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[MOM725]長崎総合科学大附MF前川聖也(3年)_日本代表MF遠藤を彷彿とさせる芸術CK弾

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 香川西1-4長崎総合科学大附 市原]

 12年7月28日、J1第19節の対神戸戦でG大阪のMF遠藤保仁が見せたプレーが脳裏に蘇った。左CKから右足蹴ったボールは、誰も触れることなく神戸ゴールに吸い込まれた。PA内でG大阪にファウルがあったため遠藤はゴールとはならなかったが、この日、長崎総合科学大附(長崎)の背番号10・MF前川聖也(3年)が左CKから蹴ったボールは、キレイな弧を描いて直接香川西のゴールに吸い込まれ、チーム3点目となった。日本代表不動の司令塔も顔負けの圧巻の“バナナシュート”だった。

 ポジションは、遠藤と同じくボランチ。運動量豊富に走り回り、攻守に顔を出して長崎総合科学大附の完勝劇の立役者となった。「(プロの選手を)意識してプレーしているというのはないです。CKから直接ゴールを狙うのも、練習のときに遊びでやった程度。それも数えるほどしか(成功してい)ないです」。主将であり司令塔の前川は、謙虚な姿勢を崩さなかった。

 観客を魅了するトリッキーなプレーが随所で見られた長崎総合科学大附。意識的に魅せるプレーをしているのか前川にたずねると「強豪校とやっている中で、上手いチームがやっていたプレーを自然と真似するようになりました」と語った。「テクニックでは相手のほうが上だと思っていますが、速さ、パワー、気持ちの面では勝っていると思います」。謙虚な姿勢の中にも、全国で戦う自信を覗かせた。

 ダークホースとなりそうな勢いを感じるが、これまでに全国大会(高校総体・国体・高校選手権・全日本ユース選手権)計17度の優勝をはたし、「高校サッカー」を知り尽くす小嶺忠敏総監督は「ラッキーでここまで来れた。まだまだトップにはなれない」と厳しい評価を下すも、主将の口からは「まずは1戦1戦集中し、目の前の試合に勝つことが目標。そして最終的には、全国制覇をしたい」という最終目標が語られた。

 4-1の完勝にも「浮かれることはない」と兜の緒を締めた前川。常にクールに戦うことを忘れない「チームの心臓」が、08年の山梨学院大付(山梨)以来3大会ぶりとなる「初出場初優勝」という快挙に向けてアツい闘志を燃やしていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 奥山典幸)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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