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「他の選手の負担を少なくする」キャプテン長谷部の“真骨頂”

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練習前に西野監督と話すMF長谷部誠

 W杯本大会2か月前の監督交代という異例の事態に直面している日本代表は現在、急ピッチでチーム戦術を構築中だ。西野朗監督は5月21日にスタートさせた国内合宿で3バックに取り組み、同30日のガーナ戦(0-2)で3-4-2-1を採用した。W杯メンバー23人決定後のオーストリア合宿では4バックに着手。8日のスイス戦(ルガーノ)は4バックで臨むことが濃厚だ。

 バリエーションが多く、試合の中でシステムを変えることも視野に入れた中で、選手は短期間に多くの情報をインプットし、頭がいっぱいになっている――。キャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)の目にはこの状況が危険であると見えたようだ。

「これだけ限られた時間の中で、戦術でいろいろと詰めなければならない部分があると、ミーティングで頭がいっぱいになってしまうところがある」と指摘。スイス戦を翌日に控えた取材対応では、分析担当を含めたコーチングスタッフと自ら話し合い、編集映像などをコンパクトにしていることを明かした。

「自分ができることは、できるだけ他の選手の負担を少なくすること。ここのシーンはこうしたほうが良いなど、コミュニケーションを取ってやっている」。西野監督の志向をくみ取っての行動だ。

「どの監督も選手がピッチでコミュニケーションを取ることが必要というのは大前提だが、特に西野監督の場合は、選手に投げかけたり、選手がピッチの中でどういう対応ができるかを強く求める」と方向性を分析。ミーティング内容の整理に関わることについては「自分にとってはそんなに新しいことではないですが、今は特に監督が選手からのアクションを求めるので、自分がやることは多いのかなと思う」と説明した。

 選手の自主性が尊重されるようになり、チーム内に緩みが出る危険性に対してもすでにクサビを打ち込んでいることを明かした。オーストリア入りしてからGK川島永嗣らとともに「監督が選手をリスペクトして多くをつくっていくのだったら、そこには厳しさを求めなければならない」と、チームメイトに話をしたという。

 10年南アフリカW杯直前に岡田武史元監督にゲームキャプテンとして抜擢され、14年ブラジルW杯でもアルベルト・ザッケローニ元監督から全幅の信頼を寄せられた。それはハビエル・アギーレ元監督時代も、バヒド・ハリルホジッチ前監督時代も、そして西野監督になってからも変わらない。所属するフランクフルトでも、異国の選手でありながらニコ・コバチ監督から最大の評価を得ていた。

 危機的な状況であぶり出された長谷部の真骨頂。「自分のように経験のある選手がこういう状況で堂々としていることや、背中で引っ張れるような態度もすごく大事だと思う」。卓越したキャプテンシーで日本を勝利に導こうとしている。

(取材・文 矢内由美子)

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