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4戦6発の名古屋FW永井 「打てば入る自信がある」

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[6.30 J1第16節 横浜FM1-1名古屋 日産ス]

 これ以上のアピールはない。7月2日のロンドン五輪メンバー発表前ラストマッチ。名古屋グランパスのFW永井謙佑が4戦連発6点目となる同点ゴールを決め、4試合連続無失点のクラブ記録を更新中だった横浜FMの堅守をこじ開けた。

 迷いなく右足を振り抜いた。0-1で迎えた後半38分、MF藤本淳吾のフィードをFWケネディが胸で落とすと、PA手前から永井が右足を一閃。「あそこしかなかった。コースしか見えなくて、とりあえず抑えることだけを考えた」。豪快なダイレクトボレーをゴール左隅に突き刺した。

 自然と体が動いた。藤本がゴール前に放り込んだとき、永井は数歩下がり、すでにシュート体勢に入っていた。「(藤本のボールが)胸トラップぐらいの高さだった。(ケネディが)落としてくれるかなと思って、打てる体勢に体の向きを変えた」。ゴールまでの流れを瞬時に描き、そのイメージどおりに体を動かす。しかも、ほとんど無意識のうちに。「自然体で、体の向きとかが打ちやすい体勢になっている」という。

 W杯アジア最終予選によるリーグ中断明けの4試合でいずれもゴールを決め、計6得点。中断前の12試合でわずか2得点だったストライカーが覚醒している。ルーキーイヤーだった昨季も27試合の出場で3得点だったことを考えれば、今季通算8ゴールで得点ランキング2位タイという数字は、大きな成長の証しだ。

 スーパールーキーとして名古屋に入団した昨季は永井自身、壁に直面した。ポジションが純粋なFWからサイドへと変わったこともあるが、「高校、大学では点を取っていたし、自信もあったけど、去年の夏までは全然入らなくて、自信もなくなっていた」と振り返る。

 ストイコビッチ監督は「大学でプレーするのと、Jリーグでプレーするのは違う。大学ではメッシだったかもしれないが、それがJリーグで通用するとは思わない。大学を卒業して、まず戦術を学ぶことを強いられた。彼にとってJ1はチャレンジだった」と指摘する。「特に戦術面で成長している。我々にはいろいろなシステムがあるが、それを理解し、自分の特長を生かせている。相手DFにとって脅威的な存在だ。毎試合ゴールを決めて、自信も付いてきている」と、その成長に目を細めた。

 中断期間中の合宿が大きかった、と永井は言う。「キャンプで攻撃の練習をして、その中で徐々に自分の形が見つかってきた。シュートの形、周りとの連係が高まって、ストライカーのポジションじゃなくても、点が取れるようになった」。結果が自信を生み、自信がプレーに余裕を生み、次のゴールという結果につながる。そんな好循環の中にある。

「打てば入るかなという自信があった。今はそういうイメージがある。得点も取れているし、打てば入るかなという感じになっている。高校とか大学のときから、入り出したら入る。入らなくなると、とことん入らない」。そう言って笑顔を見せた永井は「五輪に向けてもアピールになったか?」と聞かれ、「これだけ取ってアピールにならなかったら、どうしようもない」と苦笑いした。

「選ばれたあとが肝心。しっかりとまた先発で出れるようにポジションを取り返したいし、そのためにやっている。まずは選ばれるように(7月2日を)待ちます。慣れないポジションで去年は苦労したけど、今はこういうプレーもできるんだぞというのを見せられていると思う」

 7月2日のメンバー発表で名前を呼ばれるのは前提条件。永井の頭にあるのは、五輪代表でも先発を奪回し、ロンドン五輪のピッチで大暴れすることだ。

(取材・文 西山紘平)

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