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「2度目の国立」は後輩たちに…。東京B準々決勝敗退の関東一は自分たちの戦いを最後までやり切る:東京

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昨年度全国3位の関東一高は東京Bブロック準々決勝で涙をのんだ。

[10.22 選手権東京都Bブロック準々決勝 大森学園高 1-1(PK5-3)関東一高 南豊ヶ丘フィールド]

 試合へ向けた準備も、内容も決して悪かった訳では無い。昨年度全国3位の関東一高は、選手権へ向けて状態を上げてきた3年生たちを中心に前からの守備。ボールを握りたい大森学園高に自由を与えず、ロングボールを蹴らせることに成功していた。
 
 前半27分にはMF井上樹(3年)の左足FKのこぼれ球をMF佐藤大介(3年)が押し込み、リードを奪う。すぐに追いつかれたものの、後半はMF湯田欧雅(3年)や井上がボールに多く絡みながら保持し、サイドからチャンス。だが、決め切れなかった。

 キープ力の高いFW清水大生(3年)の左クロスからエースFW本間凜(3年)が決定的なヘッドを放つシーンやCKのサインプレーからDF矢端虎聖主将(3年)が左足シュートを放つシーンもあったが、相手の好守に阻まれてしまう。

 1-1で2試合連続となるPK戦へ突入。こうなると可能性は五分五分だ。関東一もベストを尽くしたが、同様にPK戦まで細部に渡って準備してきていた大森学園に3-5で敗戦。小野貴裕監督は「勝つための最後のエネルギーというものを最後作り切れなかった」と残念がった。

 昨年度の選手権は劇的な勝利を続けて同校の歴史を大きく塗り替えるベスト4進出。新型コロナウイルスの影響で準決勝は出場辞退となり、新チームは成し遂げた結果以上とも言える好奇の目の中で新チームをスタートすることになった。

 昇格したプリンスリーグ関東2部ではなかなか結果が出ずに現在6チーム中5位。インターハイでは東京都予選を突破したが、全国大会では初戦敗退に終わっている。責任感の強い矢端主将、またチームメートたちも考え込んでしまう部分があったようだ。

 矢端は勝つためのエネルギーを作り切れなかったという指揮官の考えに同調する。「間違いなく(小野監督の)言っていることは合っていて、この時間帯でのプレーの仕方や熱量の共有は全くできていなかったと思います」。関東一はこれまで2度の選手権予選連覇やインターハイ予選4連覇を成し遂げている。伝統校がサッカーをどんどんアップデートし、新しい力も台頭する中、関東一は戦術や技術力、メンタリティーの部分から細部までこだわって上回ってきた。それでも、僅差の戦いの中でこの日のような敗戦はありうること。逆境を乗り越えるような馬力、勝つためのエネルギーを身につけることができていなかった。

 この日は有観客の雰囲気にやや飲まれた部分も。矢端は素直に力不足を認める。「去年までやってきたことの何十倍もやっぱりやらないといけなかった訳で、それをただ僕たちができなかった、僕たちがみすみすチャンスを逃してしまったということだけだと思います」。そして、チームをまとめ上げられなかったことを悔しがった。

 選手権は敗退。昨年度は国立競技場で開催された開幕戦で快勝し、準々決勝を突破して再び国立で戦うチャンスを得た。出場辞退によって立てなかった「2度目の国立」は、後輩たちに託す。

 3年生はその後輩たちに一つでも多くのことを残せるように、残りのシーズンを戦う。矢端は「まだ何も残せていないので、プリンスだけは必ず後輩たちに残してあげたいと思っています」と語り、小野監督も「まだプリンスもあるし……リーグ戦もあるから今回やれなかったことはやって、終わりたい」。力を振り絞り、再び前へ。22年シーズン、自分たちの戦いを最後までやり切る。

(取材・文 吉田太郎)
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