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[選手権]日大藤沢が前からの守備とMF安場3発などで神奈川決勝進出。インハイ3位から全国制覇するために強化した力も表現

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前半26分、日大藤沢高MF安場壮志朗がこの日3点目のゴールを喜ぶ

[11.4 選手権神奈川県予選準決勝 湘南工科大附高 2-4 日大藤沢高 等々力]

 夏全国3位、選手権日本一を狙う日大藤沢が神奈川準決勝突破――。第102回全国高校サッカー選手権神奈川県予選準決勝が4日、川崎市の等々力陸上競技場で開催され、前回大会優勝校の日大藤沢高が10番MF安場壮志朗(3年)の3得点とMF諸墨清平(3年)のゴールによって、4-2で湘南工科大附高に快勝。日大藤沢は12日の決勝で桐蔭学園高と戦う。

 前半の日大藤沢は、佐藤輝勝監督が「完全に自分たちが主導権を握ろうとスタートして入ったので、時間を与えなかったですし、前半は100点だったと思います」と振り返る40分間。サイドを起点に前進しようとする湘南工大附に対し、前線からの連動したプレッシングでボールを奪って攻撃に結びつける。そして、前半だけで4得点を奪い取った。

 まずは前半9分、水戸内定左SB尾野優日(3年)の左クロスから安場が巧みに先制点。20分には再び尾野のクロスをファーのFW山上大智(3年)が頭で折り返す。これを安場が対角の左足シュートで右隅に決めて2-0。さらに26分、左中間で得たFKをキッカーの安場が直接狙うと、ボールはGKの指を弾き、そのままゴールへ吸い込まれた。

 安場は開始26分で今大会2度目となるハットトリックを達成。ここでやや勢いを緩めた日大藤沢に対し、湘南工大附が繋いで反撃する。エースMF中山陽輝(3年)やMF上野海里(3年)、MF佐藤颯人(2年)ら複数の選手がボールに係わりながら前進。的確なポジショニングと角度をつけたパスで攻め込むと、34分には中山の左FKのこぼれを上野が左足ダイレクトで決めて1点を返した。

 日大藤沢の佐藤監督は「湘工は本当に良いチームなので3点では決まらないと思っていました」。U-17日本高校選抜候補CB宮崎達也(3年)がショートコーナーから左足の弾丸ミドルを打ち込むなど追加点を奪いに行く。そして、40+1分、相手を押し込むと、安場が左サイドから柔らかいクロス。これをファーの諸墨が頭で右隅に決め、4-1とした。

 3点リードのハーフタイム、日大藤沢は再び前からボールを奪いに行くことを選択する。MF佐藤春斗主将(3年)は「前半途中にちょっと引いた時間があって流れが良くなくて後半前から行こうと。失点したけれど前から圧力を掛けられたと思います」と説明。技術力の高い湘南工大附は簡単にはロストしない。だが、運動量が増えるのは覚悟の上。自分たちらしく、攻撃的な守備で後半も戦った。

 湘南工大附はボールを保持する時間を増やし、長短のパスでゴールを目指す。だが、中へのボールを相手CB國分唯央(3年)に跳ね返されるなど、日大藤沢の堅い守りの前になかなかパスを差し込むことができない。

 それでも、相手の速攻を凌ぎながら攻める湘南工大附は34分、中山が左中間から右足FKを直接決めて2点差。ハイペースで飛ばした日大藤沢の選手が立て続けに足を攣らせたこともあり、攻勢を続けた。そして、交代出場FW成田梨甫(2年)の鋭い抜け出しなどからゴールへ迫る。だが、相手の厚い守りを破ることはできずに試合終了。日大藤沢が2年連続7回目の選手権出場へ王手をかけた。

 日大藤沢は今夏のインターハイで優勝候補の市立船橋高(千葉)を破るなど準決勝進出。だが、優勝校・明秀日立高(茨城)との準決勝は前半に2点を先取されるなど劣勢を強いられ、1-3で敗れている。目標の全国制覇を実現するため、夏以降は自分たちが不足していたことをテーマに強化。佐藤監督は「球際とか連続プレーのところにこだわってきた。(自分たちが敗れたチームに)勝って行くために肌感で感じたことを財産に積み重ねた感じですね」と説明する。

 8月の和倉ユース大会や青森ユースフェスティバルや県1部リーグ戦を経て、流れの悪い時の声がけや連続失点しない力を身に着けた。尾野は「日藤は2点目を取られなければ逆転できるチーム。先制されても2点目をやらせない。粘り強さや気持ちの切り替えというマインドができるようになった」と成長を実感。今大会準々決勝の慶應義塾高戦では先制されたが、2点目を許さず、試合終盤の2得点によって逆転勝ちを収めている。

 選手たちは、「克真が戻ってくるまでこのチームを終わらせない」というテーマも持って戦っている。U-17日本代表MF布施克真(2年)が万能性の高さや身体の強さを活かした球際での戦いなどを期待され、U-17ワールドカップ(11月10日開幕)メンバーに“サプライズ選出”された。布施は日大藤沢でボランチの主軸の一人。県予選の準決勝、決勝を欠場することになったが、競争力の高いチームは布施不在を不安に感じていない。

 この日も「アイツが帰ってくるまで絶対にこのチームを続けようと。彼がいないことで逆にやってやろうという気持ちがありました」という佐藤とMF荻原大地(3年)のダブルボランチが強度高く戦うなど勝利に貢献。県予選を必ず勝ち抜き、布施と一緒に選手権全国大会を戦う意気込みだ。

 まずは決勝で準決勝以上の戦い、ベストゲームをすること。佐藤は「自分たちの目標は日本一というところになりますけれども、神奈川制覇するために次の一週間良い準備をしたい」。激戦区・神奈川を制し、日本一への挑戦権を獲得する。

(取材・文 吉田太郎)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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