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6試合ぶりの勝利も、課題は山積みの大宮

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[6.30 J1第16節 大宮1-0清水 NACK]

 ショッキングな敗戦を払しょくするためには、何より勝利が必要だった。27日に行われたナビスコ杯の新潟戦で、大宮アルディージャは3-0のリードから4ゴールを叩き込まれて、黒星を喫していた。「自分のサッカー人生でもあんな負け方は初めて。受け入れることが難しい試合から切り替えるためにも、結果を残したかったし、悔しい思いも少しは晴れた」と、中3日で迎えた清水戦で決勝点を挙げたMF渡邉大剛は、安堵の表情を見せた。

 苦しい試合だった。序盤から清水に主導権を握られ、多くのピンチを招いた。それでもGK江角浩司のファインセーブもあり、90分を無失点に抑える。そして迎えた後半ロスタイムだった。相手のスローインをDF下平匠がカットすると、途中出場した3選手が連動する。FW清水慎太郎が中央のFWラファエルにパスを出すと、タメをつくった10番は、最終ラインの裏にいた渡邉にスルーパスを通した。渡邉はDFカルフィン・ヨン・ア・ピンをかわし、飛び出してくるGK林彰洋の股下を抜けるシュートを流し込んだ。

 第10節のG大阪戦(1‐0)以来となるリーグ戦6試合ぶりの勝利を決めたゴールを渡邉は「自分でも期するものがあった。チームが勝てていなかったし、スタートから出られないことも悔しい。新潟戦のこともあったし、チームの勝利に貢献できたことが一番うれしい」と笑顔を見せた。

 それでも、安心してばかりはいられない。シーズン途中で鈴木淳監督を解任し、ベルデニック監督を迎え入れた大宮は、まだ戦い方を模索している。「守備に追われる中で、前でパスを回すこともできませんでしたが、こうやって勝つこともサッカー。監督が代わって、今は我慢してやっていくことが大事だと思っています」とMF東慶悟が言うように、この日の試合内容も、清水の方が優勢だった。

 さらに不安となるのは、ラファエルの退団だ。この試合でも大宮の攻撃は、ロングボールが目立った。渡邉は「(ベルデニック)監督からは、『ロングボールを蹴るな』とは言われません。むしろグラウンダーでもハイボールでも、FWに(パスが)入らないことを嫌がります」と明かすが、前線でターゲット役となれるラファエルが不在だった前半、大宮は前でボールを収めることができず、守備に奔走させられた。ベルデニック監督も「ロングボールを収めるために、長身FWを2枚にしたかった」と明かしたが、今後は、その策もとれなくなる。

 脱ラファエルの戦い方を、これから早急につくり上げなければならない。渡邉は「ベースは広島戦と今日のやり方」と言い、「(長谷川)悠や(チョ・)ヨンチョルに絡んでいく形になると思います。前に入る選手の能力を引き出せるようにしたい。これからどうしていくか、みんなで考えていかないと」と続けた。

 現有戦力の中から、救世主が誕生するのか。それとも新監督の求める戦い方にフィットする人材を補強するのか。約2か月ぶりの勝利を挙げた大宮だが、まだまだ課題は山積みだということは、忘れてはならない。

(取材・文 河合 拓)

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