beacon

[清宮×外池]早稲田大優勝記念特別対談vol.3 「90人面談」「パワハラ問題」

このエントリーをはてなブックマークに追加

清宮克幸氏の一つひとつの言葉が外池大亮監督の礎になっている

「監督にとって一番大事なのは愛」。外池大亮監督が清宮克幸氏との会話でインパクトを受けた言葉は「愛」。外池監督はどのような方法で部員に「愛」を注ごうと思ったのか。また選手を思い、人生を預かる覚悟で教え子に接してきた2人にとって、今年のアマチュアスポーツ界で次から次へと表面化した「パワハラ問題」に対しては違和感を覚えていたかもしれない。日大アメフト部を皮切りに大学体育会や体操などアマチュアスポーツで起きた問題を、2人はどうとらえているのだろうか?

▽vol.1スローガン『ドライブ』誕生
▽vol.2相馬事件

<90人面談>

外池 「清宮さんが『愛』が必要だと話されていたのが、ずっと頭に残っていた。だから春の合宿で部員90人全員と一人20~30分くらいの面談をすることにしたんです。監督初年度で、僕もですが、学生たちもどうするんだろうと思っていたと思うんですね。そこで一人ひとりと向き合おうと。長い選手は2時間くらいしゃべるんですけど、それに付き合うことが僕にとっての『愛』かなと思ったんです」

清宮 「試合に出る人間だけに目をかけていても、そのチームは絶対に強くならないからね。想像だけど、早稲田のサッカー部の長い歴史の中で固まってきたものが、外の現場を経験して成長した外池くんにとっては、合理的ではなく、必要でないものにもみえていたんだと思う。それは俺がワセダのラグビー部に入った時と全く同じなんだよね。俺も古いものを否定しようとは思わなかったけど、外の世界を経験したことで、ミックスして新しいものを作り上げようとしたからね」

外池 「だから僕は監督業がこれだけ面白いとは思いませんでした。プロで11年やらせてもらって、それから広告代理店とスカパーを10年。今は監督と二足のわらじを履かせてもらっているんですけど、『その二足のわらじがすごく大事だよ』という話をしていただいたこともすごく心に刺さった部分でした」

清宮 「無駄になることは何もないからね。いろんなキャリアを次にどう活かすことができるか。そこに監督としてのセンスが問われるよな。ひとつの物事をいろんな角度から見るということが大事。君が中学生の時にラグビーを観ていろんな角度から発想を得たようにね。90人面談で感じたこともそう。プロと企業人とを経験した外池くんにとっての当たり前のことが、学生にとっては初めてのことだってあるんだから」

<パワハラ問題>

外池 「今年は日大の問題(※)とかありましたけど、僕はああいう風になるイメージがつかないですよね。こっちは選手側の夢だったり希望をより膨らます立場。学生に歩み寄らなければ、つまんないんじゃないかなと思うんですよね」

※日大アメフト部の問題=今年5月、監督が部員に対して、「殺人タックル」とも揶揄される反則タックルを監督が指示したのではないかとされる問題。警視庁は「指示した事実は認められない」として立件は見送られる見通しとなった。

清宮 「選手と監督の信頼関係があればああいうことは起きないし、誤解も生まれないと思う。日大の問題だけじゃないけど、ある一人の選手が監督のことを否定したり批判したりすると、普通はそれはそうじゃないよと声が挙がるから。それが起きなかったということは、監督が仕事を十分にできていなかったということだったんだと思う」

外池 「そうです。どうしたらああいう状況になるのかなという感じですよね」

清宮 「やっぱり監督に一番大事なのは『愛』なんですよ。一緒にやった監督に結婚式に来てほしいと思う関係になって卒業する関係が一番。あんな奴呼びたくもないってなるとダメだとつくづく感じるね。ハードル高くなったかな(笑)」

外池 「ハハハッ(笑)」

清宮 「でもね、ワセダで俺はその関係性を作り上げたんだよね。大学選手権決勝の前日にBチームとCチームの試合をしていたんだけど、俺はその試合をワセダの一年で一番熱い試合と呼んでいたんだ」

vol.4に続く――

●清宮克幸
1967年7月17日、大阪府大阪市出身の51歳。2001年に母校早稲田大ラグビー部の監督に就任。2年目の03年に13年ぶりの大学日本一に導く。その後、トップリーグのサントリー、現在指揮をとるヤマハ発動機でも監督として日本一に輝く。北海道日本ハムファイターズでプレーする清宮幸太郎は長男。

●外池大亮
1975年1月29日、神奈川県横浜市出身の43歳。早稲田大を卒業後、1997年に平塚(現湘南)に入団。その後、横浜FM、大宮、甲府、広島、山形、湘南と渡り歩き、2007年を最後に現役を引退。引退後は電通に就職。現在はスカパーに籍を置きながら、早稲田大ア式蹴球部の監督。

(構成 児玉幸洋)
●第92回関東大学L特集

TOP