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積み重ねた悔しさを勝利へのエネルギーに…三重を下した名門・四日市中央工が選手権出場に王手!

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四日市中央工高が4年ぶりの決勝進出

[11.3 選手権三重県予選準決勝 三重高 1-3 四日市中央工高 四日市市中央陸上競技場]

 第102回全国高校サッカー選手権三重県予選準決勝が3日に行われた。三重高四日市中央工高の一戦は、MF山口叶夢(3年)の先制点を皮切りにゴールを重ねた四日市中央工が3-1で勝利した。11日の決勝では宇治山田商高と対戦する。

 県勢最多となる34度の選手権出場を誇り、1991年度には日本一にも輝いた経験を持つ四日市中央工だが、過去3年は予選の準決勝敗退が続いている。「四中工に来てくれている選手はサッカーにかけているので、スタッフも同じ想いでかけて勝たせてあげたいという想いでやってきた。ただ、簡単には三重県で勝てないのは分かっている」(伊室陽介監督)。

 満足の行く結果ではなかったが、積み重ねた悔しさは選手たちのエネルギーになっている。「やっぱり四中工が選手権に行かないとダメだと思う。今年は絶対に行くという気持ちがあります」。MF平野颯汰(3年)が口にする想いの強さが、この日の入りへと繋がった。まずは前半4分にFW小林桜輔(3年)が倒され得たFKを山口が直接決めると、続く8分にも左サイドを仕掛けた平野のパスからMF片岡空良(3年)がゴールネットを揺らした。

 幸先の良いスタートと切ったものの勢いは続かない。14分には左クロスのこぼれ球を山口が落とし、片岡がドリブル。相手に封じられたこぼれを平野が狙ったが、得点とはならず。伊室監督が「2-0というスコアは緩みに繋がる。3点目のチャンスを決められなかったのが痛かった」と振り返えれば、DF山本拓弥(3年)も「相手が開き直って、自分たちのサッカーをやろうとなった結果、失点してしまった」と続ける。

 序盤の三重高はリスクを回避するため、長いボールを多用してきたが、連続失点で攻めるしかなくなった結果、本来のサッカーであるテクニックを生かしたボール回しへと切り替えた。今年の三重はMF森本倫気(3年)やMF水野愛斗(1年)など身のこなしの軽い選手が多い。上手く相手を捕まえきれなくなった結果、18分にはロングボールを蹴られるとFW大坪蒼和(3年)のポストプレーから、FW郭原夏輝(3年)に決められる。

 このまま相手に流れを持っていかれてもおかしくなかったが、失点しても引きずらないのは今の四日市中央工の強みだ。「1点取られてもみんなで話し合って雰囲気下げずに自分たちのサッカーしようと共有できたから、立て直せた」(平野)。失点以降も前からの守備を続けると、34分には中盤でボールを奪った片岡がそのまま中央を前進。ゴール前に送ったパスを平野が決めて、再びリードを2点差にして前半を終えた。

 後半の四日市中央工は失点シーンを修正しつつ、前半以上に守備の集中力を高めていく。「次の一点が勝負というのは、チーム内で統一できていた。1点決められたら危ないので、失点は絶対になくそうと話していた」(山本)。交代枠をフル活用し、最後まで高い位置から繰り出す守備の強度を落とさない。奪ってからはカウンターで相手ゴール前まで持ち込むなど、最後までしっかり戦い続けた四日市中央工が3-1で勝利し、4年ぶりの決勝進出を果たした。

「目の前で泣き崩れている先輩を見て、悔しかった」と山本が振り返るこれまで2年間は、今年のチームの財産になっている。「これまで先を見据えていた部分があった。今年は勝っても有頂天ならない。一つひとつちゃんと勝って全国に行こうぜとなっている」と口にするのは伊室監督だ。

 鬼門となっていた準決勝を突破できても、チームに満足した様子は見られない。決勝で勝利するため、勝利も入念にダウンする選手の姿が印象的だった。「やっぱり四中工が選手権に出ているのを見て、憧れて入ってきた。やっぱり四中工が全国に出るべきと強く思っている。次は無失点に抑えれば、前が絶対にやってくれると思う。いつも通りのプレーができれば絶対に勝てるはず。絶対に勝って全国に行きたいです」。山本は力強く決勝への意気込みを口にした。

(取材・文 森田将義)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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