beacon

[MOM4356]FC東京U-18MF渡邊翼(3年)_キャプテンマークもモチベーションに戦う7番が「やっとだよ……」のゴールで勝利に貢献!

このエントリーをはてなブックマークに追加

貴重な追加点を挙げたFC東京U-18MF渡邊翼(3年=FC東京U-15深川出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.24 クラブユース選手権(U-18)GL第2節 FC東京U-18 4-1 長野U-18 コーエィ前橋フットボールセンターB]

 いつだって全力で頑張ってきた。ただ、その力を注ぎ込むベクトルを少しだけ変えてみたら、新たな自分に出会えるかもしれないと、新たな世界が見えてくるかもしれないと、今だからこそ思うことができている。

「奥原さんに『前回の試合はあまりキャプテンの仕事をしていなかった』みたいなことを言われたので、今日は本当に自分のプレーだけではなくて、周りのみんなも良いプレーができるように声を掛けるということができたかなと思います。でも、キャプテンマーク、慣れないですね。全然慣れないです(笑)」

 青赤のキャプテンマークを託された、いつだって全力投球のアタッカー。FC東京U-18(関東1)のナンバー7。MF渡邊翼(3年=FC東京U-15深川出身)が発揮しつつあるリーダーシップは、チームをポジティブにまとめつつある。

 AC長野パルセイロU-18と対峙した、グループステージ第2戦。試合前に整列した青赤の11人の一番端には、黄色いキャプテンマークを巻いた7番の姿があった。今シーズンのチームキャプテンはGK小林将天(3年)だが、初戦のガンバ大阪ユース戦に続いてこの日もベンチスタート。ゆえにこちらも初戦同様に、渡邊が腕章を託されたというわけだ。

 自覚はあったという。「ガンバ戦はちょっと緊張もしていて、自分のことばかりになって、周りが見えていなかったんですよね」。チームも1対1のドロー決着。自身のリーダーシップで勝利に導けなかった後悔は、心の一角を確実に占めていた。

 立ち上がりから一方的に押し込む展開の中、この日の“キャプテン”は前の試合とは違って、周囲がハッキリと見えている感覚を掴んでいたという。「こういうふうにチームが上手く行っている時は、周りが見えるんです」。左サイドで攻撃姿勢を打ち出すと、1点をリードした前半33分には決定的なシーンがやってくる。

 FW山口太陽(2年)のパスを受けたMF佐藤龍之介(2年)がドリブルを始めた瞬間、頭の中にそこから先のイメージが湧き上がる。「中盤で良い感じでパス回しをしていて、龍之介がそこで抜け出してくれてキーパーと1対1になったので、『シュートを打つな』と思って、最後まで走り込んだらボールが目の前に来たので、あとはシュートを打つだけでした」。

 ボールがゴールネットを捉え、その行方を見届けた渡邊は、思わずこう呟いていた。「やっとだよ……」。その真意は本人に語ってもらおう。「ここまで全然得点という結果が出なかったので、本当に『やっとだ……』みたいな気持ちがあって、そう言っちゃいました(笑)」。

 公式戦のゴールは6月1日に行われた、この大会の関東予選のザスパクサツ群馬U-18戦以来で、ほぼ2か月ぶり。プレミアリーグEASTでもここまで1得点と、なかなか結果に恵まれなかったがゆえに、思わず安堵感が口を衝いたというわけだ。



 結果的にFC東京U-18はゴールを重ね、4―1で快勝。タイムアップの瞬間までピッチに立っていた渡邊は、キャプテンとしてチームメイトと笑顔で勝利の歓喜を分かち合った。

「自分も1年生の頃も2年生の頃も少し試合に出ていたりして、緊張ややりづらさがあることは感じていたので、だからこそ下級生は凄く能力がある分、それを最大限に生かせるように声を掛けてあげたり、カバーしてあげたり、ということが凄く大事なのかなと思っています」。そんな渡邊の発言は、チームを束ねる奥原崇監督の言葉を聞くと、より大きな意味を持って響く。

「彼は昔からグラウンドでは頑張る子だったんですけど、お父さんやお母さんにお話を伺ったりしても、日常生活とか家での生活で少しずつ変化が出てきてくれているので、それがグラウンドでの表現も間違いなく上げてくれているとは思っています。そこはもう本当にここ1か月ですね。本気でどう変わらなきゃというところがようやくわかってきていて、チームを束ねることを与えると、そっちに頭が振れ過ぎたりとか、自分に集中すると仲間とリンクできないとか、そういうところがずっと課題だったんですけど、今は広い意味で全体を見ながらプレーできているのかなと思います」。

 3年生のみんなと挑む最後の夏の全国。この大会に懸ける想いを、渡邊はそっと教えてくれた。「自分たちの代はむさしも深川も全国に出ていなかったので、この代としては全員が初めての全国で、いろいろとわからない部分もあるんですけど、逆に最初で最後の自分たちの代での全国だからこそ、絶対に優勝してやるという気持ちは3年生全員が持っていますし、自分も優勝目指して頑張ってやっています」。

 彼らが中学校3年生だった2020年はコロナ禍が急拡大した年であり、夏のクラブユース選手権は開催中止に。年末に行われた高円宮杯U-15サッカー選手権にも、FC東京U-15深川も、FC東京U-15むさしも出場が叶わなかったため、今年の3年生が“自分たちの代”で臨む全国大会は、これが最初で最後ということになる。

 きっと今はそのキャプテンマークも、自分のモチベーションを掻き立てる1つのツールになりつつある。だからこそ、それを巻いていても、巻いていなくても、もうやるべきことは変わらない。「まずはもちろん全国優勝したいですし、チームとして成長して、後期のプレミアに繋げられる大会にしたいなと思っています」。

 “自分の全力”を、以前より確実に使いこなし始めている青赤の新リーダー。周囲へ目を配る余裕を身に着けつつある渡邊のさらなる成長は、夏の全国の頂点を見据えるこのチームのさらなる成長と、間違いなく直結しているはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●【特設】第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

TOP