G大阪ユースのエネルギッシュなパワフルディフェンダー。真剣に試合を楽しむ松井イライジャ博登の笑顔が増えれば増えるほど、チームも臨んだ結果に近付いていくことは約束されているはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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