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県民の寄付金で手にしたJ1昇格の権利、大分FW森島「背負ってるものが違う」

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 J1昇格プレーオフ決勝が23日、東京・国立競技場で午後1時キックオフされる。J2年間6位の大分トリニータと年間5位のジェフユナイテッド千葉による最後の昇格切符を懸けた決戦を翌日に控え、都内で前日記者会見が行われ、大分の田坂和昭監督、FW森島康仁、千葉の木山隆之監督、MF佐藤勇人が出席した。

 自分たちのためじゃない。ファン・サポーター、そして大分県民のために、4年ぶりのJ1復帰を成し遂げる。「年間6位という一番下からギリギリ(プレーオフに)参加できて、準決勝も勝ち上がることができた。勝てば6位からJ1に昇格できるというメリットがあるが、負ければただの6位」。そう語る田坂監督は「チームにとっても、県民、サポーターにとっても大きな一戦。自分たちの持っている力を結集して、千葉を倒したい」と誓った。

 08年にはJ1で4位と躍進し、ナビスコ杯を制してクラブ史上初のタイトルを獲得した大分だが、翌09年にJ1で17位と低迷。J2降格が決まった。09年秋には財政問題による経営危機が表面化。Jリーグから6億円の緊急融資を受ける事態となった。この借り入れ金を返済しない限り、たとえ成績面で昇格の条件を満たしても、J1に昇格することはできない。クラブは6億円のうち残り3億円を返済するため、今年5月より一般の県民・サポーターに対し「J1昇格支援金」として寄付金を募り、8月に目標金額である1億円に到達すると、残りの2億円についても大分県等の行政や地元経済界から支援を受けた。そして今年10月、支援の総額は約3億3000万円となり、融資を完済。J1昇格に必要なJ1クラブライセンスの交付を受けることになった。

「08年のナビスコ杯優勝で一回上がって、そのあとドン底まで落ちた。自分も不遇の時代が長かったし、明日は重い試合になる」。08年7月から大分でプレーする森島はこの4年間を振り返り、「失うものはないし、勝たないと何も残らない。勝てば、支援金の意味が明確になる。大分県民のためにがんばりたいし、トリニータを支えてくれる人のためにがんばりたい」と決意を語った。

「向こうのチームとは、背負っているものが違う」。準決勝の京都戦では4ゴールを挙げる大活躍でチームを決勝に導いたエースは「変に前の試合で4点取っちゃったけど、向こうが『対森島』になってくれたら他の選手が空く。千葉が『対森島』になってくれればラッキー」と、不敵な笑みを浮かべていた。

(取材・文 西山紘平)

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