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責任を背負い、躍動中の新10番MF竹花龍生が決勝点。明秀日立は本気の取り組み、突出した特長構築をして“2度目”にチャレンジ

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明秀日立高の10番MF竹花龍生は存在感のある動きを見せ、決勝点

[3.14 サニックス杯予選リーグ ニューキャッスル J U-18 0-1 明秀日立高グローバルアリーナ]

 本気の取り組み、そして特長を突出したものにすること。昨夏のインターハイ王者・明秀日立高(茨城)が2度目への挑戦をスタートしている。明秀日立は13日からサニックス杯国際ユースサッカー大会2024(福岡)に参戦中。選手権8強、九州新人大会4強の佐賀東高(佐賀)との初戦(13日)を3-1で勝利すると、ニューキャッスルジェッツU-18(オーストラリア)との第2戦(14日)も1-0で制した。昨年の全国大会上位チームや今年の九州上位チーム、また海外からの招待チームが争う大会で存在感を放っている。

 この日対戦したニューキャッスル J U-18は中央の守りが堅く、個々の身体能力も高いチームだった。明秀日立は相手の高さやルーズボールを追うスピードの速さに苦戦していたが、それでも今大会で目立つ動きを見せている10番MF竹花龍生(2年)をはじめ、前半から各選手が個性を発揮しながら好勝負を演じた。

 怪我から復帰し、CBを務めているMF阿部巧実(2年)とCB菅野一葵(2年)が的確なカバーリング。また、利き足と逆の左足キックも成長した阿部と菅野は質の高いロングフィードとビルドアップで攻撃をコントロールしていた。チームは中盤からグラウンダーで縦に入れるボール、連動した崩しにも積極的にチャレンジ。また、竹花が出力の高い動きで前進して右足シュートを打ち込み、1年生レフティーの右SH貝原利空が強気のドリブルでゴール前へ潜り込んでいた。

 押し返される時間帯もあったが、MF久保遼真と右SB廣瀬魁の両1年生を含めて各選手が球際で粘り強く対応。そして、インターハイ決勝で2得点のFW柴田健成(2年)がコンビネーションからシュートへ持ち込むなど優勢に試合を進める。

 そして、後半10分、阿部の好フィードから竹花が1タッチでDFのマークを剥がして右足でゴール。竹花は「良い抜け出しができて、 ファーストタッチで結構相手が見えていて。2タッチ目で打てる位置に置こうっていうのでファーストタッチ上手く決まって、ディフレクションはありましたけど、良いゴールだったかなと思います」と微笑んだ。

 竹花は昨年のインターハイ準々決勝で決勝点。選手権でも切り札としての役割を担っていた。萬場努監督はその竹花と1対1で話す機会を作り、「新チームになって、ちょっとバランス取ろうとするっていうようなシーンがあったので、『決めるとか、外すとかっていう責任を背負って欲しい』」と求めたという。すると、仙台ユースとの練習試合では個の力でこじ開けて1得点。サニックスカップでは2試合連続で得点を決めている。

 10番、ゲーム主将も務める竹花はセカンドボールの回収、突破からのシュート、そして見事なゴールとチームを引っ張るプレー。「(今日の試合は)結構シビアでしたけど、審判も含めてゲーム作ってくれて、自分も臆せずトライしようっていうのが今日のテーマだったので、そういう中では強度とか上回れたのは結構自信にも繋がりました」と頷いていた。本人は運動量やアジリティの課題を口にするが、飛躍の可能性を示している。

 明秀日立は先制後もサイドからの崩しや相手の背後を突く攻撃で再三のチャンスを作るも、追加点を奪うことができなかった。ただし、昨年からゴールを守るGK重松陽(2年)の安定したキャッチングなど集中力を切らさずに1-0で勝利。選手権直後の茨城県新人戦では主軸欠場の影響もあって準々決勝で敗退したが、「ちゃんとメンバーが揃ってきて、形もちゃんと固められればなっていうところの位置付けとして来ている」(萬場監督)というサニックスカップを内容も含めて良い形で進めている。

 昨年はチームの立ち位置を変えるような一年に。だが、萬場監督は運も味方しての日本一だったと考えている。だからこそ、「(2回目の日本一を取るためには)本当に強いところがウチの対策をした中で勝ち切らなきゃいけないってなると、もっと本気度を。パスの質とか、色々な攻撃のクオリティも上げられないといけない」と選手たちに伝えたばかりだという。サニックスカップは周囲からの見られ方も変わる中で強さを発揮しているが、もっと身に付けなければならない力がある。

 1月の選手権は準優勝校・近江高(滋賀)との激闘の末、PK戦で敗れて3回戦敗退。萬場監督は「自分たちのスタイルというか、強さとか、そこがもうちょっと突出ししなきゃいけないなっていうのを改めて感じました」と説明する。明秀日立はフィジカルベースの高さを活かした攻守を評価される中、昨年は技術面でも勝負できるチームとなって夏の日本一に。だが、近江戦では拮抗した展開の中、力で相手の守りを“破壊”して2点目を奪うことができなかった。

 だからこそ、指揮官は「1点多く入れて勝ち切るところまで行くなら、やっぱりもうちょっとストロングのところを強くゲームに出さなきゃなって思います」。今年もパワーのある世代。判断を含めたスピードを高め、より強さを出すことを求めていく。

 竹花はサニックスカップでの活躍が、チーム内で厳しく要求し合い、トレーニング強度も高まってきている成果だと分析。満足すること無く、責任を背負える選手や無理の利く選手がいた昨年以上のチームになることを目指す。「一番は日本一を目指してチームでまたやりたいですし、去年プリンス(リーグ関東)の参入戦で成立(学園)に負けて自分も苦い思い出だったので、そこはリーグ戦も優勝して、プリンス行けて、 日本一も取れるような集団にしていければ」と力を込めた。今回のサニックスカップも本気で優勝に挑戦。帯同している選手全員が高い意識を持ってA戦、B戦に取り組み、基準を高めて地元・茨城へ帰る。

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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