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飯塚で生まれ育ったFW芳野凱斗、故郷の歴史を動かした指揮官から学んだこと「行動しないと始まらない」

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飯塚高FW芳野凱斗(3年=オリエントFC)

[1.2 選手権3回戦 日体大柏高 1-0 飯塚高 柏の葉]

 福岡県の筑豊地方から56年ぶりの全国選手権に出場した飯塚高の挑戦は、ベスト16で幕を閉じた。2015年に始まった強化体制8年目。悲願の選手権初出場に導いた中辻喜敬監督(37)は敗戦後、「福岡を代表してはもちろんですが、筑豊の代表だと思っていた。56年ぶりにこの地に来たので、筑豊の代表という思いは強かった」と悔しそうに語った。

 かつて炭鉱で栄えた福岡県中央部の筑豊地方から、1966年の山田高(すでに閉校)以来56年ぶりの全国挑戦。故郷の高校の偉業には地元の注目も高く、予選突破時には飯塚市の商店街で祝賀パレードが行われるほどで、今大会もパブリックビューイングで多くの市民が戦況を見守っていたという。

 県外出身者が多く名を連ねる先発メンバーで唯一飯塚市で生まれ育ったFW芳野凱斗(3年=オリエントFC)はなかでも、その期待の大きさを感じていた。

「飯塚で生まれて、飯塚で育ってきて、飯塚高校に進んでからもずっと飯塚の友達や近所の人に支えられてきた。自分は人よりも応援されていると肌で感じる場面が多かった」

 初戦の明桜高戦では故郷の思いも背負い、初の全国舞台で存在感を発揮。「初戦は得意のドリブルの形が何度も作れて、ゴール前まで何度も行ってチャンスを何回も作れた」。地元のオリエントFCで幼少期から鍛えてきたドリブル突破を何度も披露し、歴史的な初勝利に大きく貢献していた。

 ところが3回戦・日体大柏戦では、全国の壁にぶつかり、思うようなプレーができなかったという。

「なかなか前を向かせてもらえず、思い通りのプレーができなかった。全国レベルに足りないところ、まだまだ甘いところが出た」。結果は0-1で敗戦。試合後には故郷で応援してくれていた人々の顔も浮かび、「応援されている責任、勝たせないといけない責任があった。自分が勝たせないといけない試合だったので悔しい」と目を潤ませた。

 それでも飯塚で生まれ、飯塚で育ってきたことに誇りを持つ18歳。飯塚高の本格強化以降、故郷のサッカーを取り巻く景色が変わったこと、そして故郷を背負って全国のピッチで戦えたことには大きな感慨があったようだ。

 その思いの先には何より、2015年からチームを作り上げてきた中辻監督の存在があった。

「監督は自分の担任でもあるんですけど、とても尊敬していて。まず何より行動力がすごいなと」。就任当初は県予選に出ても早期敗退が常だった同校だが、指揮官の戦術・技術指導で成績が向上。練習にGPSデバイスを導入したり、試合前に選手の髪を“本番仕様”に整える理容師を招いたりと、さまざまな方向からチームを導き、着実に結果を積み上げてきた。

「自分も『まずは行動しないといけないな』と。行動に移さないと何も始まらないと思うので、自分も監督のように自分自身の進路であったり、将来に向かって、自分から行動できるような選手になりたい」。指揮官の背中から「行動すること」の大切さを学んできた。

 卒業後は福岡大に進学してサッカーを続ける予定。「自分の足りない部分、通用する部分が全国でハッキリとわかったので、一から自分のことを見つめ直して、福岡大に入学して1年生からレギュラーを勝ち取って、高卒でなれなかったプロサッカー選手に絶対になりたい。そして代表に入ったり、海外で活躍できる選手になりたい」。幼少期から飯塚で鍛えたドリブル、高校で学んだ技術や姿勢を糧に、新たなステージに挑む。

(取材・文 竹内達也)
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