beacon

[選手権]PK失敗直後の先制点献上から劇的逆転劇! 徳島市立が11年連続決勝進出&連覇に王手:徳島

このエントリーをはてなブックマークに追加

[11.4 選手権徳島県予選準決勝 徳島市立高 2-1 徳島商高 徳島市民球技場メイン]
 
 攻めても攻めてもゴールが入らない。千載一遇のチャンスも決め切れず、嫌な雰囲気がスタジアムに漂っていた。残り15分を切って0-1。しかし、選手たちは誰ひとり諦めていなかった。

 4日に行われた高校サッカー選手権の徳島県予選準決勝。伝統校同士の戦いは最後の最後に劇的な幕切れが待っていた。

 夏のインターハイ予選を制した徳島市立高は冬の選手権でも優勝候補の本命。徳島商高に対し、自慢の攻撃力を武器に序盤から攻勢を強める。MF上田寛大(2年)とMF山座拓達(3年)を中心に中盤でボールを動かし、相手の牙城を崩しに掛かった。しかし、この日はボールを支配できても、最後の局面で精度が落ちてしまう。

「徳商が蹴ってくるというのは分かっていたので、自分たちは落ち着いて回そうと話していた。だけど、応援とかお客さんがたくさん入っていたのもあってプレッシャーも感じて…」(CB川村琥太郎=3年)

 最前線に構える徳島商の快速FW冨士村優(3年)の存在も厄介で、警戒し過ぎた故に最終ラインが押し上げられない。U-16日本代表歴を持つ点取り屋の“足”に恐怖を感じ、徐々に全体が間延びしてしまう。さらにこの日は決定力不足を露呈。何度かあった好機を生かせず、前半18分に巡ってきたCKからのチャンスで川村が放ったヘディングシュートはバーを叩いてしまう。37分にもゴール前でMF池田怜似(3年)、FW山口凛太朗(2年)が連続でシュートを打ったが、決め切れなかった。

 前半は不甲斐ない出来に終わり、河野博幸監督からはハーフタイムに「自分たちのサッカーをしよう」という言葉を選手に投げ掛けた。

 すると、後半はテンポの良いパスワークで前半以上に迫力のある攻撃を展開。選手の距離感が良くなり、よりスムーズにボールが回るようになった。あとは決め切るだけ。しかし――。後半18分に山座がPKを獲得したが、キャプテン・MF笠原颯太(3年)のキックは相手GK加藤尊(3年)に阻止されてしまう。不穏な空気が流れると、同24分に最も恐れていたカウンターからピンチを招く。警戒していた冨士村にロングボールが入ると、裏を取られて一気にゴール前へ運ばれた。一度外されたCB山本煌大(3年)が懸命に戻ったが、キックフェイントで完璧に逆を取られる。そのまま交わされて先制点を許し、ついにリードを許した。

 このままいけば、選手権出場はもちろん、10年連続で進出していた決勝行きも潰えてしまう。追い込まれた徳島市立はギアを入れ直し、猛攻を仕掛ける。すると、後半29分に池田の右クロスからFW鈴木悠哉(2年)が同点弾をゲット。流れを引き戻すと、相手のカウンターを警戒しながら、うまく攻撃を組み立てて相手ゴールに迫った。

 時計の針は刻々と進み、残された時間はアディショナルタイムのみ。何度も攻撃を繰り出すが、なかなかゴールをこじ開けられない。その中で迎えた後半アディショナルタイム5分。右CKを獲得すると、山口が左足で速いボールを入れる。これに川村がドンピシャのタイミングで合わせ、強烈なヘッドで逆転に成功して試合に終止符を打った。

 試合後、河野監督はホッと胸を撫で下ろした一方で不満げな表情も見せた。苦戦を強いられたからだが、選手たちの力を考えればもっと出来ると感じていたからだ。

 今年のチームの特徴は攻撃力。「守備の練習を一切していませんから」と河野監督が話した通り、1点取られても2点取り返すようなチームを目指してきた。実際に夏のインターハイでは全国のトップに互角以上の戦いを展開。U-18プレミアリーグ高円宮杯で優勝争いを展開している尚志高に2-6で敗れて2回戦で姿を消したが、一時はリードを奪って前半を2-2で折り返している。後半に退場者を出さなければ十分に勝機はあった。夏のフェスティバルでも尚志や神村学園と好勝負を演じ、自信を持っていたからこそ指揮官はさらなるレベルアップを求める。

 11日の決勝では同じ轍を踏むわけにはいかない。1週間で自分たちのサッカーをもう一度見直し、全国に挑戦する権利を掴んでみせる。

(取材・文 松尾祐希)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
松尾祐希
Text by 松尾祐希

TOP