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[MOM4096]興國MF千葉大舞(2年)_世界の才能集まる“バイエルン・スカッド”も経験…注目インテリオールが1G1A&PK成功

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MF千葉大舞(2年、背番号11)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[11.6 選手権大阪府予選準決勝 興國高 2-2(PK5-4) 桃山学院高 ヨドコウ]

 1ゴール1アシストでチームの全得点を叩き出し、運命のPK戦では5人目で勝利を決めるキックを成功。興國高のインテリオールとして攻撃の軸を担うMF千葉大舞(2年=C大阪U-15→C大阪U-18出身)が大阪府予選準決勝でもたらした結果は絶大だった。

 まずは1-0で迎えた前半25分、右コーナーキックをニアサイドに蹴り込むと、DF常藤奏(3年)のヘディングシュートをお膳立てした。「常藤くんはよく点を取るし、ストーン前かストーンに落ちるぐらいのところに蹴ったら合わせてくれる。そのおかげで結果につながった」。あっさり語った千葉だったが、このアシストには高精度キックを活かした布石があった。

 それまで左コーナーキックのチャンスが2度あった中、千葉はゴール正面に構えるDF西川楓人(3年)をターゲットに良いボールを蹴り込んでいたが、いずれも惜しい形でゴールにつながっていなかった。だが、このキックが脅威を与えていたことでさらにマークが西川に集中し、右コーナーキックとなったところでニアサイドが空いていたのだ。

「駆け引きですね。1本目、2本目は西川選手に出して、結構マークがついてくるやろなって思ってたんで、左コーナーキックから右コーナーキックになったときに変えた。得点したところに蹴るほうが僕は得意なんですけど、ここで行って欲しいなっていうところで常藤くんが待ってたんで、そこに合わせるだけでした」

 キックの精度と駆け引きが組み合わさった一撃。「新チームからキッカーを任されていて、最初はあまり良くないところに蹴っていたけど、監督から言われながら練習してきた。歩幅とかを意識してそれが結構フィットしてきたので、いまはそれを続けている感じですね」。積み上げてきたものが発揮されての先制アシストだった。

 その後は1-1に追いつかれ、拮抗した展開が継続。しかし、次に均衡を破ったのも千葉だった。後半33分、ゴール前の崩しからMF宮原勇太(2年)が狭いスペースでボールをキープすると、落としのパスを受けて右足一閃。GKのファインセーブに阻まれる形となったが、左ポスト際に高く上がったボールにいち早くアプローチし、高い打点からのジャンピングヘッドで押し込んだ。

「本当は1本目で決めておきたかったなというところはありましたけど……」。そう反省から入った千葉だが、素早い動き直しで見事な連続性を発揮。「もともと中学校のときはFWだったので、ゴールへの嗅覚は消さないままい続けようと。点も取りたかったし流れも変えたかったので、ポストに当たってもいいやって死ぬ気で思いっ切り行きました」。中盤中央でゲームメークを担いながらも、長年にわたって磨いてきた得点力も発揮した。

 そうしたFWからMFへのコンバートは、内野智章監督から適性を見出されたことがきっかけだったという。

「中学校の時はずっと4-4-2の2トップだったんですけど、高校になってからみんながガタイが大きくなって、自分も身長が伸びず悩んでいた。そこで内野監督から『FWでは無理やからもう一個下げて“インテリ”をやったらどうや』って言われて、最初は『えぇー』と思いながらやってたんですけど、どんどんフィットしてきて楽しいなと思っているところです」

 インテリオールのポジションを務めるにあたり、参考にしているのは体格の近いMFペドリ(バルセロナ)。「パスもゴールもドリブルも全てできる選手がなるポジションだと思うし、そこを目指してもっとやっていこうと思ってます」。他にも指揮官から送られてくるMFチアゴ・アルカンタラ(リバプール)、MFケビン・デ・ブライネの動画からも学びつつ、スキルアップに取り組んでいるようだ。

 中盤トップ下でプレーに自信を深めた背景には海外留学の経験もあった。千葉は今夏、インターハイ大阪府予選の途中にチームを離脱し、ドイツの名門バイエルンが主催する『バイエルン・ワールド・スクワッド』に選出。世界各国から集められた精鋭とともにブラジルやドイツで鎬を削っていた。

「(インターハイで)チームを勝たせたいっていうのはもちろんありましたけど、やっぱり目指すところは日本に留まりたくない、海外に行きたいというところ。自分1人で行くっていうところで経験も大きいと思ったし、そこで結果を残して海外の人から見つけられるほうが僕からしたらメリットのほうが大きいかなと思った。監督にすぐ行きたいと連絡して、そういう決意で行きました」

 一学年上のU-18カテゴリでのプレーとなったが、「トップ下で出してもらって、海外でも結構やれるなというのは感じたので、そこで勝負したいなってところが出てきた」と手応えを獲得。「もっと結果を残さないといけないというのはあった」と課題も感じていたそうだが、約1か月間の武者修行を充実した形で過ごしていたようだ。

 そうした異国の地での経験も、選手権という大舞台での活躍に活きている。この日は千葉の得点後にすぐさま追いつかれ、2-2でPK戦を迎える形となったが、内野監督の指名によって重要な5人目のキッカーを担当。決めれば勝利という重圧のかかる場面で堂々たるキックを決め切った。

「ずっと監督から『チームを勝たせる選手に』というのは言われていて、そういうところを意識してきた。監督が最後の5番目で選んでくれたので、最後に決めて終わりたいというのがあったし、緊張はやっぱりありましたけど、落ち着いてキーパーを見て蹴れたので良かったと思います」

 そんな千葉の働きが随所で実り、チームは決勝進出が決定。昨年は届かなかった全国舞台に王手をかけた。もっとも千葉は「結果としてはすごくほっとしてますけど、攻撃面で言えば桃山に完敗だったと思う」とあっさり。2度にわたって追いすがってきた相手攻撃陣を称えつつ、「もっと精度を上げていかないと来週は勝てないかなと思う」と気を引き締めていた。

 内野監督も千葉ら2年生主体の左サイドについて「ちょっと気持ちが入りすぎて、気合いの空回りみたいなのがどうしてもね。ほとんどのエラーがあそこで起きて、そのせいで無駄なアップダウンが増えた」と指摘。「2年生で試合に出してもらってる自分たちが全国に連れて行かないとって思いがたぶん強いんですよね」と心情も慮りつつも、精度向上を求めていた。

 そうして迎える決勝戦の対戦相手はプロ内定者2人を擁する履正社高。最後の最後にもう一つ、高い壁が立ちはだかる。「僕は準備で全て決まると思う」。そう意気込んだ千葉は「全国に行って、全国で興國のプレーモデルを見せたい。そのために履正社よりもいい準備をして上回っていきたい」と与えられた準備期間に力を注いでいく構えだ。

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(取材・文 竹内達也)

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