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京都先端科学大附が試合終盤まで見事な戦い。京都橘は初戦で大苦戦も、後半残り5分からのDF池戸2発で逆転勝ち!

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京都橘高はDF池戸柊宇(右)の2ゴールで逆転勝ち

[10.23 選手権京都府予選3回戦 京都橘高 2-1 京都先端科学大附高]

 第101回全国高校サッカー選手権大会京都府予選の3回戦が10月23日に府内各所で行われた。3回戦からシード校が登場する中、京都橘高と京都先端科学大附高が対戦した。京都橘は第91回大会の全国準優勝以来、いまや全国区となった強豪校。一方の京都先端科学大附は、昨年に京都学園高から校名変更されたチームで、さらに以前は京都商高として柱谷幸一と柱谷哲二の柱谷兄弟や川勝良一ら日本代表選手を輩出してきた古豪だ。

 新旧の京都を代表する高校同士がぶつかった試合は、序盤から攻める京都橘、守る京都先端附高という展開で進んでいく。ボールを保持する京都橘は敵陣への攻撃を繰り返すが、京都先端附は分厚い守備で迎え撃ち、最後の局面では自由を与えない。また、時折見せるカウンターでは複数の選手が勢い良く飛び出してゴールを目指すなど、互角の勝負を演じていた。

 すると前半33分、京都先端附は左サイドで直接FKを獲得。MF奥田哲翔(2年)がゴール前に送り込んだボールをDF中島龍遊(3年)が頭でコースを変えて、これがゴールネットに吸い込まれた。前半は京都橘の1点ビハインドで折り返す、予想外の展開となった。

 後半も試合の流れは変わらないが、守備に回る時間が多い京都先端附の選手たちに、次第に疲れが見え始める。それでも選手交代でフレッシュな選手を送り込み、前線の人数を削って中盤を分厚くするなど、システムにも手を加えて試合を進めていく。着々と時間が経過していき、スコアは0-1のまま。ジャイアントキリングの達成が現実味を帯び始めてきた。

しかし、絶体絶命の状況で2年生DFが試合を動かした。35分、京都橘は左CKからDF池戸柊宇(2年)が頭であわせて同点に追いつく。これで勢いに乗ると、後半アディショナルタイムの40+1分、右サイドのスローインの流れからMF上西剛史(3年)の上げたクロスに、再び池戸がヘディングシュートを叩き込んで、試合をひっくり返した。ラスト5分からの逆転劇で京都橘が勝利し、4回戦へ駒を進めた。

 勝利の立役者となった池戸だが、試合後は「選手権予選の初戦で全体的に硬くて、前半はひどいゲームだった」と苦い表情を浮かべていた。チームとしてボールを持てる状況で「ビビッて、攻撃をやりきれなかった」。池戸自身も失点シーンでは、相手FKをニアサイドでクリアしきれなかったミスを犯している。意気消沈でハーフタイムを迎えていたが、そこで3年生やリザーブに回っている選手たちから鼓舞され、後半開始直前には応援エリアからも後押しを受けたことで「後半は冷静さを持ってプレーでいました」と周囲への感謝を口にしていた。

 チームとしても反省点の多い試合だった。米澤一成監督は「良かったのは何とか勝てたことだけ。ゲームとしては京都先端附高のものだった」と振り返る。それでも一発勝負のトーナメント戦の初戦で、苦しみながら結果をつかんだことは今後への糧となるはず。負傷していたMF西川桂太(2年)が復帰し、交代選手も持ち味を発揮して後半の攻勢に貢献している。キャプテンの上西は「選手権を初めて経験する選手も多かった。緊張感や少しの油断が命取りになるんだという危機感が、個人にもチームにも芽生えたはずです」と次の試合を見据えていた。

 惜しくも敗れた京都先端附だが、終盤まで見事な戦いを見せた。佐藤直貴監督は「10月初旬にリーグ戦が終わってからは、対京都橘の戦い方へ切り替えて準備をしてきました」と話す。守備的な戦術を採用し、中盤で攻撃的なプレーが特徴のMF小高陽(3年)らも、この日は守備の役割を懸命にこなしていた。「この試合までの練習も含めて、選手たちは本当によくやってくれました」と労いの言葉をかけている。

 不運だったのは試合開催日のめぐり合わせだ。まず3バックの中央を務める主力選手が、大学受験により欠場を余儀なくされた。左CBで先発してゴールも決めた中島も、大学の面接へ向かうためにハーフタイムで交代し、仲間に後を託すしかなかった。そして右CBの北井滉生(3年)も試合終盤に足をつり、同点ゴールの場面で倒れて直後交代。最後は3年生CBの3人が不在となる状況で、逃げ切ることができなかった。

 奥田は「相手にボールを動かされる中で、自分たちはスライドを徹底した。足を攣るのは仕方ないし、みんなでカバーしきれなかった。できれば攻撃の時間を作って守備の負担を減らしたかったけれど、それができなかった」と悔しさをにじませた。彼も含めた2年生の6人が、優勝候補撃破へあと一歩まで迫った激戦のピッチに立った。「この経験を無駄にしない、そんな1年にしたい」と来季への思いを口にしている。

(取材・文 雨堤俊祐)
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