beacon

宇治山田商が“因縁”津工を退けて決勝進出!「まだ満足していない」もう1勝を貪欲に狙って全国へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

宇治山田商高が決勝進出

[11.3 選手権三重県予選準決勝 宇治山田商高 1-0 津工高 四日市市中央陸上競技場]

 第102回全国高校サッカー選手権三重県予選準決勝が3日に行われた。宇治山田商高津工高の一戦は、FW濱田晄弥(3年)の得点によって宇治山田商が勝利した。11日の決勝では四日市中央工高と対戦する。

 10年ぶり2回目の選手権出場を目指す宇治山田商にとって津工は因縁の相手で、昨年の選手権予選決勝で対戦した際は0-2。今年5月に行われたインターハイ予選の準々決勝では2-2(PK4-5)で敗れている。「三度目の正直ではないですが、やり返さないといけないと思っていた」と口にするのはDF中村隆太(2年)だ。

 連敗を阻止しようと勢いよく試合に入った宇治山田商に最初の見せ場が訪れたのは前半4分。MF濱口颯馬(3年)が中盤右で得たFKをゴール前に展開すると、相手DFに跳ね返されたボールを濱田が左足で打ち返し、ゴールネットを揺らした。

 以降も宇治山田商の流れは続く。「相手は7番(FW山本伊織、3年)に蹴り込んでくる傾向があるので、できるだけ深い位置で蹴らせたい。なので、できるだけ下がらずに前から奪いに行きました」(古西祥監督)。指揮官の狙い通り、高い位置からの守備を徹底しつつ、相手のアタッカー陣にボールが渡っても中村を中心とした3バックとダブルボランチが挟み込んで自由を与えない。

 対する攻撃も自陣から繋いだボールを濱口が配球し、リズムを作っていく。相手エリアでは主将のFW光田向志(3年)や濱田が鋭い仕掛けからチャンスを演出。「ボールを持って流動的に仕掛けてくる宇治山田商に慌てて、相手を捕まえきれなくなっていた」。敵将である片野典和監督の言葉通り、理想的な形で押し込んでいく。40分には濱田のスルーパスから、光田がゴール前を抜け出したが、前に出たGKに防がれゴールは奪えず。宇治山田商が1点リードで試合を折り返した。

 後半に入ってからは津工のペースで試合が進む。後半1分には右に開いたMF藤井瞭(3年)から中央に展開し、こぼれ球を山本が狙ったが枠の外。10分には左中間でボールを受けたMF坂地佑太(3年)がドリブルでPAまで持ち込んだが、並走したDFに進路を阻まれ、シュートは打ちきれない。

 試合終盤は「リスクを背負ってでも前に出た」(片野監督)津工が見せ場を作り、39分には自陣からロングボール。山本がヘディングで落とし、最後は途中出場のFW溝部憧(1年)がゴール前フリーでシュートを放ったが、枠を捉えられず、宇治山田商が1-0で勝利した。

 2年前の宇治山田商は選手権予選の準決勝まで進出。昨年の選手権は準決勝で四日市中央工に勝利したが、決勝では津工業に0-2で敗れ涙を飲んだ。「去年は四中工さんを倒して勢いがある形で決勝に臨んだけど、先制されて自分たちの力が出た。やっぱり選手が自立しなければいけないと学んだ試合。僕自身も未熟で、怖がっていたのが選手に伝わっていた」(古西監督)。

 追い掛ける展開を強いられた結果慌ててしまい、練習してきたポゼッションができなかった。今年は反省を生かし、どんな相手や状況でもあってもブレずに自分たちのサッカーを貫こうと決めている。「夏の遠征で強いチームと対戦してもやろうとするサッカーで勝てたので、自分たちに自信を持てた」と胸を張るのは濱田。古西監督はこう選手を称える。「今日はコーチングで『きちんと幅を使ってやれ』と言ったらやろうとしてくれた。準決勝を見るだけでも、1年間での成長を感じる」。

 チームは着実に逞しくなっており、昨年とは違った決勝の展開が期待できる。「全国を目標に今年1年間やってきたので、必ず勝って全国に行きたいと思います」(濱口)。「まだ満足していない。もう1個勝って全国に行くのが僕たちの目標なので、昨年のリベンジを果たしたい」(中村)。選手が声を揃える通り、宇治山田商はもう1勝を貪欲に狙っている。

(取材・文 森田将義)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

TOP