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大宮・ラファエルが退団を明言「セレソンを目指すために…」

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[6.30 J1第16節 大宮1-0清水 NACK]

 置き土産の勝利となった。大宮アルディージャ清水エスパルスに1-0で競り勝ち、リーグ戦で6試合ぶりとなる勝利を挙げた。決勝点をアシストしたのが、FWラファエルだった。この試合、後半12分からピッチに立った10番は、前線でボールを収めてパスを散らし、劣勢を強いられたチームの流れを引き寄せた。後半ロスタイムの決勝点の場面も、MF清水慎太郎からのパスを受けて前を向き、スルーパスをMF渡邉大剛に通したことで生まれている。

 試合後、ラファエルはゴール裏に残るファンに向かって「このタイミングでチームを離れて、迷惑をかけてすみません」と挨拶し、ブラジル国内のクラブへ移籍することを明かした。この試合が最後になると分かっていたストライカーは、湧き上がる感情を抑えることが必死だったという。

「気持ちの高ぶりを抑えることに懸命でした。試合の流れより、自分がワンプレー、ワンプレーに集中しようという意識が強かったです。ベンチからのスタートでしたが、ピッチに入ったら持っているものを、すべて出し切ろうと思っていました。ゴールを挙げることはできませんでしたが、アシストで貢献できたと思います。結果につなげることをできて良かったです」

 最後の試合で勝利をもたらしたブラジル人FWは「残留争いをするチームから上位争いにするチームに変えたかった」と、唇を噛む。責任感の強いストライカーは、チームを離れることを決めた2つの理由を明かした。

「一つは目標を掲げながら、達成できていない歯がゆさがありました。フロント、強化部全体にも変えた方がいいところは進言してきたつもりです。しかし、なかなか変化できませんでした。もう一つの理由は、日本はブラジルから遠く離れています。ブラジルのメディアから日本サッカーが注目されることは、まだ少ない。私の昔からの目標であるブラジル代表入りのためには、違う決断が必要なのかなと思いました。今のブラジル代表を見ても、国内で結果を出し始めた選手、能力が自分とそんなに変わらない、自分も負けていないと思える選手たちがメンバーに入っています。そこに立ちたいという気持ちが強くなっていますし、自分の掲げていた目標に近づくために、この決断は必要なのかなと思いました」

 ここ数年、チームをけん引してきたエースの離脱は、この試合を終えて14位にいる大宮にとって痛恨と言える。決勝点を挙げた渡邉は「互いに狙っている位置は合っていた」と、ラファエルとのコンビネーションから決めた得点を振り返り、「いなくなるのは相当、大宮にとっては痛い」と認め「これからどういう風にしていくか考えないといけない」と話した。MF東慶悟も「ラファはここ何年間、良いものをすごく見せてくれたと思います。僕も感謝していますし、昨年も一緒にやっていたすごく楽しかった」と感謝の言葉を口にし、「プロの世界ですから、選手がいろいろなところに行くことはあることです。その中で今後は一人ひとりがより責任を持ってプレーすることが大切」と語った。

「いつの日か、また大宮に戻ってきたい。僕も大宮を応援し続けます」と、ラファエルは目に涙を浮かべながらサポーターに挨拶をした。彼の愛する大宮が、J1に残り続けるためにも、彼の置き土産とした約2か月ぶりの勝利を次につなげていかなければならない。

(取材・文 河合 拓)

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