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[MOM4493]宇治山田商FW光田向志(3年)_偉大な兄の背中を追う“遅咲き”ストライカー、プレーの幅を広げてより怖い選手に

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宇治山田商高FW光田向志(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 選手権三重県予選準決勝 宇治山田商高 1-0 津工高 四日市市中央陸上競技場]

「山商を背負う責任はある」。力強く言い切るのが、宇治山田商高の10番と主将という2つの重責を背負うストライカーのFW光田向志(3年)だ。

 50mを6秒1で走る俊足を武器に1年生から出場機会を掴んできたが、3年生になってからの成長は著しい。以前はスピードを生かし、徹底的に相手DFの背後を狙い続けるタイプだったが、昨年の選手権予選決勝のように相手に警戒されると苦しくなるのが課題だった。高校卒業後は関東の強豪大学に進学予定だが、今のままでは通用しない。「将来はワールドカップで活躍したい」と語る光田は相手にとってより怖い選手になるため、今年に入ってからはプレーの幅を広げてきたという。

 準決勝の津工高戦で目を惹いたのは、周りを使うプレーだ。スピードを生かしたドリブルで相手陣内を進みながらも、「今日は自分に2、3枚来ると思っていた。そうなったら他のチームメイトが空くので、上手く活かそうと思っていた」とタイミングよく周りに預けていく。また、中盤に落ちてパスでゲームを作る動きも昨年までにはなかった動き。「落ちた所に相手が付いてきたら、背後を狙うなど駆け引きができるようになってきた」と話す通り、相手にとってより嫌な選手になってきた。

 守備での貢献も見逃せない。「攻撃だけでは意味がない。守備は前から頑張らないといけない。誰もがサボったら迷惑になる。キャプテンの僕を含めて全員がチームのためにやろうと意識している」。言葉通り、前線からのプレスで相手に圧力をかけ続ける。後半7分には前からのプレスでボールを奪った後に、控え部員のいるスタンドを煽るなどチームを盛り上げようとする姿が印象的でもあった。前半終了間際の決定機を生かせなかったこと、飛ばし過ぎたために後半早々に足を吊ったことは反省点だが、2年連続で決勝進出は光田の存在抜きでは語れない。

 兄は名古屋U-18時代にU-17ワールドカップにも出場したFW光田脩人(現・早稲田大4年)。「兄ちゃんとはずっと一緒にサッカーしてきたのでライバル心はあるけど、尊敬も大きい。超えたいというか、抜かさなければいけない存在」。幼少期から東海地区で有名だった兄とは違い、弟は遅咲きの選手だと自認している。足が速くなったのは中3になってから。それまでは県トレセンとも縁がなかった。

 宇治山田商に入ってからは早期に出番を得て期待されてきたが、高1の11月にボールが目に当たって左目の視力が一気に2.0から0.1まで低下。現在は奇跡的に1.5まで回復したが、4か月ほどプレーできない期間もあった。度重なる足のケガも含めて、これまでの高校生活は満足のいく活躍ができているとは言い切れない。だからこそ、最後の選手権にかける想いは強い。チームのために献身的なプレーを続けつつ、決勝では自身のゴールで勝利を呼び込むつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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