beacon

[MOM3937]大宮U18FW高橋輝(3年)_止まらないスピードスターの輝き。オレンジの閃光が首位の連勝を止めるゴラッソ!

このエントリーをはてなブックマークに追加

大宮アルディージャU18FW高橋輝は首位の連勝を止めるゴラッソ!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.9 高円宮杯プレミアリーグEAST第12節 川崎F U-18 1-1 大宮U18 富士通スタジアム川崎]

 この男のスピードを止める方法は、おそらく1つしかない。それは『走らせないこと』。一度ボールと一緒に走り出してしまったら、そこから策を講じても、きっともう対抗する手段は限りなくゼロに近い。

「相手のセンターバックの2人はどっちもトップチーム昇格が決まっている選手で、自分の力を試せるのが楽しみでしたし、あのボールを持った瞬間に、スピードに自分は自信があるので、『これは絶対行けるな』と思って、身体を少し当てられたんですけど、そこは踏ん張って、行けました。あれは自分らしいゴールだったなと思います」。

 首位の連勝を8でストップした大宮アルディージャU18(埼玉)。その一戦で完璧なゴールを決め切ったFW高橋輝(3年=大宮アルディージャU15出身)は、その圧倒的なスピードで、着実にネクストステージへと駆け抜けつつある。

 試合前から発破を掛けられていた。順位表の一番上に立つ川崎フロンターレU-18と対峙するアウェイゲーム。「試合前に(森田浩史)監督からも『今日の試合は2トップがカギで、2トップで違いを作れるかどうかがポイントだ』と言われていました」と高橋。相手のセンターバックはDF高井幸大(3年)とDF松長根悠仁(3年)。ともに来季からのトップチーム昇格が発表されている逸材だ。負けず嫌いの高橋に、火が付かないはずがない。

 前半にも決定機はあった。先制を許して迎えた18分。2トップでコンビを組むFW石川颯(2年)からのパスで、右サイドを抜け出した高橋はGKと1対1になったものの、シュートはファインセーブに阻まれてしまう。以降はまったくと言っていいほどチーム自体にチャンスはなく、押し込まれ続ける展開の中でハーフタイムに折り返す。

 ただ、「前半の決定機を外した瞬間に『もっと冷静にできたな』と感じていて、そこからの数分間は『ヤバい、ヤバい』と思ったんですけど、後半はスッキリ切り替えられていました」という高橋は、再び次にやってくるかもしれないチャンスへの神経を研ぎ澄ませていく。そして、後半28分。その時が訪れる。

 後半開始から投入された2トップの相方、FW前澤拓城(3年)からパスを受けると、高橋は一瞬でアクセルを強烈に踏み込む。「自分は後ろを向いていたんですけど、拓城と相手が混戦になって、そこからこぼれてきたので、前を向いてから、『もう行こう!』と。タッチの感覚も良くて、『これは絶対行けるな』と思いました」。

 マーカーに身体をぶつけられても、体幹はブレない。あっという間にトップスピードに到達し、GKとの1対1も今度は左スミのゴールネットへ豪快にボールを突き刺してみせる。「いつもシュートは焦ることも多いんですけど、あの時は良い感じにスピードに乗っていて、瞬間的に枠には絶対入れるイメージだけ持ちました。決めたいという気持ちが強かったので、決められて良かったです」。

 そのスペシャルな一撃には、森田監督も舌を巻く。「前を向いて仕掛けて、あそこまで行き切れるというのは凄いなと思いますし、それを90分続けられますし、抜けていったところで、そこにプラスして決め切るというところが、やっぱり彼の素晴らしいところかなと今日改めて感じました。レイソル戦でも似たような形がありましたけど、やっぱり前を向いた時の彼のパワーは凄いですね」。

 指揮官が言及した第9節の柏レイソルU-18戦では、終了間際の後半45+4分にやはり単騎で抜け出し、豪快な決勝弾を叩き込んでいる。本人も「レイソル戦が甦ってきたような感じでしたね」と振り返ったようなゴラッソだったが、実はリーグ戦ではここ5試合で4ゴールと、一気にその得点感覚が解き放たれつつある。

「最近は試合前にいつも『決められるな』という感覚は自分の中で常に持っていて、ドリブルからシュートしたりするチャンスは最低でも1試合に1回はありますし、さらにドリブルシュートが一番気持ち良いので、そこを仕留めるイメージでやっています。最近は凄くゴールへの感覚が戻ってきている気がしていますけど、まだ1試合の複数得点は獲ったことがないので、そこは次への課題かなと思います」。序盤戦はなかなかゴールが生まれず、悩んでいたのが噓のような“ケチャップ”ぶり。いよいよ『とにかく速い選手』から、『とにかく怖い選手』のステップを登り始めている。

 今月末に開幕するクラブユース選手権への意気込みを問うと、力強い答えが返ってきた。「クラブユースの得点王は目標にしているんですけど、やっぱりチームが勝利することが一番です。アルディージャのアカデミーの歴史を変えるという想いは、高1の時からずっとずっと持っているものなので、そこを一番の目標として、その中で自分の結果が付いてくればいいかなと思っているので、チームの勝利に貢献したいと思います」。

 輝きをより放ちつつあるオレンジの閃光。もはやドリブルだけを警戒すればいいわけではない。高橋が相手に与える脅威は、日に日にその鋭さを、強烈に増している。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2022特集

TOP