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[選手権予選]前回日本一撃破の日章学園、決勝も制して宮崎の覇権奪還!!

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[11.3 全国高校選手権宮崎県予選決勝 日章学園4-1都城工 宮崎県総合運動公園陸上競技場]

 第92回全国高校サッカー選手権宮崎県予選決勝が3日、宮崎県総合運動公園陸上競技場で開催され、2年ぶりの優勝を狙う日章学園と32年ぶりの全国大会出場を目指す都城工が激突。日章学園が4-1で勝ち、2年ぶり10回目の全国大会出場を決めた。

 一昨年度まで大会5連覇を果たしていた日章学園が1年でタイトルを取り戻した。準決勝では昨年度日本一のライバル・鵬翔に対して後半ラストプレーで追いつき、延長戦でもリードを奪われながら再び追いついてPK戦で勝利。主将のMF菊池禎晃(3年)は「それが一番スッキリしました。あの勝ったあとの達成感っていうか、重荷が降りたというか。1年間ずっと苦しんできたのでちょっとホッとしました。(鵬翔戦は)延長始まる前にベンチ組は泣いていて『頼む』『頑張れよ』と。鳥肌立ったし、ピッチの上で『やらなきゃ』という気持ちはありました。オレ中心にみんな気持ち、気持ちと言っていたし、それにみんな応えて最後まで走ってくれたし、最後の国立だから早稲田監督を絶対に連れていくんだという気持ちがつながったんだと思います」。

 昨冬、ライバルの躍進を悔しい思いで見つめていた日章学園がライバル撃破。その鵬翔戦後、日本高校選抜MF小原裕哉(3年)から「頑張れよ」と声をかけられたというCB岩切龍二(3年)は「ありがとう。全国獲るから」と言葉を返したという。全国連覇を目指した鵬翔の分も、戦わなければならない責任がある。その日章学園は決勝で都城工にシュート25本を浴びせて全国切符を獲得した。

 日章学園は試合開始直後から都城工ゴールヘと押し寄せる。40秒、右サイドからのラストパスに大外から走りこんだ左SB木橋春暁(3年)がいきなり決定的な左足シュート。3分には中央から仕掛けた菊池が左足を振りぬいた。

 ただ都城工は好守からの速攻を徹底する。5分、左オープンスペースへ飛び出したFW茶木和樹(3年)が左足を振りぬくと、GK頭上を越えた一撃はクロスバー直撃。さらに7分、右サイドから前線へフィードを送ると、これが日章学園CB、GKの連係ミスを誘発する。ゴール方向へ転がったバックパスを懸命に追った茶木がGKと競りながら身体ごとゴールヘ押し込んで古豪が先にスコアを動かした。

 ミスによって追う展開となった日章学園だが、どこからでも崩すことのできる攻撃はハイレベル。前半は司令塔・菊池のパスがやや相手DFに引っ掛かるシーンが多かったものの、それでも菊池のアイディア溢れるパスと最前線で構えるFW村田航一(2年)のキープ力を軸に、右MF河野翔太(2年)、左MF甲斐匠(3年)、そして積極的に攻撃に絡んでくるMF井谷一勝とMF松田岳(ともに3年)のダブルボランチがダイレクトのパス交換や個人技を駆使して都城工ゴールへ押し寄せる。また木橋の局面を変えるサイドチェンジが相手を大きく揺さぶった。

 ただ圧倒的にボールを支配し、シュートを連発しながらも1点が遠い。13分に井谷がDFを外して放った右足シュートや38分に村田のパスからPAへ潜り込んだ甲斐の左足シュート、そして前半だけで7本を数えたCKからのシュートも精度を欠くなどなかなか同点に追い付くことができなかった。逆に闘争心を全面に出して戦うMF永井幸克(3年)中心に中盤、最終ラインがコンパクトに守る都城工は個々もハードワークを徹底。ブロックに入ってくるボールをしっかりとはじき返していく。また茶木とFW吉村汰誠(2年)の2トップにボールが入ると、一気に攻撃を加速させるなど、一発の怖さを示しながら1-0のまま試合を進めていた。
 
 日章学園は相手の堅い守りの前に慌ててシュートしてしまうようなシーンもあったが、それでも前半39分、2年生FW村田の鮮やかな一撃で同点に追いついた。甲斐との連係で左サイドからPAへ侵入した村田は「1点負けている場面だったので一個外して思い切って打ったらいいところへ行きました。いいコースに行ったので、自分でもビックリしました」と対応したDFのマークをわずかに外して右足コントロールショット。これがゴール右隅へ決まって1-1で前半を折り返した。

 すると後半2分、日章学園は菊池の右FKをファーサイドの岩切が頭で合わせて逆転に成功した。自身のミスで先制点を許していた岩切は「自分の失点を取り返せて素直に嬉しかったです。自分たちは身長低いんで、セットプレーはよく練習している。決められてよかった」と笑顔。その後、日章学園は菊池が難しいラストパスをピンポイントで合わせてくるなどビッグチャンスを連発する。ただ再三スタンドを沸かせながらも、シュートがことごとく枠のわずか外へ飛んでしまう日章学園に対し、都城工はカウンターから敵陣でFKを獲得。セットプレーからMF奥津勝也(3年)がPAへボールを入れてプレッシャーをかけ続けた。

 それでも日章学園は38分、カウンターから左サイドを抜けだした菊池が、中央を駆け上がってきた村田の前方へ完璧なラストパスを入れると、村田がワンタッチでゴールヘ沈めてようやく3点目。41分には交代出場のFW竹脇雄大(1年)のアシストから右MF河野が豪快に逆側のサイドネットへ右足シュートを突き刺して4-1で試合を終えた。

「納得できる内容ではない」と首を横に振った日章学園の早稲田一男監督だが「前の方は連動した中で点を取れる個もある。前半、かなり相手チームがハードワークで来ていた。前半終わりくらいから(相手の)足が止まり始めていたので『どんどん動かしなさい』と。そこから変化をつければついてこられなくなる。思惑通りの展開ではありました」と微笑んだ。

 昨年度、鵬翔が全国制覇したことによって全国大会では第1シードの位置に入ることとなる。それでも指揮官は「(昨年鵬翔が優勝したが)県レベルでは高かった地域ではないので、他の県は意外と組みやすいと思っていると思う」と気を緩めることはない。昨冬、鵬翔が見せた粘り強い戦いも参考に、自分たちのパススタイルで国立へ。2年前に全国舞台を経験している菊池は「初戦が一番難しいと思います。初戦をしっかり勝って勝ち続けられるように。目標はやっぱり日本一。早稲田監督に国立に立って欲しいし、胴上げしたい」と誓った。

(取材・文 吉田太郎)
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