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“外切り”守備で関西勢に襲いかかったIPU・環太平洋大、無念の逆転負けも「練習してきたことがすべて出せた」

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先制したIPU・環太平洋大

[12.8 全日本大学選手権1回戦 京都産業大 2-1(延長) IPU・環太平洋大 浦安市]

 創部初の2回戦突破を志してインカレに挑んだIPU・環太平洋大だったが、関西学生リーグ2位躍進を果たした京都産業大の前に散った。それでも試合後の桂秀樹監督は「練習してきたことがすべて出せたんじゃないかと思う」と振り返り、この大会に向けて磨いてきた守備戦術を遂行した選手たちを称えた。

 強風雨が吹きつける中での一戦、立ち上がりから主導権を握ったのはIPU・環太平洋大だった。風上を活かしたダイナミックな攻撃で京都産業大を押し込むと、前半7分にはMF紙元大翔(2年=徳島商高)が「相手と距離があったのでとりあえず打とうと思った」という果敢なダイレクトシュートで先制弾。Jユース出身者が並ぶ相手に対し、後半途中までは互角以上の戦いを繰り広げていた。

 中でも際立っていたのが前線も含めたディフェンスだった。バランスの良い配置で相手のパスワークを待ち構え、ボールを奪う場面では常に前向きな姿勢を保つことにより、スムーズなカウンター攻撃に移行する狙いがあった。

「向こうもボールを大事にしながら丁寧に攻撃を組み立ててくるのはわかっていたので、前でしっかり守備をしながら高い位置で攻撃を引っ掛けてそのままゴールに向かっていくようなことをしないと。なかなかうちがボールを持ってゴールを目指していくのは難しい」(桂監督)。総理大臣杯後からトライしていた守備戦術は今大会に向け、懸命に作り上げてきたものだったようだ。

「フロントハーフ、相手陣内ではマンツーマンに近い形。丁寧につなぐチームはそうすればリズムが出しにくくなる。海外でもそういう形を採用しているチームはあるけど、そういう効果を狙っていた。またフロントハーフでは内側にボールを誘導するような形。そのほうが合理的。ボールを取った時に直線的にゴールに行けるので、外側ではなく内側に誘導して、前向きにゴールに向かっていくシーンをどれだけ作れるかという準備をしてきた」。

 桂監督が振り返ったように、中盤より前でのプレッシングは“外切り”優先。相手の攻撃をサイドに追い込んでゴールから遠ざけるのではなく、あえて中盤を経由させることで奪いどころに狙いを定める狙いがあった。ただ、中国リーグではボールを握れる時間帯が多いため、この戦術は「ぶっつけ本番」(桂監督)。コロナ禍で練習試合が組めなかったこともあり、不安な思いもありながらこの一戦に臨んでいたという。

 それでも結果的にはこの戦術が奏功した。「最初はちょっと戸惑いもあったけど、守備での確認の時間が練習で増えたので、全員が理解してできるようにという知識の部分が深まっていた」。主将のDF保田稔之介(4年=大阪清風高)がそう振り返るように、選手たちは限られた練習時間の中で積み上げたことをピッチの上で表現。指揮官も「数日間のトレーニングでそこだけ徹底してやったのを、上手く理解して実践してくれたなと思う」と目を細めるほどだった。

 試合は足が止まりつつあった延長戦の末、1-2で敗れた。しかし、保田は「プランどおりの戦いはできた」と前向きに振り返り、「ここまでやれたのはよかった。あと一歩で悔しい部分もあったけど、1〜3年生には手応えはあったと思う」と後輩のリベンジに期待を寄せた。また自身は高校教員志望。「指導者になってこの借りを返したい」と新たな野望も見せた。

 そしてゴールを決めた紙元は来季、再びこの舞台に帰ってくる構えだ。「作戦的にはハマったところもあったけど、ボール保持ができないといけない。もっとボール保持をして自分たちの時間帯をつくりたかった」と課題を明かしたMFは「大学卒業後もサッカーを続けようかなとは思っているけど、そのためには全国で勝ってアピールしないといけない」と意気込みを語った。

(取材・文 竹内達也)
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